マイクロプレートの白と黒【適切なプレートはどっち?】

マイクロプレートって透明・白・黒があるけど,どうして3種類もあるの?
本記事は,このような「なぜ?どうして?」にお答えします.
こんにちは.
博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事しているフールです.
皆さんは,どんな種類のマイクロプレートを使ってますか?
マイクロプレートの用途は多岐にわたるので,色・材質・表面処理の種類・ウエルの形状など様々なタイプの商品が販売されています.
そして,よく同僚や後輩から聞かれるのが「マイクロプレートの透明・白・黒の使い分けって何?」です.
当然,色の好みで判断していけません(笑).
あなたの実験にふさわしいプレートを選ぶ必要があります.
それでは,あなたの実験にふさわしいプレートの色は何色でしょうか?
この記事では,マイクロプレートの白と黒の使い分けについてまとめました.
本記事を読み終えると,実験にふさわしいプレートの色の使い分けができるようになりますよ!
サマリー・発光量を定量する実験では白色,蛍光量を定量する実験では黒色,吸光度を定量する実験では透明プレートを使うのが基本です.
・ただし,例外もあるので,S/B比とZ値を算出して判断しましょう!
マイクロプレートの白と黒
マイクロプレートには,透明・白・黒の3種類があります.
なぜなら,色の違いによって用途は異なるからです.
「白が好きな人向けのプレート」とか「黒が好きな人向けのプレート」ではありませんので,ご注意ください(笑).
それでは,マイクロプレートの色の使い分けは何でしょうか?
以下に表でまとめました.
検出方法 | プレート | 例外 |
吸光値 | 透明プレート | – |
発光値 | 白色プレート | 黒色プレート |
RI値 | 白色プレート | – |
蛍光値 | 黒色プレート | 白色プレート |
基本は,発光量を定量する実験では白色,蛍光量を定量する実験では黒色,吸光度を定量する実験では透明プレートを使います.
発光現象
発光現象は酵素反応の結果です.
サンプル自体または酵素自体が光っているわけではありません.
「酵素反応が進まない限り発光はしない」ので,非特異な発光はありません.
だから,バックグラウンドはとても低いのです.
検出器は,出来る限りすべての光を回収する必要があるので,光が反射する白色のプレートを
用います.
蛍光反応
蛍光は励起反応です.
物質が特定の波長の光を吸収して,それとは異なる波長の光を放出する現象です.
外部からの光(励起光)を受けるので,その量を増減すれば蛍光量をコントロールすることが可能になります.
よって,「励起光が足りないから光らない」っていう悩みは起こりません.
だから,光を反射させる必要はないんです.
むしろ,励起光によってバックグラウンドが上昇してしまうので,それを低減させるために黒色プレートを使います.
マイクロプレートの白と黒【例外】
「発光量を定量する実験では白色,蛍光量を定量する実験では黒色プレートを使うのが基本」だと書きましたが,もちろん例外はあります.
発光法だけど黒プレートの方が良い結果が出ることがあります.
蛍光法でも白プレートを使った方が良い場合もあります.
問題は「どうやってそれを判断するか?」です.
経験と勘で判断するの良いかもしれません.
そういう職人気質な人も私は好きです.
でも私は,ちゃんと数値で判断しますよ.
一応,私も科学者ですから(笑).
私が予備実験で見ている項目は,CV値・S/B比・S/N比・Z’値です.
アッセイ系の評価指標
予備実験やスクリーニング実験などでアッセイ系の評価するときに見る指標があります.
それがCV値・S/B比・S/N比・Z’値です.
CV値
どのくらいバラつきがあるのかを見る指標です.
以下の記事でもまとめているので,よろしければご覧ください.

S/B比
ポジティブコントロールとネガティブコントロールの値の比です.
S/B比は大きければ大きいほど活性の有無を判定しやすいので,最低2以上は欲しいです.
私は3以上を求めます.
S/N比
ネガティブコントロールのバラつきに対するポジティブコントロールとネガティブコントロールの差(シグナル値)の比です.
バックグラウンドが高い(=ノイズは強い)とS/N比は小さくなります.
ノイズを抑えてS/N比を大きくする工夫が必要です.
実験系にもよりますが,最低10以上は欲しいです.
Z’値
データのバラつきやシグナル値から,アッセイ系の質(精度)を評価する指標です.
Z’値は,0.5以上あれば良いアッセイ系だと評価できます.
アッセイ系の評価指標の計算方法
それではアッセイ系の評価指標を算出していきまし!
例えば,96ウェルプレートで以下のような値を得たとします.
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | |
A | 260 | 1212 | ||||||||||
B | 266 | 1112 | ||||||||||
C | 275 | 1002 | ||||||||||
D | 255 | 1309 | ||||||||||
E | 302 | 1054 | ||||||||||
F | 252 | 1079 | ||||||||||
G | 245 | 1189 | ||||||||||
H | 289 | 1245 |
1列目:Negative control
12列目:Positive control
2~11列目:Samples
Excelで以下のように入力していきましょう.
S/B比は3倍以上で,Z’値が0.5以上なので,このアッセイ系は良いと評価できます!
白プレートと黒プレートの両方で得た値を使って,上記のように計算してみてください.
S/B比とZ’値の値を比較してより良い方を採用すれば,科学的にプレートを選択したことになりますよ!
もっと勉強したい方へ
・ZHANG, Ji-Hu; CHUNG, Thomas DY; OLDENBURG, Kevin R. A simple statistical parameter for use in evaluation and validation of high throughput screening assays. Journal of biomolecular screening, 1999, 4.2: 67-73.
最後までお付き合いいただきありがとうございました.
次回もよろしくお願いいたします.
2021年3月27日 フール