【トークンとは?暗号資産と何が違う?】分散型科学(DeSci)の理解に必要な知識(4)
本記事の内容・トークンとは?
・トークンを使う理由
・科学分野でのトークン活用例
こんにちは.
元研究者のフールです.
「分散型科学(DeSci)の理解に必要な知識」というテーマでキーワードのまとめ記事を書いています.
前回の暗号資産に関する記事はコチラをご覧ください.
本記事では,トークンについてまとめていきますね!
なお,分散型科学(DeSci)とトークンについて簡単にまとめた記事もありますので,お時間のある時に合わせてご覧ください.
トークンとは?
トークンとは,ブロックチェーンを利用して作られるデジタル資産です.
「デジタル資産」なので,前回の暗号資産と同じものと思った方もいるかもしれません.
でも,トークンと暗号資産は役割や用途が異なります!
暗号資産とトークンの比較
暗号資産とトークンの主な違いを比較してみましょう!
項目 | 暗号資産 | トークン |
動作環境 | 独自のブロックチェーン | 既存のブロックチェーン |
目的 | 支払い,価値保存 | 特定のプロジェクト内で機能 |
発行者 | 不在 | プロジェクト(企業・団体),個人 |
イメージ | お金(通貨) | 株 |
具体例 | BTC,ETH | VITA,RSC |
トークンは独自のブロックチェーンを持たず,既存のブロックチェーン上で動作します.
また,トークンには発行者が存在する場合が多いですね.
発行者は,トークンの配布量・初期供給量・利用目的などを決定するので,トークンを管理する役割を担っています.
だから,厳密には完全な分散型ではありません.
法律での定義
日本の法律では,暗号資産に関する規制を「資金決済に関する法律(資金決済法)」が定めています.
この中で暗号資産は,以下のように定義されていますね.
- 不特定の者に対して代金の支払い等に使用できる
- 法定通貨(日本円や米国ドルなど)と相互に交換できる
- 電子的に記録され,移転できる
- 法定通貨または法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)ではない
トークンが上記の条件を満たす場合,暗号資産として分類されるでしょう.
だから,全てのトークンが暗号資産に該当するわけではありません!
ただし,トークンの機能や利用方法が多様化しているので,明確な線引きが難しい場合もあります.
必要に応じて,弁護士や税理士などの専門家に相談しましょう.
トークンの分類
トークンの分類方法は2通りあります!
- トークンの「交換可能性」に基づく分類
- FT
- NFT
- トークンの「機能や役割」に基づく分類
- ユーティリティトークン
- ガバナンストークン
FTとNFTの分類
FTは “Fungible Token” の略で,日本語では「代替可能トークン」と呼ばれています.
一方,NFTは “Non-Fungible Token” の略で,「非代替性トークン」と呼ばれています.
- FT
- 特徴:交換可能で,同じ価値を持つ複数のトークンが存在
- 例:1 ETH(イーサ)は,どの1 ETHと交換しても価値は同じ.
- 用途:DeFiでの資産管理や取引
- NFT
- 特徴:各トークンが独自の価値を持ち,交換が難しい.
- 例:デジタルアート,ゲーム内アイテム,特許
- 用途:デジタル所有権の証明
ユーティリティトークンとガバナンストークンの分類
「ユーティリティ」は,「役に立つこと」「有益なもの」という意味の英単語 “Utility” のことです.
「ガバナンス」は,「統治」「管理」を意味する英単語 “Governance” のことです.
- ユーティリティトークン
- 特徴:特定のサービスやプロジェクト内で利用されるトークン
- 例:DApps内での支払い,特定の機能を利用
- 用途:アクセス権の提供,プラットフォーム内での支払い,
- ガバナンストークン
- 特徴:プロジェクトやプラットフォームの意思決定に参加するためのトークン
- 例:改善提案の投票,予算の配分決定
- 用途:DAOでの意思決定,コミュニティによる分散型運営の推進
トークンを使う理由
トークンの特徴や分類方法が分かったら,次はトークンを使う理由です!
暗号資産とは別にトークンを利用するメリットが6つありますよ.
- コミュニティの構築
- 資金調達
- キャピタルゲイン
- 透明性と信頼性の向上
- 参加者へのインセンティブ提供
- 取引の効率化とグローバル性
コミュニティの構築
トークンが所有者間の一体感を高めるので,プロジェクト内でトークンを取り扱うことによりコミュニティ構築がしやすくなります.
FTを所持しているユーザー同士で交流は活発になるでしょう!
また,自分だけのNFTを所有できれば,プロジェクトへの興味・関心がより高まりますね!
資金調達
FTやNFTの価値に賛同する人々から資金を集めることができます!
イラストや音楽のNFTやミームコイン(特定のテーマやキャラクターを元にしたFT)は,推し活の要素が含まれるので「応援」という形で資金提供が起こりやすいですね.
購入や取引の履歴がブロックチェーン上に記録されるため,「どれだけ応援されてるの?」が明確に見えるのも特徴だと思います.
また,スマートコントラクトを使用するので煩雑な手続きは何もありません.
だから,資金調達が素早く完了できちゃいます!
キャピタルゲイン
暗号資産とトークンの比較で,トークンのイメージを「株」と書きました.
トークンは価値を持つ資産で,その価格は市場の動向やプロジェクトの進展に応じて変動します.
だから,投資家(資金提供者)はキャピタルゲインを得ることができますよ!
また,一部のトークンは,所有者に特定の権利(収益分配や議決権など)を提供しています.
この点も「株」に似ていますよね!
ただ,株式は会社の所有権を分割したもので,法律で規定されています.
一方,トークンは所有権を必ずしも意味しない場合があるので,その点は注意してください.
透明性と信頼性の向上
履歴がブロックチェーン上に記録されるので,資金の使途が公開され,透明性が高まります!
また,履歴の改ざんも難しいため,投資家や参加者に信頼感を与えますね.
参加者へのインセンティブ提供
プロジェクトへの貢献や活動への報酬としてもトークンを使いますよ.
例えば,特定のタスクを完了したりプロジェクトの宣伝を行う参加者にトークンを配布し,モチベーションを高めます!
これにより,エコシステム内での活動が促進されますね.
取引の効率化とグローバル性
取引はスマートコントラクトによって自動化されるため,コスト削減と迅速な取引が可能です.
また,国境や通貨に依存せず,1つのトークンで取引が可能ですね!
科学分野でのトークン活用例
トークンの総論はここまでにして,次は科学分野でのトークン活用例を紹介しますね!
トークンは科学研究の資金調達に革命的な変化をもたらす可能性を秘めていますよ.
従来の研究資金は以下の3つです.
- 政府からの補助金
- 民間からの寄付
- 大規模な組織
これらが科学の発展を支えてきたことは事実です.
しかし,中央集権的な資金分配による問題も指摘されています.
不均等な資金配分が好例ですね!
がん治療・人工知能・クリーンエネルギーなどの注目が集まる分野の大規模なプロジェクトは手厚い支援を受けやすいですが,希少疾患・基礎研究・ニッチな分野は商業的魅力や社会的注目度が低いために軽視されがちです…
トークンで資金調達することで,資金源が政府や大組織に限定されず,一般市民も直接参加できる「資金源の多様化」が起こります.
これは「コミュニティの多様化」につながるので,どの研究に資金分配するかを決める投票では,希少疾患や基礎研究の推進も期待できますね!
この辺りの詳細はDAOの記事で解説します!
また,知的財産の管理ではNFTが注目されていますよ.
開発プロセスにおける知的財産権(研究成果や特許など)をNFTに変換します.
それを研究者・投資家・その他の利害関係者に分配すると,すべての参加者が利益を直接享受できるようになりますね.
知的財産権の透明性が向上しますし,製品が上市後も関係者全員に利益分配される仕組みが構築されたのが画期的だと思います.
参考資料の紹介
デジタルテクノロジー図鑑-単行本(ソフトカバー)
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