分散型科学(DeSci)におけるトークンの役割と価値

トークン&トークノミクスとは?分散型科学(DeSci)での役割を学ぶ

トークンとは何か?を勉強する青年
この記事は約16分で読めます。

前回のDAOの記事で,ガバナンストークンと投票の話がありましたよね?あの話をもっと詳しく知りたいです!

本記事は,初めてトークンに触れる方に向けて,その基本概念と種類,DeSciでの使用方法をわかりやすく解説します.

この記事を書いた人
フール

元研究者で獣医師/博士(Ph.D.)/前職は派遣社員の研究員/研究職への復帰を考えているバイオブランク/学歴が「身分の指標」ではなく「職務能力・専門能力の指標」として機能することを願う者

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本記事の内容・トークンの概要

・トークンの種類

・トークノミクスの概要

・DeSciにおけるトークンの役割

フールの登場

こんにちは.

元研究者のフールです.

最近は,ブロックチェーン技術を利用して科学研究の透明性・効率性・参加型の取り組みを促進するアプローチ “DeSci” について調べています.

本記事では,DeSciにおけるトークンの役割とその価値について探り,トークノミクスの概念がどのように科学研究に与える影響をまとめますね!

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トークン&トークノミクスとは?

DeSciにおけるトークンの役割と価値を説明する前に,先ずトークンとは何か?を説明しますね!

トークンとは,ブロックチェーン上で発行されるデジタル資産です.

web3.0プロジェクトの中で様々なトークンが発行されています.

デジタル通貨ってこと?

イイ質問ですね!それはちょっと違います.ここではトークン=お金(通貨)だけではないと強調したいですね.

各トークンが特定の価値や権利を表しているので,様々なユースケースに応じて異なる形態をとっています*.

要は,通貨として機能するトークンもあるけど,それ以外のトークンもあるってことですね.

先ずはトークンの種類から学んでいきましょうか!

*例外:画像・動画・キャッチフレーズなどを元にして作られたミームコイン

トークンの分類と種類

トークンの分類方法は次のような感じです.

  1. 代替可能かどうかに注目した分類
    1. 代替可能なトークン(Fungible token [FT])
    2. 代替不可能なトークン(Non-fungible token [NFT])
  2. トークンの価値と機能に注目した分類
    1. ユーティリティトークン
    2. ガバナンストークン
    3. NFT
    4. SBT

最初の代替可能性は,等価交換できるかどうかに注目していますね!2番目のトークンの価値と機能に基づく分類の方が実用的で分かりやすいと思います.

なので,本記事ではトークンの価値と機能に注目した分類で話を進め,それぞれのトークンの説明で代替可能性に言及していきますね!

ガバナンストークンは前回でてきたけど,他は知らないなぁ~最近,知らない単語ばっかり.

大丈夫!

1つずつ説明していくから!

ユーティリティトークン

ユーティリティトークンは,特定のサービスやプラットフォーム内で使用されるトークンです.

このように説明すると分かりにくいですかね?

要は,通貨的な機能を持つトークンのことです.

ビットコイン($BTC)イーサ($ETH)はユーティリティトークンの代表例ですね.

なお,ユーティリティトークンは,等価交換することができるのでFTに分類されます.

ガバナンストークン

組織やプロジェクト(=DAO)の統治(ガバナンス)のために発行されるトークンがガバナンストークンです.

「統治」と書くと階層構造を想像する人が多いですが,DAOでは特定の目的を達成するために各メンバーが対等に活動していますので,その想像は正しくありません.

じゃぁ,どういう意味ですか?

DAOの意思決定や方向性を確認することですね.特定の管理者がいないDAOでは,メンバーの意見・考えを投票で確認します.その投票で使うトークンがガバナンストークンです!

ガバナンストークンの保有者=「投票権」を持ってる人ってことですね?

はい,その通りです!ちなみに,ガバナンストークンも等価交換することができるのでFTに分類されます.

NFT

NFTは “Non-fungible token” の略で,日本語にすると「非代替性トークン」とか「代替不可能なトークン」となります.

他には替え難い価値や権利をトークン化したものと考えると分かりやすいかもしれません.

例えば,アートNFT・チケットNFT・不動産NFT・音楽NFTなどが有名です.

注意して欲しいのは,代替不可能≠売買不可能ってこと!

何物にも替え難い価値や権利でも,売買・譲渡(=取引)することは可能ですよ.

SBT

SBTは “Soul bound token” の略で,”Soul bound” は「魂に紐づいた」という意味です.

難解ですが,魂=個人と考えると分かりやすいと思います.

個人の存在そのものに紐づいたトークン

個人は唯一無二の存在なので替えが利きません.

つまり,SBTはNFTの1種です!

NFTとは何が違うの?

重要な質問ですね.

売買・譲渡の可能性が違います!

NFTは売買・譲渡ができるけど,SBTはそれができません

取引して入手できないので,個人の証明書のような存在になり得ます!

履歴書や職務経歴書のような使い方もできるかもしれません.

また,特定のプロジェクトにおいて,その草創期から支えているメンバーにSBTを付与して貢献度を証明するという使い方もできますね!

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トークンの安全性

トークンはブロックチェーン上で発行されるので,スマートコントラクトを基盤にしています.

このあたりの考え方はもう大丈夫ですか?

もちろん!安全で透明性の高い取引と管理が可能ってことでしょ!

素晴らしい!

その通りです!!

トークノミクスとは?

トークノミクス(Tokenomics)*は,「トークン(Token)」と「エコノミクス(Economics)」を組み合わせた造語ですね.

トークンの発行・配布・価値創造・インセンティブ設計などを含む経済モデルを意味します.

*「トケノミクス」と読む人もいます.

トークンの発行

トークンの初期発行量や追加発行するときのルールを決める必要があります.

トークンの配布

発行したトークンの配布方法も重要で,例えば,次のような配布方法がありますよ!

  • エアドロップ
  • Initial coin offering(ICO)
  • Initial DEX offering(IDO)

トークンの価値創造

トークンのユースケースや需要を創出する仕組みを考えなければなりません.

インセンティブ

ユーザーがそのプロジェクトに参加することで得られる報酬や体験などの動機付けも大切ですね!

ところで,インセンティブって何ですか?

簡単に言えば,ある行動を促すための「やる気を引き出すもの」です.

ふ~ん.試験でいい成績をとったら,ご褒美にお小遣いアップみたいな感じ?

それも立派なインセンティブですね!

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DeSciにおけるトークンの役割

お待たせしました!ようやくDeSciの話ですね.これまで話してきたトークンがDeSciでどう機能するのかを説明していきます.

DeSciにおけるトークンの役割は主に4つです.

  1. 研究費の調達手段
  2. 研究者や参加者へのインセンティブ
  3. ガバナンスと意思決定プロセス
  4. データの保護と共有

研究費の調達手段としてのトークン

研究プロジェクトに必要な資金調達を効率的に行う手段としてトークンが利用されていますね.

研究者はトークンを発行し,投資家や支援者から資金を集めることができますよ!

インセンティブとしてのトークン

研究者やプロジェクト参加者に対する報酬やインセンティブとしても機能しています.

具体的にはどういうこと?

研究者にとってのインセンティブと参加者にとってのインセンティブを分けてお話しますね!

新しい発見をする&論文を発表する&査読をするが「プロジェクトに貢献する」ことになるのでトークンがもらえます.

これは研究者にとってのインセンティブですね!

プロジェクトにデータを提供する&実験に協力することも「プロジェクトに貢献する」ことなので,それに対してトークンが配布されます.

これが参加者のインセンティブとなります.

研究者・参加者ともに「自分の貢献が認められている」と感じることで,より積極的にプロジェクトに協力しようという気持ちになりますね!

確かに!

トークンを使ったガバナンスと意思決定プロセス

ガバナンストークンを利用することで,研究プロジェクトの意思決定プロセスにコミュニティ全体が参加できます.

繰り返しになりますが,スマートコントラクトを基盤にしているので,安全で透明性の高い取引と管理が実現しますよ!

トークンを使ってデータの保護と共有

トークンを用いて研究データの共有と保護が行われます.

ブロックチェーン技術により,データの改ざんリスクが低減され,信頼性が向上します.

この辺りのイメージが難しいんですよね~具体的な説明をお願いします!

もちろんですよ!言葉だけではなかなかイメージが湧かないですよね.

研究データの保護

研究員Aは新しい実験結果を出し,そのデータをブロックチェーンに記録しました.

実験データを記録するにはトークンが必要です.

トークンを使うことで,「そのデータが記録された」ことがブロックチェーン上に証明されるので.

そして,ブロックチェーン上の記録なので誰もそのデータを勝手に変更できません

だから,研究結果の信頼性が保つことが可能です!

データの共有

研究員Bは新薬の研究をしていて,この研究に関連するデータを他の研究員と共有したいと考えています.

トークンは,データをブロックチェーンに記録する時そのデータを閲覧する時に使います.

共有されたデータを確認したい研究員は,トークンを使ってそのデータにアクセスするんですね!

この時,トークンはデータの閲覧や利用に対する「鍵」のような役割を果たしていますよ~

  • 誰がデータを共有したか?
  • いつ共有されたのか?

こういったことも明確になり,研究の透明性も高まりますよね!

また,他の研究員がデータを閲覧するたびに,研究員Bがトークンを受け取る仕組みも作ることが可能です.

これは実験データを共有するインセンティブになりますね.

IP-NFTsによる知的財産の保護と取引

研究員Cが新しい技術を発明し,この発明の知的財産権をNFT(IP-NFTs)として発行します.

IP-NFTs は,ブロックチェーン上に記録され,その発明の所有権*を証明します.

研究員Cは,このIP-NFTを使って発明の権利を他の研究員や企業に売却することが可能です.

IP-NFTを購入した者は,その発明の知的財産権を持ち,それを使ってさらに研究を進めたり,商業利用したりできるでしょう.

なるほど!データの記録や共有でトークンを使うってことなんですね!最後の知的財産権NFTも面白いですね~

法的な課題はありますが,知的財産権がブロックチェーン上で明確に管理されることで,不正利用や盗用の防止を期待できますね!

*デジタル資産(NFTなど)は民法上の「物」に該当しません.つまり,ここでの「所有権」は民法が定める「所有権」ではありません.NFTの売買・取引では,そのNFTに関連する具体的な権利が契約書でどう規定されるかが重要になります.

VitaDAOにおけるトークンの導入例

それでは,DeSciプロジェクトにおけるトークンの導入例としてVitaDAOを紹介します!

VitaDAO・オフィシャルサイト:https://www.vitadao.com/

・Xの公式アカウント:https://x.com/vita_dao

・Discordの公式サーバー:http://discord.gg/vitadao

VitaDAOは長寿科学に焦点を当てたDAOで,ブロックチェーン技術を活用して研究資金の調達研究成果の共有を行っています.

VitaDAOは “VITA” というガバナンス・トークンを発行しています

VITAトークンの保有者は様々な提案や決定に投票する権限を持っているので,DAO内の研究資金やプロジェクト開発の方向性に影響力を持つことになりますね.

この仕組みにより,トークン保有者のコミュニティは,長寿科学の分野を発展させる可能性が高いプロジェクトに向けて組織の舵取りができるんです.

また,インセンティブとしての役割もあり,研究者&参加者の双方が,VitaDAOに貢献することでVITAトークンを獲得することが可能です.

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DeSciにおけるトークンの役割と価値【まとめ】

トークンの基本概念と種類,DeSciでの使用方法をまとめました.

DeSciにおけるトークンの導入は,科学研究の透明性・効率・公平性を向上させる可能性を秘めています.

NFTの所有権など法的な課題もありますが,それを克服してトークンのメリットを最大限に活用した時,科学研究の在り方が大きく変わるかもしれませんね.

もっと勉強したい方へ

DeSciに関する日本語の文献を集めてみました!

・デサイロ(De-Silo)のDeSciに関する連載【第1回】

「DeSci(分散型サイエンス)」とは何か?研究資金調達のオルタナティブとなりうるムーブメント|濱田太陽
人文/社会科学の研究にとって、重要な課題の一つが「資金調達」。短期的な実益に結びつきづらい領域の研究資金を確保するための最適解は、未だ見つかっていないのが現実でしょう。そんな現状を...

・デサイロ(De-Silo)のDeSciに関する連載【第2回】

研究人材のマッチングから、研究への貢献に応じたトークン付与まで──DeSciが実現するエコシステムの最新マップ|濱田太陽
短期的な実益に結びつきづらい人文/社会科学の研究にとって、重要な課題の一つが「資金調達」です。その現状を打開するヒントを探るべく探究する連載シリーズ「研究資金調達のオルタナティブを...

・デサイロ(De-Silo)のDeSciに関する連載【第3回】

アカデミアにおける資金状況の改善に向け、「DeSci(分散型サイエンス)」が乗り越えるべき課題──経済的持続性、コミュニティづくり、システム基盤の整備|濱田太陽
短期的な実益に結びつきづらい人文・社会科学の研究にとって、重要な課題の一つが「資金調達」です。その現状を打開するヒントを探るべく探究する連載シリーズ「研究資金調達のオルタナティブを...

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短期的な実益に結びつきづらい人文/社会科学の研究にとって、重要な課題の一つが「資金調達」です。その現状を打開するヒントを探るべく探究する連載シリーズ「研究資金調達のオルタナティブを...

・濱田太陽.Web3 社会がつなぐ研究と人と資金.アド・スタデ ィ ー ズ.2023a,vol.83.

Web3社会がつなぐ研究と人と資金|アド・スタディーズ|公益財団法人吉田秀雄記念事業財団
イントロダクション 科学は我々の生活の基盤の一つになり、イノベーションの源泉にな...

・Forbes JAPANの記事

動き始めた「DeSci」の可能性とは | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
「Web3」や「DAO(自律分散型組織)」がトレンドになるなか、サイエンスの世界にもその余波が訪れている。総じて苦しい資金状況に置かれているアカデミアを変革することが期待されている...

・BUSINESS INSIDERの記事

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ブロックチェーンなどの新しいテクノロジーを活用した「Web3」を研究現場に活用する取り組み「分散型科学」(DeSci:ディサイ)が注目されています。4月16日には、東京でカンファレ...

・濱田太陽. 分散型科学が拓く新たなエコシステム: DeSci. Tokyo が果たす役割. 情報の科学と技術, 2024, 74.3: 86-91.

分散型科学が拓く新たなエコシステム:DeSci.Tokyoが果たす役割
J-STAGE

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・デジタルテクノロジー図鑑 「次の世界」をつくる

web3に関する情報収集がしたい方は読んで稼ぐアプリ*「ReadON」を使ってみましょう!DeSciを紹介した記事に動画もありますので,使い方の詳細はそちらご覧ください!

最後までお付き合いいただきありがとうございました.

次回もよろしくお願いいたします.

2024年7月6日 フール

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