【DAO(ダオ)とは?会社と何が違う?】分散型科学(DeSci)の理解に必要な知識(5)
本記事の内容・DAOとは?
・DAOの特徴
・DAOの課題
・DAOの具体例
こんにちは.
元研究者のフールです.
「分散型科学(DeSci)の理解に必要な知識」というテーマでキーワードのまとめ記事を書いています.
前回のトークンについての記事はコチラをご覧ください.
本記事では,DAOについてまとめていきますね!
web3で注目されている組織,DAO(ダオ)
従来の企業の弱点を克服し,より効率的&透明な運営が可能になることから「企業の上位互換」と表現されることもありますが…
よく分からないですよねww
この記事で,企業との違いや課題を学んでいきましょう!
なお,分散型科学(DeSci)とDAOについて簡単にまとめた記事もありますので,お時間のある時に合わせてご覧ください.
DAOとは?
DAO(ダオ)は “Decentralized Autonomous Organization” 略です!
日本語では「分散型自律組織」となりますね.
理解している人にとっては読んで字のごとくなのですが…
よく分からないと思うので,以下の3つの単語に分けて説明しますね!
- 分散型
- 自律
- 組織
分散型
DAOの “D” は「分散型」です!
「分散型」とは,web3の記事で解説した非中央集権的な仕組みことですね.
「1つの組織が全てを管理しない仕組み」で,参加者全員で協力しながら運営しているという意味ですよ.
自律
DAOの “A” は「自律」です!
これは「組織やシステムが事前に定められたルールに従い,外部からの指示や操作を受けずに自動で動作する」ことを指す単語です.
二回目のブロックチェーンの記事で紹介したスマートコントラクトにより,一定の条件が満たされたときに,事前にプログラムされた通りの行動が取られますよ!
コードによる運営なので,人間のミスや意図的な不正を排除できますね.
組織
DAOの “O” は「組織」です!
ある目的のために集まるグループのことを「組織」といいますね?
例えば,
・あるウイルスの病原性を解析
・特定の疾患に罹患した人の割合を調査
・日本人のゲノム解析
など,目的を遂行するために研究者が集まるけど,これは「組織」の例ですね.
叶えたいこと or 解決しなければならないことを実行するために人が集まって「組織」となる.
その運営方法が「分散型」&「自律」なので “DAO” ですね!
DAOの3つの特徴
DAOには3つの特徴があります!
- 中央管理者が不在
- 誰でもチェック可能
- 経済的なインセンティブの提供
中央管理者が不在
「分散型」なので気付いた人もいると思うけど,DAOには中央管理者がいません!
企業には,社長や役員などの「幹部=中央管理者」がいて,その人たちに権力が集中しているよね?
DAOは,その中央管理者がいないので,権力が特定の人に集中しません!
参加者全員で組織を運営する仕組みですね.
具体的には,前回説明したトークンを使うよ!
参加者にはガバナンストークンが配布され,それが投票権として機能します.
DAOの方向性や採用するプロジェクトを決める際に投票を行い,その結果によってスマートコントラクトが結論を出しますよ!
誰でもチェック可能
ブロックチェーン技術を利用しているので,全記録が公開されます!
- DAOがどのような判断をしたのか?
- 何にお金を使ったのか?
こういったことが誰でも確認できるんですね!
ブロックチェーンの記事で書いたように,データの書き換えも困難なので,改ざんの心配もありません.
- プロジェクトの採否はどんな基準?
- 研究資金の不正利用はなかったのか?
科学研究においても,このような疑問や疑念は多くあるので,研究プロジェクトをDAOで運営する意義はありますよね!
経済的なインセンティブの提供
DAOでは,関わった全ての人に経済的なインセンティブがあるよ!
企業をはじめとする多くの組織では,「プロジェクトが成功→その恩恵を受けるのは上層部と株主(出資者)だけ」ってことは多いよね.
モチベーションは下がる一方ですね!
DAOではトークンを活用して公正公平な利益の分配があります.
組織に貢献した人がちゃんと評価される仕組みがあるんですね!
だから,これまで恩恵を受けることがなかった人々(従業員,患者,応援してくれた人)にも報酬を配布できます.
DAOの課題
イイこと尽くしのDAOですが,もちろん課題もありますよ!
よく指摘されるのが、次の4つ!
- 技術的な問題
- 法的な安定性
- 参加者の教育不足
- 意思決定の複雑さ&遅延
技術的な問題
スマートコントラクトによる自律した運営を紹介しましたが,スマートコントラクトも万能ではありません.
- コードのバグ
- 設計ミス
これらによって問題が発生する可能性があります.
そのため,技術的な検証を念入りに行う必要ありますね!
法的な安定性
DAOは新しい仕組みなので,法整備や規制などが複雑です.
法改正により,合同会社型DAOが設立できるようになりました.
法人格の取得が可能になったことで法的な安定性は向上しましたが…
DAOの自律的な特性と合同会社の規約の両立は難しそうですね.
参加者の教育不足
DAOの目的や運営,使用する技術に関して,参加者が十分な理解を持っていない状況が指摘されています.
- DAOのルールや目的の誤解する人
- 有害な提案が参加者の知識不足で採用される危険
- セキュリティや資産管理の難しさ
- 言語の壁によるコミュニケーションの問題
どれもDAOの運営に大きな影響を与えうる課題ですね.
解決方法はトレーニングプログラムの導入やメンター制度の構築で教育機会を充実させるほかありません.
意思決定の複雑さ&遅延
「分散型」はDAOの特徴だけど,参加する人が多くなるので意思決定が複雑になります.
少人数で決めた方が単純ですからね…
また,中央管理者が不在だから,どんな局面でも投票による決定が必要です.
そのため時間もかかりますよ.
DAOの具体例①:ビットコイン
最後にDAOの具体例を紹介しますね!
広義のDAOになりますが,中央管理者が存在しない完全に分散型の運用モデルを初めて実現したプロジェクトはビットコインです!
中央管理者がいない分散型
ビットコインは中央銀行や企業によって管理されていません.
ネットワーク全体が,世界中のノードによって維持されています.
ノードは誰でも参加可能で,同じルールの下で運用されます.
スマートコントラクトの原型
ビットコインのネットワークは,事前に設定されたルール(プロトコル)に基づいて動作します.
このプロトコルは,取引の検証やブロック生成などを自律的に行う仕組みを備えていますので,スマートコントラクトの基本的な考え方に類似していますね.
コミュニティによる意思決定
ハードフォークやソフトフォークと呼ばれるプロトコルの変更は,開発者・ノード運営者・マイナー(採掘者)などのコミュニティ全体の合意によって進められます.
DAOの具体例②:VitaDAO
科学分野におけるDAOの例として,VitaDAOを紹介します!
VitaDAOは,老化克服や寿命延長を目的とした医薬品開発をDAOによって主導するプロジェクトです.
医薬品研究開発には数十~数百億円もの莫大なコストがかかります.
また,その効果検証のための長い月日も必要ですね…
だから,大規模な研究所や大富豪などによる中央集権的な管理が不可欠でした.
加えて,製薬会社による特許の保有で,治療薬が高額になり,一部の限られた人しか恩恵を受けることができないという問題も指摘されています.
こういった課題を長寿研究の分野で解決するため,VitaDAOは組織されました!
バイオテック研究×ブロックチェーンの組み合わせで,資金調達や研究データのデジタル化を行っています.
DAOの運営では,VITAトークン($VITA)が使われていますね!
VitaDAOは$VITAを発行しており,広報や資金提供などでVitaDAOに貢献した者は$VITAを獲得できます.
もちろん,トークンを直接購入することもできますよ!
そして,$VITA保有者は,VitaDAOのいくつかの意思決定(以下参照)に参加できます.
- DAOから資金提供を受けるプロジェクト
- プロジェクト営利化の方法決定
- VitaDAOのガバナンス
- 資金マネジメント
さらに,研究開発で得られたIPをNFT化したIP-NFTsを活用して,研究室のIPをブロックチェーン化します.
このIP-NFTsを製薬会社などにレンタル・販売することで,取引手数料や売却益を得ています.
参考資料の紹介
Web3とDAO 誰もが主役になれる「新しい経済」-単行本(ソフトカバー)
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デジタルテクノロジー図鑑-単行本(ソフトカバー)
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