【チェーンとは?規格って何!?】分散型科学(DeSci)の理解に必要な知識(9)
本記事の内容・暗号資産やトークンの「チェーン」とは?
・「チェーンが異なる」とは?
・規格とは?
・レイヤー1とレイヤー2
・チェーンとプロジェクトの関係
・DeSciプロジェクトのチェーン
こんにちは.
元研究者のフールです.
最近は「分散型科学(DeSci)の理解に必要な知識」というテーマでキーワードのまとめ記事を書いています.
前回のDiscordの記事はコチラをご覧ください.
本記事では,チェーンについてまとめていきますね!
チェーンはブロックチェーンの略です.
ブロックチェーンは1種類ではなく多数存在するので,「チェーンが違う」や「異なるチェーン」という表現がよく使われます.
理解するとなんてことのない話なのですが,これを知らないと誤送金の危険もあるため,この記事でまとめますね!
なお,分散型科学(DeSci)についてまとめた記事もありますので,お時間のある時に合わせてご覧ください.
暗号資産やトークンの「チェーン」とは?
以前お話したブロックチェーンを略して「チェーン」と呼んでいます.
チェーンは1種類ではありません!たくさんのチェーンが存在します!
例えば…
- Ethereum
- Solana
- TRON
- Bitcoin
- BNB Smart Chain
- Base
- Arbitrum One
- Sui
- Hyperliquid
- Avalanche
- Aptos
- Polygon POS
- Optimism
などがあります.
他にもたくさん存在し,各チェーン上で,それぞれの暗号資産やトークンが存在していますよ.
「チェーンが異なる」とは?
このチェーンの考え方で難しいのは,「同じ通貨だけどチェーンが異なる」場合があること.
例えば,イーサ(ETH)という暗号資産は,Ethereum・Polygon・Arbitrumなどの複数のチェーンで動作しています.
暗号資産としてのETHの価値は変わりません.
でも,「チェーンが異なる」ので,EthereumのETHをPolygonで使うことはできません.
逆も同様で,PolygonのETHをEthereumで使うこともできません.
チェーンのイメージは「異なる道路」
分かりにくいと思うので,チェーンを交通インフラで考えてみましょう.
暗号資産やトークンは「車」です.
例えば,ETHやビットコイン(BTC)が「車」ですね.
チェーンは「道路」になります.
「車」が移動するために必要な基盤です.
ETHを運ぶ道路,BTCを運ぶ道路って感じですね.
通常は,「車」は,それぞれ対応する「道路」でしか走れません.
ETHはETHを運ぶ道路を走ります.
BTCもBTCを運ぶ道路を使わないとダメですよ.
でも,ルート変更が必要な場合もありますね!
ETHが,ETHを運ぶ道路を外れて,Polygonの道路にルート変更することもあります.
通行料(手数料)が安いとか,渋滞していない(速い)とか理由は様々ですね.
この「異なる道路」への移動を「チェーンが変わる」と表現してますよ.
このように異なるチェーン同士で暗号資産やトークンをやり取りする場合,「ブリッジ」と呼ばれる仕組みを使って移動させます.
ルート変更の「ブリッジ」
ルート変更の際には,「ブリッジ」という仕組みを使います.
EthereumのETHをPolygon上のETH(Wrapped ETH)にする場合…
- EthereumでETHを一時的に預ける
- PolygonでWrapped ETHを再発行する
この「ブリッジ」により,PolygonチェーンでもETHを使えるようになるんです!
このように,「ブリッジ」を活用することで,さまざまなチェーンで暗号資産やトークンを効率よく運用できるようになりますよ.
規格とは?
チェーンとは別で「規格」というものがあります.
これは,特定のチェーン上での動作方法を定めたもので,イメージは「共通のルールブック」ですね.
交通インフラで例えるなら「運転免許証」のようなものです.
免許証があれば,特定の道路(チェーン)でどの車(トークン)でも運転(利用)できます.
異なるチェーンへ行く場合でも,ルールが同じなら,その免許証が使えるので「ブリッジ」するだけです.
規格の具体例:ERC-20
Ethereum Request for Comments 20(ERC-20)が有名ですよ.
これはEthereum上で動作するトークンの標準規格です.
この規格に対応しているチェーン(イーサリアム互換チェーン)では,Ethereum上の暗号資産やトークンが動作します!
例えば…
- Polygon
- BNB Smart Chain(BSC)
- Arbitrum One
- Optimism
ブリッジすれば,これらのチェーンでEthereum上のトークンが利用可能です.
規格の具体例:ERC-721&ERC-1155
ERC-721&ERC-1155もEthereum上で動作するトークンの標準規格です.
主にNFTに関連して利用されていますよ!
用途や機能に違いがありますが,細かい話は表でまとめるだけにしますね.
ERC-721 | ERC-1155 | |
トークンの種類 | 単一のNFT | 複数のNFTとFTを管理可能 |
トークンの発行数 | 1種類につき1つだけ | 1種類につき複数の発行が可能 |
トランザクション効率 | 単一トークンの操作ごとに必要 | 複数トークンを一括操作が可能 |
コントラクトの数 | 1トークンごとに1コントラクト | 複数トークンを1コントラクトで管理 |
用途 | デジタルアート,音楽など | ゲーム内アイテム,コレクション |
レイヤー1とレイヤー2
レイヤー1とレイヤー2は,ブロックチェーンのスケーラビリティや効率化を目的とした構造を説明する用語です.
それぞれ役割が異なり,チェーン全体の性能を支えるために設計されていますね.
こちらも細かい話は表でまとめるだけにします.
レイヤー1(L1) | レイヤー2(L2) | |
主な役割 | メインネットワーク,全体のセキュリティ維持 | トランザクション処理の効率化と負荷軽減 |
具体例 | Ethereum,Bitcoin | Polygon, Arbitrum |
トランザクション処理速度 | 遅い | 速い |
手数料(ガス代) | 高い | 安い |
セキュリティ | 独立したセキュリティ | レイヤー1のセキュリティを利用 |
イメージ | 高速道路の本線 | バイパスや高速出口の迂回路 |
チェーンとプロジェクトの関係
プロジェクトによって状況が異なりますが,チェーンとプロジェクトの関係は次の3つに分けられます.
- 独自のチェーンを持つプロジェクト
- 他のチェーンを利用するプロジェクト
- ハイブリッド型プロジェクト
独自のチェーンを持つプロジェクト
プロジェクトが「自分たち専用のチェーン」を開発して運営しているケースですね.
例えば…
- Bitcoin(ビットコイン)
- Ethereum(イーサリアム)
- Solana(ソラナ)
- Polygon(ポリゴン)
メリット
チェーンの設計を自由にカスタマイズ可能で,プロジェクトの目的やニーズに特化した性能を提供できること.
デメリット
開発と維持には高いコストや専門知識が必要で,他のチェーンとの互換性を確保するために追加の仕組みが必要となること.
他のチェーンを利用するプロジェクト
既存のブロックチェーンを利用してトークンやAppを構築するケースです.
例えば…
- USDT(Tether)
- Uniswap(ユニスワップ)
メリット
初期開発コストを大幅に削減可能で,他のプロジェクトと互換性も高く,既存のユーザー層を取り込めること.
デメリット
使用するチェーンの性能(スケーラビリティや手数料など)に依存するので,独自性が制限されること.
ハイブリッド型プロジェクト
独自のチェーンを維持しながら,他のチェーンと互換性を持たせるプロジェクトもありますよ.
Ethereumと互換性を持つプロジェクトは多いですね.
例えば…
- Polygon
- BSC(バイナンススマートチェーン)
メリット
独自性を保ちながら他チェーンとの接続が可能なので,ユーザーの利用範囲が広がること.
デメリット
ユーザーが複数のチェーンを使い分ける必要があるので,操作が煩雑になり,初心者にとってはハードルが高くなること.
また,独自チェーンのセキュリティが先方のチェーンのセキュリティにも依存するので,セキュリティリスクが増加すること.
チェーンはたくさんある理由
読者の中には「なぜ,チェーンはたくさんあるのか?」と疑問に感じた人もいるかもしれません.
ブロックチェーンの記事でトリレンマについて触れたのを覚えていますか?
各チェーン(プロジェクト)は,スケーラビリティ・分散性・セキュリティの3つをどうやって満たすのかを考え,様々な取り組みを行っています.
おそらく,その結果として,たくさんのチェーンが乱立した状態になってしまったんですよ…
あくまでも私の予想ですけどね.
DeSciプロジェクトのチェーン
最後にDeSciプロジェクトのチェーンをいくつか見ていきましょう!
- $VITA
- $MEAI
- $CIRX
$VITA
長寿科学分野の医薬品の開発に重点を置くVitaDAOは,トークン $VITAを発行しています.
$VITAは,Ethereumチェーン上で発行されたトークンですね.
$MEAI
AI 搭載 Web3 ライフスタイル アプリを提供しているMeAIは,トークン $MEAIを発行しています.
食事の写真を撮り,AI にお皿を分析させて栄養価を計算することで報酬を獲得する,面白そうなアプリですね.
$MEAIは,Baseチェーン上で発行されたトークンです.
$CIRX
医療記録や臨床試験に適したデータ監査技術を提供するCircular Protocolは,トークン $CIRXを発行しています.
$CIRXはCircularチェーンのネイティブトークンです.
参考資料の紹介
デジタルテクノロジー図鑑-単行本(ソフトカバー)
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