【ブロックチェーンとは何か?】分散型科学(DeSci)の理解に必要な知識(2)
本記事の内容・ブロックチェーンの定義
・ブロックチェーンの特徴
・科学分野におけるブロックチェーン活用例
・ブロックチェーンの課題
こんにちは.
元研究者のフールです.
「分散型科学(DeSci)の理解に必要な知識」というテーマで前回からキーワードのまとめ記事を書いています.
本記事では,ブロックチェーンについてまとめていきますね!
なお,分散型科学(DeSci)の概要&キーワードを簡単にまとめた記事もありますので,お時間のある時に合わせてご覧ください.
ブロックチェーンの定義
ブロックチェーン
単語は聞いたことあるけれど,よく分からない…
このような人は多いのではないでしょうか?
まずはその定義から確認していきましょう!
ブロックチェーンとは,データを「ブロック」として記録し,それを時系列順に「鎖(チェーン)」のようにつなげていく技術です.
そしてブロックは,複数のコンピュータ(ノード)に分散して保管されており,中央で管理するサーバーがありません!
前回お話したweb3を思い出してください!web3は情報を分散させて個人が管理する時代でしたね.つまり,ブロックチェーンがweb3を実現するために不可欠な技術となりますよ!
ブロックチェーンの4つの特徴
定義を確認したので,次は特徴をまとめますね!
Web2の技術とweb3のブロックチェーンは何が違うのか?
ブロックチェーンには4つの特徴がありますよ!
- 運営コストが低い
- データの改ざんが困難
- 取引した全員がコピーを保有
- 暗号技術を用いてデータを保護
運営コストが低い
「ブロックチェーンは運営コストが低い」と言われており,その理由も4つあります.
- 仲介者が不要
- 管理コストの削減
- 中央管理サーバーが不要
- 信頼性の担保に追加費用が不要
仲介者が不要
Web2の中央集権型システムでは,何かしらの仲介を必要とします.
例えば,取引や契約を実行する際には,銀行・決済サービス・証券会社などが必要ですね.
これらの仲介者は,システムの運用や信頼性を担保する役割を果たします.
しかし,その対価として手数料も請求しますね.
送金を例に考えてみましょう!
銀行で送金するには,銀行に支払う手数料がありますよね.
回数が重なれば,この手数料もけっこうな額になります.
一方,ブロックチェーン上の送金する場合は直接送金が可能ですよ.
仲介者がいないので仲介手数料もかからず,コストを低く抑えることができます!
サービスによっては無料で送金可能なんですよ~
管理コストの削減
システムの自動化による管理コストの削減もポイントですね!
ブロックチェーンでは,スマートコントラクトという自動化されたプログラムを使います.
スマートコントラクトは,事前に設定された条件が満たされると,自動的に契約を執行する仕組みですね!
例えば,AさんがBさんに商品を送る契約がスマートコントラクトで設定されているとします.
Bさんが代金を支払ったことが確認されると,商品が発送される仕組みを自動的に実行できちゃいます.
人が介入する必要がなくなり,人件費や手続きの遅延が削減されますよね!
中央管理サーバーが不要
1つの中央管理サーバーを運営・維持するWeb2のシステムは,以下のような費用が掛かります.
- サーバー機器の購入・保守費用
- セキュリティ対策費用
- 電力消費
ブロックチェーンでは,データが複数のノードに分散して保管されて分散管理されています.
つまり,中央サーバーを設置・運営にかかる費用が掛かりません!
信頼性の担保に追加費用が不要
Web2では,データの透明性や信頼性を確保するために,独立した第三者機関(監査会社や信用保証機関)が関与することがありました.
当然,これにも費用がかかりますね.
一方で,ブロックチェーンは取引データが全て公開されています!
また,後述する「改ざんが困難」という特徴もあるため,追加的な信頼性保証のコストが不要です.
データの改ざんが困難
ブロックチェーンは,「ブロック」として記録したデータを時系列順に「チェーン」のようにつなげる技術です.
この「ブロック」は相互に関連していて,過去の取引がすべて連続的につながっています.
だから,一つの「ブロック」を改ざんすると,その後の全ての「ブロック」を作り直さなければいけません!
膨大な計算量を必要とするので,データの改ざんのハードルは非常に高いですね.
また,次に説明する「取引に関与した全員がコピーを保有」していることも,データの改ざんをさらに困難にしていますよ.
取引した全員がコピーを保有
Web2では企業・組織が巨大なコンピュータを使って全データを保存する「データの一元管理」が当たり前でした.
サーバーがダウンしたり,サイバー攻撃を受けたりすると…
データにアクセスできなくなったり,顧客や資産に関するデータが一瞬で無くなることが指摘されていました.
でも,ブロックチェーンでは,その心配が要りません!
繰り返しますが,ブロックチェーンでは複数のノードにデータが分散して保管・管理されています.
これは「各地にある小規模なコンピュータに記録のコピーが残っている」ことを意味していていますよ!
もし一部のコンピュータがダウンしても,データにアクセスできなくなることはありません!
また,ある人が特定のデータを変更しようとしても,各ノードに分散している全てのコピーを変更しなければなりません.
その変更がネットワーク全体のコンセンサスを得たものでない限り,他の多くのノードはその変更を「正しくない」と判断するでしょう.
だから,データの改ざんはほぼ不可能になります!
ブロックチェーン上のデータは「透明性」と「信頼性」を持ちながら,安全に保管され,改ざんのリスクが最小限に抑えられているのです.
暗号技術を用いてデータを保護
「ブロックチェーンは取引データが全て公開されている」と書きました.
読者の中には,プライバシーの侵害や情報漏洩の可能性を考えた人もいるでしょう.
でも,その心配は要りませんよ!
ブロックチェーンは,ハッシュ関数という暗号技術を使って,データを短い文字列に変換しています.
この「短い文字列」を「ハッシュ値」と呼びますよ.
ハッシュ値は,元のデータが少しでも変わると全く異なる値になっちゃいます.
だから,一つの「ブロック」を改ざんすると,その後の全ての「ブロック」を作り直さなければいけなくなるんですね!
そして,ブロックチェーン上で公開されるのはハッシュ値だけです!
元のデータそのものは公開されないので,匿名性は確保されていますよ.
よって,プライバシーの侵害や情報漏洩も起きません.
ブロックチェーンの科学分野での活用例
ブロックチェーンについて,理解はできたでしょうか?
続いて,科学分野におけるブロックチェーンの活用例を紹介しますね.
科学分野では,実験(研究)データの透明性&信頼性を確保するために使われていますよ!
復習ですが…
- 取引データは全て公開
- データの改ざんが困難
ブロックチェーン上のデータにはこのような特徴がありましたね!
これを研究データに応用すると…
- プロトコルや実験条件などは全て公開
- Rawデータの改ざん防止
このように活用することができますね!
ブロックチェーンを活用することで,再現性の確保やデータの捏造防止が期待できると考えられていますよ.
また,公開されるデータもハッシュ関数で変換されたハッシュ値なので,DNAや病歴などの個人情報も扱うことができますね.
つまり,基礎研究だけでなく,臨床研究でも活用できます!
ブロックチェーンの課題:トリレンマ
ブロックチェーンがweb3にとって不可欠な技術で,革新的なものであると分かってきたと思います.
ただ,そんなブロックチェーンにも課題はあります.
ブロックチェーンには「トリレンマ」と呼ばれる課題があるよ!
皆さんが馴染みある単語は「ジレンマ」だと思います.
この「ジ」は「di(2つ)」という意味ですが,「トリ」は「tri(3つ)」なので「3つの矛盾」という意味ですね.
3つの条件を同時に満たすのは困難なので「トリレンマ」ですね.
その3つの条件は以下の通りです.
- スケーラビリティ
- 非集権化(分散性)
- セキュリティ
スケーラビリティ
これは「ブロックチェーンのスケーラビリティ問題」と呼ばれているものです.
ブロックチェーンは,その利用者が増えると次のような問題が発生します.
- 処理速度の低下:トランザクション(取引)が増え,処理時間が延長
- 手数料の増加:取引が混雑すると,優先処理してもらうために高い手数料が必要
- データ量の増加:全てのノードが保存し続けるのが困難
簡単に言えば,スムースな取引ができなくなるってことですね!
非集権化(分散性)
非集権化(分散性)を維持するには,より多くのノードがデータを共有する必要があります.
でも,ノードが増えると,データ量が増えてスケーラビリティに影響しちゃいます…
セキュリティ
データがサイバー攻撃や不正行為から安全に守られているか?
これに関わるのがセキュリティですね.
- ハッキング:不正なトランザクションを実行
- 改ざん:過去データの変更
- 51%攻撃:ネットワークの大部分が支配され,不正なブロックを生成
セキュリティが欠けると上記のような問題が発生しちゃいます.
でも,セキュリティを強化するために,高度な暗号化技術を採用すると,トランザクション処理速度が遅くなるでしょう.
逆に,全体の処理時間は短くしよとすると,セキュリティに問題が起きやすいですね.
【まとめ】ブロックチェーンとは何か?
今回はブロックチェーンの定義や特徴についてまとめました.
最後に記事のまとめを記載しておきますね!
【定義】
データを「ブロック」として記録し,
それを「鎖」のように時系列順につなげる技術
【4つの特徴】
・運営コストが低い
・データの改ざんが困難
・取引した全員がコピーを保有
・暗号技術を用いてデータを保護
【課題:トリレンマ】
・スケーラビリティ
・非集権化(分散性)
・セキュリティ
すでに科学分野(分散型科学)でも使われている技術ですよ!課題はあるけどね.
参考資料の紹介
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