実験室で使う水の使い分け【超まとめ】(1)

純水と超純水の違い
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実験室で使う水の使い分け【超まとめ】(1)

 

純水と超純水

純水と超純水って何が違うの?

本記事は,このような「なぜ?どうして?」にお答えします.

 

こんにちは.

博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事しているフールです.

先ずは,以下のやりとりをご覧ください.

 

純水と超純水の違い

純水と超純水の違いを説明できますか?

 

純水と超純水

純水は「純度の高いきれいな水」で,超純水はそれよりもすごい水!

 

ダメだ,こりゃ

 

えっ!?違うの?

「超」って「すごい」ってことでしょ?

 

皆さんは,純水と超純水の違いを説明できるでしょうか?

実験室では,いろいろな「水」を使います.

水道水,イオン交換水,蒸留水,RO水,超純水,滅菌水,精製水,注射用水など,とりあえず思いついた「水」を挙げただけですが,これだけの種類があります.

そこで,実験で使う「水」の使い分けを2回にまとめました!

本記事では,主に水道水,イオン交換水,蒸留水,RO水についてまとめています!

 

サマリー・水道水は不純物を含んでおり,実験用水としては不適切です.

・水道水を除いた水(蒸留水,イオン交換水,RO水)全てが純水です.

・純水の水質および精製方法には公的な規定がありません.

水道水

上水場で浄化された水です.

法律(水道法)*1で定められた基準を満たし水が水道管によって各家庭や事業所に供給されます.

飲料水の基準をクリアしていますが,不純物*1は多く含まれており,実験用水としては不適切です.

*1余談ですが,ミネラルウォーターの規格基準は,食品衛生法で定めています.
*2水道水に含まれる不純物は,無機物有機物微生物微粒子に分類されます.
無機物:無機イオン,Ca,Mg,無機塩類,重金属,酸素・窒素ガス.
有機物:リグニン,タンニン,エンドトキシン,RNase,農薬,除草剤など.
微生物:細菌,真菌類,藻類.
微粒子:鉄さび,コロイドなど

実験室での用途

実験器具の洗浄水廃棄用オートクレーブの供給水として使う程度です.

イオン交換水(Ion exchanged water [IEW])

イオン交換樹脂の働きで,水中のイオンがHとOHに置換された水です.

イオンが除去されているので,慣用的に脱イオン水(De-ionized water [DIW])という人もいます.

有機物は除去されていません

実験室での用途

水道水で洗浄した実験器具のすすぎに使います.

蒸留水(Distilled water [DW])

水道水を沸騰・気化させてできる蒸気を冷却して得た水です.

1回の蒸留操作で,比抵抗値(Ω・cm)*31-3M程度になります.

沸点の違いを利用した精製方法なので,水の沸点に近い成分や水より沸点が低い成分は除去されてません

ちなみに,イオン交換水の蒸留操作で得られた水をDDW(またはD2W)と表記することがあります.

一般の蒸留装置で作られる水の多くは,DDWです.

*3比抵抗値とは,電気の流れにくさを表す指標です.反対に,電気の流れやすさを表す指標は導電率(μS/cm)です.導電率は,比抵抗値の逆数に等しいので,2 Ω・cm = 0.5 μS/cmと表すことができます.

実験室での用途

  • 細胞培養用インキュベーター内のウォーターリザーバー用
  • 器具滅菌用のオートクレーブへの供給水
  • ウォーターバスへの供給水
  • 細菌培養用の培地作製
  • タンパク質の定量

などの生化学実験に使用します.

逆浸透水(Reverse osmosis [RO]水)

水道水を逆浸透膜(RO膜)で処理した水です.

RO膜は,水より小さな分子だけ通過させる膜です.

だから,水道水中に含まれるほぼ全ての不純物を取り除くことができます*4

RO膜の不純物除去効率は97-98%なので,除去効率が同じ膜でも供給原水(水道水)の水質が異なれば,RO水の水質も変わるので注意が必要です.

また,RO膜を通過できる水量は,水温に依存します(温度が低いと通過料も少ない).

よって東北以北では,冬季の水温が低くてRO水の供給量が少なることがあることも知っておくと良いでしょう.

*4溶存ガスの除去効率は高くない.

実験室での用途

バイオ実験(酵素反応,DNAを使った実験,HPLC,電気泳動,銀染色など)で使用します.

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純水

イオン交換,蒸留処理,RO処理などの方法でイオンを除去し,比抵抗値が1~10 MΩ・cm程度になった水*5総称です.

実は,純水の水質および精製方法には公的な規定がありません

よって,水道水を除いた水(蒸留水,イオン交換水,RO水)全てが純水に分類されます.

これまで説明した通り,それぞれ精製方法が違うので水質も異なります

だから,水質の特徴を理解して使用目的に応じて使い分ける必要があるのです.

時々,「純水を使って」などの文言を聞くことがありますね.

残念ながらこの説明は不十分です.

お察しの通り,重要なことは「どの純水を使うのか?」ですから.

*5ちなみに,活性炭フィルターを通しただけの水は,純水ではありません.

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いかがでしたか?

今回は,実験で使う水,特に純水の特徴についてまとめてみました.

次回は,いよいよ超純水について説明します.

最後までお付き合いいただきありがとうございました.

次回もよろしくお願いいたします.

2019年11月13日 フール