研究室のルール【実験室の「暗黙の了解」について考える】

実験室のルール
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研究室のルール【実験室の「暗黙の了解」について考える】

 

実験室の暗黙の了解

〇〇しちゃダメとか,××しちゃダメとか,ルール多すぎ!

なんで?

本記事は,このような「なぜ?どうして?」にお答えします.

 

こんにちは.

博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事しているフールです.

以下の内容は,ある実験室のルールです.

・実験室では走らない.
・実験室では,音楽を聴かない.
・実験室の掃除は夕方にしましょう.
・実験室には,飲食物を持ち込まない.
・実験室では,白衣を着用しましょう.
・実験者は,付け爪やマニキュアなどをしない.
・実験室に入室する前に,手洗いをしましょう.
・実験室から退室する時も,手洗いをしましょう.
・実験室に入室する前に,靴を履き替えましょう.
・実験室では,(男女を問わず)長髪を束ねましょう.
・実験室では,セーターなど毛糸で編んだ衣類を着用しない.
・実験室では,パーカーなどフード付きの衣類を着用しない.
・実験者は,必要に応じて,手袋・マスク・ゴーグルを着用しましょう.
・実験室には,アクセサリー(腕時計や指輪など)や携帯電話を持ち込まない.

まぁ~たくさんありますね(笑).

所属施設や研究室ごとに異なりますが,同様のルールを適用しているところが多いと思います.

それでは質問です!

なぜ,上述のルールが必要なのでしょうか?

実験室に所属する時に,先生や先輩から「〇〇しなさい」と言われたから,ただ守っているだけという人は多いではないでしょうか?

先生や先輩は,皆それを理解していると思いますよ!

「本当かな?」って思ったそこの君,この記事を読んで先生や先輩を試してみてはどうでしょうか(笑)

気付いた頃には「暗黙の了解」となってしまっているルールにも,ちゃんと意味があるんです!

今回は,上述のルールが必要な理由を一問一答形式にしてみました.

※本記事では,「解説」を下方にあえて設置しています.なぜなら,理由を考えながら読んで欲しいからです.安心してください!テストではないので,間違っても誰も責めませんよ!
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サマリー・実験室のルールを守ることは,実験者の安全確保につながります.

・実験室のルールを守ることは,実験環境の維持につながります.

・実験室のルールを守ることは,再現性の確保につながります.

実験室入室準備編

Q. なぜ,実験室に入室する前に,手を洗うの?

A. 実験系に自分の汚れを持ち込まないためです*1

 

Q. なぜ,実験室に入室する前に,靴を履き替えるの?

A. 外部のチリやホコリを持ち来まないため*2と実験室内のチリやホコリを持ち出さないため*3です.

 

Q. なぜ,実験室には,アクセサリや携帯電話などを持ち込んではダメなの?

A. 実験中に使用する試薬や微生物が付着する可能性があるからです*4

 

Q. なぜ,実験室には,飲食物を持ち込んではダメなの?

A. 実験環境を汚染する原因であると同時に,実験室は飲食物を汚染する場所でもあるからです*5

実験室の身だしなみ編

Q. なぜ,実験室では長髪を束ねるの?

A. 実験者の視野を狭めるだけでなく,火を使う実験系では引火する危険もあるからです*6

 

Q. なぜ,実験室では白衣を着用するの?

A. 実験で使用する試薬や微生物から実験者の身を守るためと実験系に影響を与える物質の混入(例えば,汗など)を防ぐためです*7

 

Q. なぜ,実験者は,手袋・マスク・ゴーグルを着用するの?

A. 白衣と同様で,実験者の身を守るためと実験系に影響を与える物質の混入(汗や唾液など)を防ぐためです*8

 

Q. なぜ,実験室では,毛糸で編んだ衣類を着用してはダメなの?

A. 毛玉や静電気は,外部のチリやホコリを持ち来む確率を上げるからです*9

 

Q. なぜ,実験室では,パーカーを着用してはダメなの?

A. 実験室の棚やラックの角にフードがひっかかることで,棚やラックの転倒事故につながるからです*10

 

Q. なぜ,実験者は,付け爪やマニキュアなどをしてはダメなの?

A. 手元操作を確実にするためとコンタミネーションを防ぐためです*11

実験室のマナー編

Q. なぜ,実験室では,飲食をしてはいけないの?

A. 実験で使用した試薬や微生物を,食べ物と一緒に取り込む恐れがあるからです*5.加えて,実験環境を汚染するという側面もあります.

 

Q. なぜ,実験室では走ってはダメなの?

A. 他の実験者との衝突をさけるためとホコリなどが舞うのを防ぐためです*12

 

Q. なぜ,実験室では,音楽を聴いてはダメなの?

A. 実験室内の異常音を検知するためです*13

 

Q. なぜ,実験室の掃除は夕方(仕事終わり)にするの?

A. 掃除で舞ったチリやホコリが実験系に混入する可能性を低くするためです*14

 

Q. なぜ,実験室から退室する時も,手洗いをするの?

A. 実験室内の汚れを持ち出さないためです*15

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フールの解説

*1実験系に影響を与えうるもの全てが汚れになります.例えば,皮脂,汗,お菓子由来の粉,ハンドクリームなどです.

 

*2外部のチリやホコリには,色々な微生物や物質が含まれています.それが実験系に入り込むとコンタミネーションの原因ですね.特に無菌操作をする部屋では重要ですね.

 

*3実験室内のチリやホコリには,実験で使用した試薬や微生物に汚染されていると考えます.汚染された物を外部環境に放出しないことが重要です.

 

*4「汚染された物を外部環境に放出しないこと」と説明しました.それはアクセサリや携帯電話などにも適用されます.自分で汚染されたことに気付けば,適切な処理もできるでしょう.しかし,多くの汚染は無意識の内に起きていますので,何もできません.ところで,仮に適切な処理が終わったとして,あなたは,その処理された物を使用し続けますか?

 

*5実験室で扱う物の中には,ヒトに危害を起こす危険な物質もたくさんあります.同様の理由で,タバコもダメです.また,食べかすなどは実験環境の汚染の原因です.

 

*6髪の毛には汚れ(フケなど)も付着しています.チューブの蓋を開けた状態で放置し,その上を髪が通過しただけで,目に見えない汚れが侵入しているかもしれません.これもコンタミネーションの原因ですね.

 

*7その他の効果として「私は実験していますよ」というアピールにもなります.また,靴を履き替えるのと同じ理由で,白衣着用した状態で実験室から退室してはなりません.ただ,施設によっては制服として白衣を着用しているところもあります.その場合,外見だけでは判断が尽きませんが,実験室内の物とは別の物を着用しているはずです.

 

*8ラボ手袋をはめた状態でドアノブを握ってはダメです.手袋に付着した物がドアノブを汚染しますし,ドアノブに付着した汚れが手袋を汚染します.同様の理由で,実験室内の内線電話も手袋を外してから触りましょう.

 

*9特に冬季は,着用したままで実験室に入りがちです.意識して気を付けましょう.

 

*10試薬棚が倒れたことを想像してみてください.酸やアルカリの物質が周囲に飛び散ります.白衣だけでは十分に防ぎきれません.手足など身体の動きには注意していても,身に着けている衣類の動きには意識がいきません.事故を未然に防ぐために着用しないでください.

 

*11実験系では細かい操作を要求されることが多いです.正確な操作ができずに実験が失敗することもありますし,その失敗で試薬類やチューブ類を無駄にするかもしれません.また爪と指の間の隙間には汚れもたまりやすくなります.無菌操作が必要な実験では,爪が原因のコンタミネーションも起こります.またマニキュアなどは有機溶媒に分類されるので,実験で使う試薬が付着すると除光されるかもしれません.マニキュア由来の物質が試薬類に混入したら,それだけでコンタミネーションですね.

 

*12検体(例えば,大腸菌液)を持った人をぶつかり,それが実験室内に飛散することを想像してください.それだけで全ての実験は一時停止する必要があります.また実験室内のホコリは,遺伝子や種々の分解酵素などを含んでいるかもしれません.それが実験系に入り込む可能性を少なくすることが重要です.

 

*13イヤホンやヘッドホンをして実験していると周囲の音から隔離されます.実験室内で聞こえる異常音(遠心機をアンバランス音,オートクレーブのエラー音など)は,大きな事故の前兆でもあります.そういった音が聞こえたら,すぐに行動できるようにしておきましょう.

 

*14全ての実験が終わって片付けをした後ならば,掃除でホコリが舞っても実験系に影響はありません.でも始業前に掃除を行うとホコリが舞った状態で実験をすることになり,コンタミネーションの可能性が上がってしまいます.

 

*15白衣や手袋をしていたとしても,無意識の内に手指は汚染されていると考えます.

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本記事では,実験室のルールについてまとめました.

人に言われたから仕方なくやっていた事にも意味があると分かっていただけたでしょうか?

行為自体は多岐に渡りますが,目的は実験者の安全確保実験環境の維持であることが多いですね.

すでに「暗黙の了解」になっている他のルールが,皆さんの実験室にはあるかもしれません.

「その行為にはどんな意味があるの?」と考えながら行動するのも楽しいと思いますよ~

最後までお付き合いいただきありがとうございました.

次回もよろしくお願いいたします.

2019年12月1日 フール