ウェスタンブロットのゲルを置く位置【ウェット式とセミドライ式】
ウェット式だとゲルの上にメンブレンを置くけど,セミドライだとメンブレンの上にゲルを置くんですね.どうして?
本記事は,このような「なぜ?どうして?」にお答えします.
こんにちは.
博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事しているフールです.
皆さんは,ウェスタンブロットで転写するとき,ウェット派とセミドライ派どちらでしょうか?
最初に教わった方法だけを習得している人も多いので,研究室にはウェット派の人とセミドライ派の人がそれぞれいるかもしれませんね.
中には, 2 つの転写方法を使い分けている玄人の方もいると思います.
そして,ウェット式とセミドライ式の両方を知ったばかりの多くは同じこと言います(笑).
ウェット式ではゲルの上にメンブレンを置くけど,セミドライ式ではゲルの下にメンブレンを置くんですね.
皆さんはこの理由が分かりますか?
この記事では,ウェスタンブロットのゲルを置く位置についてまとめました.
本記事を読み終えると,ゲルを置く位置で迷うことはなくなりますよ!
サマリー・ウェット式とセミドライ式でゲルの置く位置が異なる理由は,転写の向きが違うからです.
ウェスタンブロットのブロッティング装置の種類
ウェスタンブロットの電気泳動装置には,3種類があります.
- ウェット式(タンク式)
- セミウェット式
- セミドライ式
1 番目または 3 番目の方法でブロッティングを行っている人が多いという印象です.
皆さんの研究室では,どの方法を使っていますか?
3 番目のセミドライ式は,使用するバッファー量が少なくて経済的です.
加えて,短時間でブロッティングが完了するので,好む人が多いかもしれませんね.
ウェット式とセミドライ式のゲルの位置の違い
それでは,ウェット式とセミドライ式のゲルの位置の違いを見ていきましょう!
ウェット式
ゲルとメンブレンのサンドイッチの作り方にもよるのですが,転写カセットの枠がある方を下にする場合が多いと思います.
ゲルとメンブレンのサンドイッチを図のように作った場合,メンブレンはゲルの上にありますね!
セミドライ式
装置によって構造は多少変わりますが,転写装置の下側にゲルとメンブレンのサンドイッチを載せる場合が多いと思います.
濾紙の厚さによって濾紙の枚数は変わりますが,ゲルとメンブレンのサンドイッチを図のように作った場合,メンブレンはゲルの下にありますね!
この違いは何に起因するのでしょうか?
転写の方向が逆向き
ウェット式とセミドライ式では,ゲルの置く位置が異なりましたね!
その理由は,転写の向きが違うからです.
ウェット式のカセットは,下側にする枠がある方が陰極です*.
一方,セミドライ式の下側は陽極です*.
電気泳動は陰極から陽極に向かうので,転写の向きが変わります.
そして,メンブレンはゲルよりも陽極側に置く必要があります.
だから,ウェット式とセミドライ式ではゲルの置く位置が異なります.
*メーカーによって転写装置の陰極・陽極の配置が異なる場合があります.必ず機器説明書で確認してください.
ゲルの置き方に違いがある
ウェット式とセミドライ式でゲルの置く位置が異なる理由は説明した通りです.
最後に,ゲルの置き方に関する注意点をお伝えします.
例えば,SDS-PAGE で次のようなゲルを得たとします.
セミドライ式ではメンブレンはゲルの下に置くので,ゲルをこの向きのまま転写装置に載せても問題ありません.
転写後のメンブレンは次のようになります.
一方で,ウェット式では転写方向が変わって,メンブレンはゲルの上に置きます.
ゲルを先ほどの向きのまま転写装置に載せると転写後のメンブレンは次のようになってしまいます.
これで問題無い場合は大丈夫です.
でも,
SDS-PAGE をした時の配置と逆向きになって困る
って人もいますよね!
だから,ゲルを置く時に裏返しにすることを忘れないようにしてください!
両方のブロッティング装置を使うようになると,時々混乱します(笑).
向きが逆だからやり直して
と先生や先輩に言われないよう注意してくださいね!
最後までお付き合いいただきありがとうございました.
次回もよろしくお願いいたします.
2021年7月3日 フール