検量線を作成する理由と検量線の評価の仕方

いろいろな検量線
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検量線を引く意味とその評価の仕方

こんにちは.

博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事しているフールです.

久しぶりにサイト訪問者の方から,リクエストを頂きました.

いつも楽しく勉強させて頂いております.
一点,リクエスト(質問?)をさせて頂きたいです.

私は大学で実験を始めたばかりの新米研究員ですが,RT-PCRやassay系の実験で,いまいち検量線を引く意味が分かっていません.
検量線は「希釈系列に沿って直線状に値が薄まるよね?」ってことを示せれば,それでよいのでしょうか?

先生の『qPCRの結果の見方【実験データの見方】』の項も拝読させて頂きましたが,なぜ検量線を作るのかご教授頂けますと嬉しいです.

よろしくお願い致します.

いつもご利用頂きありがとうございます!

また,しがない派遣社員の私を「先生」と呼んでくれるなんて…

恐縮でございます!

そんな日が来るとは思ってませんでした(笑).

 

ご質問者は,検量線についてお悩みのようですね.

私は,ご質問の内容を,以下の2点であると解釈しました!

① 検量線を引く意味
② 検量線の評価の仕方

何かを定量したいとき,検量線の存在は不可欠ですよね!

でも,

 

この検量線で本当にイイのかな?

 

という疑問(モヤモヤ)を抱く方も多いのではないでしょうか?

このような疑問にお答えする(であろう)記事をかきました!

本記事は,検量線を引く意味とその評価の仕方ついてまとめています

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サマリー・間接測定では,検量線を作成しなければなりません.

・検量線の評価は,決定係数と傾きで行います.

検量線を引く意味

定量法とは,サンプル中に含まれる物質Aの量を明らかにする目的で行う分析法のことです.

サンプル中の物質Aの有無を考えるのは定性法で,「有る or 無し」の2択です.

物質Aの有無だけでなく,「サンプル中の物質Aの量はどのくらいなのか?」を明らかにする方法が定量法です.

そして,物質Aの量を定量する方法は,2種類あります.

① 直接定量
② 間接定量

直接定量

目的物質の量を直接測定する方法です.

例えば,重さ・体積・長さ・音量・温度などですね.

これらの値は,測定値=目的物質の量なので,そのまま使うことができます!

 

物質Aの重さは,100 g でした!

 

このように言えば,その意味は分かりますよね!

間接定量

目的物質の量を直接測定できない場合に使用する方法です.

実際に測定するのは,発光量・蛍光強度・導電率・吸光度・放射線量などです.

これらの値は,測定値 ≠ 目的物質の量なので,そのまま使うことができません!

 

サンプルAの吸光度は1.2でした.

 

と言われても,

 

でっ?実際,物質Aはどのくらい含まれているの?

 

って聞き返しますよね(笑).

qPCRの場合なら,Ct値だけ知ってもあまり意味がありません(ΔCt法やΔΔCt法を除く)*

そのCt値が示すコピー数は,いったいどのくらいなのか?

これが知りたいわけです.

そこで先ず測定値を使って,目的物質の量を算出するための方程式を作成します.

そして,その方程式を使って,測定値を目的物質の量に換算する作業が必要になります.

*ΔCt法やΔΔCt法でも,プライマーが機能していることを確認するために簡単な検量線を引くことがあります.ただ,この目的は「定量」ではなく「検定」ですね!

検量線を引く理由

「先ず測定値を使って,目的物質の量を算出するための方程式を作成します.」

と書きました.

この「方程式を作成する」作業が「検量線の引く」という作業になります!

サンプルを測定する際に,濃度が既知の物質Aも同時に測定します*

「濃度が既知」なので,「物質Aが100 mgのとき,吸光度は1.2だった.」という具合に,測定値と物質Aの量との間に関連を見出すことができますね!

1点だけでは何も分からないので,濃度既知の物質Aを複数用意します.

例えば,100 mg, 10 mg, 1 mg の3点(最低3つ)用意すれば,各濃度における各吸光度も得られます.

すると,測定値と物質Aの量の関連を示すグラフ(=検量線)を作成することができます.

このグラフを使えば,「吸光度が〇〇だから,物質Aの量は××だね」って言えますよね!

これが検量線を引く理由になります!

測定値を目的物質の量に換算するために「検量線を引き」ます

*「同時に」がポイントです!濃度既知のスタンダードと濃度未知のサンプルという違いを除き,全て同じ条件で測定することが重要だからです.

半定量法(Semi-quantitative analysis)

濃度が既知の物質を使わずに,およその量を測定する方法を半定量法といいます.

内在性コントロールを使って,相対値を算出する方法は半定量法ですね.

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検量線の評価の仕方

検量線の評価の仕方は,以下の2点で行います.

① 決定係数
② 検量線の傾き

決定係数

決定係数(R2値)は,得られた検量線(正確には,回帰式)の信用度を示す値です.

決定係数が高いほど,検量線による数値の予測は信頼できるということになります.

検量線の決定係数

検量線の決定係数

検量線の決定係数

測定系にもよりますが,私は,決定係数が0.990以上でない場合はその検量線を採用しません!

それでは,図の2番目・3番目の場合はどうすれば良いでしょうか?

私は対処法は,以下の通りです.

① やり直す
② レンジを変える

①は,シンプルですね!

検量線の質が悪いのは,手技ミス・スタンダードサンプルの調整ミスが原因です.

だから,可能ならば「やり直す」ことが理想でしょう!

ただ,測定系がキットの場合,時間だけでなく費用もかかります.

潤沢な予算があるラボを除き,毎回「やり直す」という選択をすることは難しいと思います.

そこで,私は,②を検討します.

これは,検量線の対象レンジを変えるという手法です.

検量線の範囲を変える

2番目の検量線の範囲を狭くしたことで,決定係数が改善されました.

もちろん,サンプルの測定値がこの範囲を外れる(OD値が1.5未満または3.5以上となる)場合は「やり直す」ことになります…

検量線のフィッティング問題

時々,検量線の次数を上げた強引なフィッティングを見かけます.

2次式

検量線の強引なフィッティング

3次式

検量線の強引なフィッティング

4次式

検量線の強引なフィッティング

5次式

検量線の強引なフィッティング

1次式より2次式の方が,2次式より3次式の方がフィッティングが良いのは当たり前なので,このように改良したい気持ちはよく分かります!

シンデレラフィットではありませんが(笑),キレイにフィッティングできると気持ちいいですよね!

しかし,最もらしい理論的な背景が無い状態で,このようなフィッティングを行うことは許容できません!

「決定係数が高いから」という理由で,検量線のフィッティングを行うのは止めましょう!

検量線の傾き

検量線の傾きは,あまり注目されませんが,重要な指標だと思います.

qPCRでは,1サイクルでコピー数が2倍になるという前提があるので,この傾きから増幅効率を求めることも可能になります.

当然,増幅効率が100%に近い方が良いプライマーセットということになります.

また,同じアッセイを複数回行う場合,その検量線の傾きが同じであれば,手技やサンプル調整の問題が小さいと解釈できます.

結果として,独立した試験を3回実施した場合でもバラつきは小さくなりますね!

用量依存性の確認

最後に,質問者の「検量線は『希釈系列に沿って直線状に値が薄まるよね?』ってことを示せれば,それでよいのでしょうか?」を考えてみましょう!

大筋は,それでOKです!

「希釈系列に沿って直線状に値が薄まる」という言い方は,語弊がありますが(笑).

「語弊」とは,例えば,競合法による測定の場合,「希釈系列に従って値が高く」なります.

要は,物質の量と測定値の間の関係は,正の相関なのか?,それとも負の相関なのか?ということですね!

どちらの関係でも構いませんが,物質の量と測定値の間に「用量依存性」が確認できることが大切です.

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いかがでしたでしょうか?

私の対応できる内容であれば,これからもリクエストに答えようと思います!

リクエストはコチラからどうぞ!

題名にリクエストと入力いただければ幸いです!

最後までお付き合いいただきありがとうございました.

次回もよろしくお願いいたします.

2020年5月24日 フール