緩衝液に添加する変性剤の役割【DNAも変性させる変性剤】(2)
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「ホルムアミドを加えて,加熱して,急冷する.」…何でこんなことするの?
本記事は,このような「なぜ?どうして?」にお答えします.
こんにちは!
博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事しているフールです.
前回に引き続き,緩衝液に加える「変性剤」をまとめています.
本記事で紹介する変性剤は,タンパク質だけでなく,DNAも変性させることもできます.
サマリー・尿素やホルムアミドは,DNAやタンパク質を変性させます.
尿素の役割
水素結合を切断することで,二本鎖DNAやタンパク質を変性させます.
DNAシークエンス(サンガー法)では,一本鎖DNAの状態を維持するために使用することがあります.
また,ELISA系の洗浄で使用するバッファーに,尿素を添加した洗浄液を用いることがあります.
タンパク変性剤による洗浄処理は,抗原への結合力が弱い抗体(低アビディティーな抗体)を反応系から取り除くことを可能にします.
これにより,サンプル中に含まれる抗体の親和性を測定することができます.
ホルムアミドの役割
水素結合を切断することで,二本鎖DNAを変性させます.
DNAシークエンス(サンガー法)では,一本鎖DNAの状態を維持するために使用することが多いです.
変性剤を加えた後,さらに95 ℃で加熱することにより,長鎖の二本鎖DNA(および複雑な高次構造で安定化したDNAやRNA)も効果的に変性させます.
ゆっくり冷ますと,相補的な1本鎖どうしが再び結合してしまいます.
一本鎖DNAの状態を維持するためには,氷上で急冷することも忘れずに.
もっと勉強したい方へ
・HEDMAN, Klaus, et al. Maturation of immunoglobulin G avidity after rubella vaccination studied by an enzyme linked immunosorbent assay (avidity‐ELISA) and by haemolysis typing. Journal of medical virology, 1989, 27.4: 293-298.
・AGUADO-MARTINEZ, A., et al. Use of avidity enzyme-linked immunosorbent assay and avidity Western blot to discriminate between acute and chronic Neospora caninum infection in cattle. Journal of veterinary diagnostic investigation, 2005, 17.5: 442-450.
以上,緩衝液に加える「変性剤」のまとめでした.
最後までお付き合いいただきありがとうございました.
次回もよろしくお願いいたします.
2020年1月6日 フール