感度と特異度の考え方は分かったけど,それが検査結果(陽性 or 陰性)の受け止め方にどう影響するのか分かりません.
本記事は,このような「なぜ?どうして?」にお答えします.
本記事の内容・感度が高い検査法とは「偽陰性が少ない検査」という意味です.
・特異度が高い検査とは「偽陽性が少ない検査」という意味です.
・「感度が高い検査で陰性」または「特異度が高い検査で陽性」は,診断的価値があると判断します.
こんにちは.
元研究者のフールです.
以前,感度と特異度の記事を書いたときに,次のように書きました.
・「疾病ありのヒトまたは動物を正しく陽性と判定する割合」を感度といいます. ・「疾病なしのヒトまたは動物を正しく陰性と判定する割合」を特異度といいます.
しばらくして読者から,次のように言われました.
感度と特異度の考え方は分かりました.
でも,それが検査結果の受け止め方にどう影響するのか分かりません.
貴重な感想ありがとうございます.
そこで今回は,実際の現場をイメージできるような記事を書きました.
サマリー・感度が高い(偽陰性が少ない)検査で陰性となれば,その診断的価値は高いです.
・特異度が高い(偽陽性が少ない)検査で陽性となれば,その診断的価値は高いです.
感度と特異度
感度と特異度の定義や考え方については,以下の記事をご覧ください.
本記事では,感度と特異度の定義や考え方を知っているという前提で進めていきます.
感度が高い=偽陰性が少ない
ある疾患を判定する検査を考えます.
検査Aは,感度が30%程度と言われています.
検査Bは,感度が約70%と報告されています.
感度は真に罹患している個体を正しく陽性と判定する割合のことですから,検査Aでは偽陰性が多くでることになります.
では,検査Aで「陰性」と結果が出たら,どう受け止めますか?
偽陰性かもしれないと思います.
ですよね~
つまり,感度が低い検査で「陰性」となっても,その診断的価値は低いのです.
なるほど!
「陽性」ではなく,「陰性」の方に注目するんですね!
特異度が高い=偽陽性が少ない
ある疾患を判定する検査を考えます.
検査Aは,特異度が90%以上と報告されています.
検査Bは,特異度が50%程度と評価されています.
特異度は,真に罹患していない個体を正しく陰性と判定する割合のことですから,検査Bでは偽陽性が多くでてしまいます.
では,検査Bで「陽性」と結果が出たら,どう感じますか?
偽陽性かもって思います.
そうですね!
つまり,特異度が低い検査で「陽性」となっても,その診断的価値は低いのです.
今度は,「陰性」ではなく「陽性」の方に注目するんですね!
定性試験の限界
定性試験は「陽性」「陰性」の2択なので受け入れやすいですが,検査対象が一定レベル以上に達していないと「陰性」となってしまいます.
だから,検査結果のみで全てを判断することが難しく,既往歴・臨床症状・他の検査結果と合わせて総合的に判断することが多いです.
定量検査に切り替えたり,時間を空けて再度検査したりすることもあります.
新型コロナウイルス感染症の検査で抗体価を測定したり,同じ検査を異なるタイミングで複数回受ける理由はココにあります.
最初から定量検査は難しい?
だったら,最初から感度・特異度が高い検査や定量検査を実施したらよくない?
理屈はその通りですね!でも,実際は難しいです.
なんで?
理由は色々ありますが,費用・時間・労働力が大きな要因だと思います.
感度・特異度が高い検査や定量検査は,既存の検査よりも費用が高くなります.
検査法の開発に費やしたコストを回収する必要があるからですね!
また,定量検査は定性検査よりも検査時間が長くなる傾向にあります.
検査時間が長くなると,その検査に従事する人材が固定されてしまい,施設全体のマンパワーが低下します.
マンパワーを上げるために新たに人材を雇用したら,その分の人件費は検査費用に上乗せされるので,検査費用も上がるでしょう.
負の連鎖がすごいですね…
ですね!
ただ,「仕方なく」という消極的な理由で定性検査を実施しているわけではありませんよ!
検査の目的は?
検査の目的が「診断」ではなく,「スクリーニング」の場合は感度・特異度がそこまで高くある必要もありません.
スクリーニングとは,無症状の集団を対象に検査を行って不顕性の患者(患畜)や発症予備軍とされる者を絞り込むことです.
これにより追加検査の必要性の有無が分かり,早期診断・治療を提供することができます.
この追加検査で感度・特異度が高い検査や定量検査を実施すれば,費用・時間・労働力も最小限に抑えることができますね!
最後までお付き合いいただきありがとうございました.
次回もよろしくお願いいたします.
2022年7月24日 フール