感度と特異度の話【検査結果の受け止め方】

感度と特異度
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感度と特異度の話【検査結果の受け止め方】

 

「『陽性』なのに『陰性』と出てしまう」ってどういうこと?

本記事は,このような「なぜ?どうして?」にお答えします.

 

こんにちは.

博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事しているフールです.

医師会の記者会見(2020年4月22日)で次のような発言がありました.

『(実際には感染しているのに,陰性と出ることがしばしばある.(中略)陽性なのに陰性と出てしまうことに対して,大きな混乱に繋がるというのが,日本医師会としての強い懸念だ』

PCR検査に限らず,全ての検査ではエラーが存在します.

そのため,検査結果が陰性でも実際は陽性となる例検査結果が陽性でも実際は陰性となる例があります.

そして,検査結果を診る人たちは,このエラーがあることを前提に物事を判断し,次の行動を考えます.

それでは,その検査の再現性正確性はどのように評価されるのでしょうか?

実は,検査の妥当性を示す指標が存在します.

それは感度特異度というものです.

 

この記事では,疾病検査の感度と特異度についてまとめました.

本記事を読み終えると,「『陽性』なのに『陰性』と出てしまう」理由が分かるようになりますよ.

 

サマリー・「疾病ありのヒトまたは動物を正しく陽性と判定する割合」を感度といいます.

・「疾病なしのヒトまたは動物を正しく陰性と判定する割合」を特異度といいます.

・感度100%・特異度100%という検査方法は,ほとんど存在しません.

感度(Sensitivity)

感度と偽陰性

感度(Sensitivity)とは,真に罹患している(疾病あり)個体を正しく陽性と判定する割合のことです.

例えば,ある疾病に罹患している300人の集団を考えます.

この集団に対して検査Aを実施したところ,240名は陽性と判定され,残りの60名は陰性と判定されました.

この場合の感度は,240/300 = 0.8(80%)となります.

偽陰性(見逃し)

検査Aでは,60名が検査結果は陰性でも実際は陽性ということになります.

このような検査の見逃し偽陰性といいます.

「ある疾病」を「新型コロナウイルス感染症」に,「検査A」を「PCR検査」に置き換えてみましょう.

PCR検査が陰性でも実際は感染している人がいるということです.

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特異度(Specificity)

特異度と偽陽性

特異度(Specificity)とは,真に罹患していない(疾病なし)個体を正しく陰性と判定する割合のことです.

例えば,ある疾病に罹患していない400人の集団を考えます.

この集団に対して検査Bを実施したところ,280名は陰性と判定され,残りの120名は陽性と判定されました.

この場合の特異度は,280/400 = 0.7(70%)となります.

偽陽性(濡れ衣)

検査Bでは,120名が検査結果は陽性でも実際は陰性ということになります.

このような検査の濡れ衣偽陽性といいます.

4月22日に発表された誤判定は,偽陽性の例です.

横浜市衛生研究所における新型コロナウイルス検査結果の誤判定について

感度と特異度の関係

感度と特異度の関係

疾病あり集団と疾病なし集団が,検査でキッチリと区別できることが理想です.

残念ながら,感度100%・特異度100%の検査は,ほとんど存在しません

 

検査の感度を上げれば偽陰性は減るじゃん♪

検査の特異度を上げれば偽陽性は減るでしょ!

このように思われる方もいるでしょう.

理論上は,感度や特異度を上げることは可能です.

そして,検査の感度を上げれば偽陰性は減り,検査の特異度を上げれば偽陽性は減ります.

しかし,感度を上げれば偽陽性も増え,特異度をあげれば偽陰性も増えるのです.

感度と特異度は,トレードオフの関係にあるのです.

エラーの原因

最後に,検査エラーの原因を簡単にまとめます.

① 患者(患畜)の問題
② 検査サンプルの問題
③ 検査の精度の問題
④ 人の問題

① 患者(患畜)の問題

罹患しているヒト(動物)が,検査で検出可能な疾病のステージに達していない場合,偽陰性の原因になります.

新型コロナウイルス感染症であれば,コロナウイルスが体内で増えていなければなりません.

そして,それは症状が出たとき(または症状がでる直前)であることが多いです.

だから,「PCR検査を受けるべき人」の条件が設定されるのです.

② 検査サンプルの問題

サンプル中に検査反応の邪魔をする物質が混入したり,逆に検査反応を過剰に増幅する物質が混入すると偽陰性および偽陽性の原因になります.

混入する物質は,患者(患畜)由来のこともあれば,検査者(検査環境)由来のこともあります.

③ 検査の精度の問題

検査で使用する試薬やキットの質が均一で無い場合,偽陰性および偽陽性の原因になります.

また,施設や検査者ごとに使用する試薬や機器が異なる場合も結果に影響することがあります.

④ 人の問題

検査時の操作ミス,検体の取り違いや誤った解釈による判定ミスなどがあります.

もっと勉強したい方へ

以下の書籍がオススメです.

 

以上,検査の妥当性の指標【感度と特異度】でした.

最後までお付き合いいただきありがとうございました.

次回もよろしくお願いいたします.

2020年4月23日 フール