メスシリンダーの洗い方【ブラシは使っちゃダメ!】
メスシリンダーを洗うときに,ブラシを使ったら怒られた…
なんで?
本記事は,このような「なぜ?どうして?」にお答えします.
こんにちは.
博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事しているフールです.
先ずは,以下のやりとりをご覧ください!
試薬の準備は,これで完了です.
次のステップに進む前に,実験台を片付けましょうか.
試薬の使用量を記録してくるので,器具の洗浄をしておいてください.
はーい!
(5分後)
洗浄は終わりまし...えっーー!?
うわっ!
どうしましたか?
どうしてメスシリンダーをブラシで洗ってるの?
だって,先生が洗っておいてって...
私が問題としているのは「洗い方」です.
ブラシを使ったらダメなんですね.
ガラス器具の洗浄方法は,器具の種類によって様々です.
ただ,器具によっては,ブラシで擦ってはいけない物もあります.
なぜなら,ブラシでゴシゴシ擦ると,微細な傷がついてしまうからです.
本記事では,その代表例である「メス〇〇」系の器具の洗い方についてまとめました.
サマリー・容量を測る器具を洗浄するときは,ブラシを使ってはいけません.
メスシリンダーの洗い方【ブラシは使っちゃダメ!】
メスシリンダーやメスフラスコなどの「メス〇〇」系の器具は,容量を正確に測る器具です.
ビーカーやメディウム瓶と異なり,容量を測る「メス〇〇」系の器具を洗浄するときはブラシを使ってはいけません.
それでは,何故,ブラシを使ってはダメなのでしょうか?
「メス〇〇」系の器具【細かい傷は命とり】
ブラシを用いてゴシゴシ擦ると,目には見えない微細な傷がつきます.
傷は,その部分に新たな空間を作ります.
そこに液体が入り込むので,容積が変わってしまいます.
メスシリンダーは,「ビーカーなどで試薬を溶解した後*,濃度を正確に調整するためにメスアップする」という使い方をします.
ブラシによる洗浄で容積が変わった器具を使用したら,どうなるでしょうか?
傷の分だけ溶媒の量は増えていますので,その試薬の濃度は意図した濃度に調整されていません.
その試薬が,定量分析に使用する標準溶液だったらどうなるでしょうか?
測定で得られた数値は,標準溶液の値を基に計算されています.
標準溶液の濃度がズレていたら,測定で得られた数値もズレていますよね!
大問題ですね!
だから,「メス〇〇」系の器具の洗浄では,ブラシを使ってはいけません.
*試薬を溶解するときに,スターラーバーを使うことがありますね.スターラーバーによる撹拌も器具内部の傷をつける要因です.メス〇〇系の器具は,試薬の溶解で使用するべきではありません.
「メス〇〇」系の器具の正しい洗浄方法
繰り返しますが,「メス〇〇」系の器具の洗浄では,ブラシを使ってはいけません.
では,どのように洗うのが正しいのでしょうか?
大きく分けて2つの方法があります.
① 洗剤を入れて,しばらく放置しておく.
② 撹拌して洗浄する.
①洗剤を入れて,しばらく放置
最も簡単な方法は,器具を水道水に浸して洗剤を加え,しばらく放置しておくことです.
調整した試薬にもよりますが,1-2時間くらい放置すればで十分でしょう.
洗い場のスペースに余裕があるのであれば,一晩(夕方から翌朝まで)放置しておいても良いでしょう.
翌日,朝一で器具のすすぎをすることを忘れずに!
メリット
・簡単です.
・小柄な人でも,大きな器具を洗浄できます.
デメリット
・洗い場のスペースが狭くなるため,洗い物が多い実験系では作業の邪魔になりがちです.
・洗浄完了まで時間がかかるので,次にその器具を使いたい人がすぐには使えません.
②撹拌して洗浄
器具のトップ部分にラップまたはパラフィルムを被せ,それを手で押さえながら器具を転倒混和する方法です.
メリット
・洗浄時間を短縮できます.
・洗い場のスペースを確保できます.
デメリット
・大きな器具の場合,小柄な人では難しいです.
・落下等による器具の破損リスクが高まります.
以上,「メス〇〇」系の器具の洗い方でした.
大事なことなので,もう一度だけ言いますね!
メスシリンダーの洗浄は,ブラシは使っちゃダメ!
最後までお付き合いいただきありがとうございました.
次回もよろしくお願いいたします.
2020年1月25日 フール