クリーンベンチ・安全キャビネット・ドラフトチャンバーの違いって何ですか?
本記事は,このような「なぜ?どうして?」にお答えします.
本記事の内容・クリーンベンチの使用目的
・安全キャビネットの使用目的
・ドラフトチャンバーの使用目的
こんにちは.
博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事している元研究者のフールです.
今回は,クリーンベンチ・安全キャビネット・ドラフトチャンバーについてまとめました.
いづれも四方が囲まれた箱型の実験台ですが,それぞれ空気の流れが異なります.
当然,使用目的も異なります.
各々の空気の流れを理解して,きちんと使いわけるようにしましょう!
サマリー・クリーンベンチは,無菌操作を行うための実験台です.
・安全キャビネットは,無菌操作および感染性微生物の取り扱いを行うための実験台です.
・ドラフトチャンバーは,エアロゾルから実験者を守るための実験台です.
クリーンベンチ・安全キャビネット・ドラフトチャンバーの違い
クリーンベンチ・安全キャビネット・ドラフトチャンバーの違いを簡単にまとめると次のようになります.
それでは 1 つずつ見ていきましょう!
クリーンベンチ
無菌操作を行うために使用する実験台です.
HEPAフィルターを通過した清浄な空気が常に供給される構造になっています.
HEPAフィルターに関しては,以下の記事で説明しています.
クリーンベンチの外に向かう気流を作ることで,空気中に浮遊する微生物やホコリなどがクリーンベンチ内に入らないようになっています.
安全キャビネット
こちらも無菌操作を行うために使用する実験台です.
クリーンベンチと同様に,HEPAフィルターを通過した清浄な空気が常に供給される構造になっています.
クリーンベンチとの違いは,空気の流れです.
安全キャビネットの前面には,上から下へエアーカーテンが作られています.
これのお陰で,安全キャビネット内部で扱った微生物や遺伝子組換え体などが外部に漏れでることがありません.
カルタヘナ法*1で規定されている「物理的封じ込め」の 1 つですね!
気流は,安全キャビネット下方へ吸いこまれ,HEPAフィルターで濾過されます.
濾過された空気は,一部は室内に放出され,一部は再度安全キャビネット内部に供給されます.
なお,安全キャビネットにはクラス分類があります.
詳細は,以下の記事をご覧ください.
*1正式には,「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」といいます.
ドラフトチャンバー
試薬の調整や化学反応で生じるエアロゾルから実験者を守るための実験台です.
室内から空気を吸い込み,ダクトを通して屋外へ排気する構造になっています.
機器によっては,エアロゾルを吸着させたりエアロゾルを中和するための装置(スクラバー)が付いているものもあります.
英語での呼称
ドラフトチャンバーは,英語で “Fume hood” と言います.
最近は,日本語でもヒュームフードという人が増えてきました.
エアロゾルとは?
空気中に微粒子が浮遊している状態をエアロゾルといい,その微粒子をエアロゾル粒子といいます.
一般に,エアロゾル粒子は4つに分類されますよ!
- 粉じん(dust)
- 煤じん(smoke dust)
- フューム(fume)
- ミスト(mist)
クリーンベンチを安全キャビネットと間違える人は多い
クリーンベンチと安全キャビネットは,その外観が非常に似ています.
無菌操作を行うという点で使用目的は同じですが,物理的封じ込めに対応しているかどうかで扱える物が異なります.
クリーンベンチ
- 培養細胞
- コンピテントセル
- 無菌状態を維持したいサンプル
安全キャビネット
- 培養細胞
- コンピテントセル
- 遺伝子組み換え体
- 無菌状態を維持したいサンプル
- ヒトや動物に有害な感染性微生物
間違えて使ったらバイオハザード
想像してみてください.
もし,クリーンベンチでヒトや動物に有害な感染性微生物を使用したらどうなるでしょうか?
内部で扱った微生物が,実験者に向かって飛んでくることになります.
怖いですね~
まさに「バイオハザード」です.
クリーンベンチと安全キャビネットは,間違えて使わないように気を付けましょう!
以上,クリーンベンチ・安全キャビネット・ドラフトチャンバーの比較でした!
最後までお付き合いいただきありがとうございました.
次回もよろしくお願いいたします.
2020年2月3日 フール