安全キャビネットのクラスって何ですか?
本記事は,このような「なぜ?どうして?」にお答えします.
本記事の内容・安全キャビネットのクラス I ~ III
・安全キャビネットのクラス II の詳細
・安全キャビネットの排気方式
こんにちは.
博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事している元研究者のフールです.
今回は,安全キャビネットを深堀りしましょう!
安全キャビネットには,クラス分類*1があることをご存知でしょうか?
実は,そのクラスによっては使用方法が変わることがあります.
皆さんの実験室にある安全キャビネットは,どのクラスに該当するのでしょうか?
*1安全キャビネットは,JIS K3800:2009 などに基づいて設計および製造されており,そのハザードリスクに応じて様々なクラスやタイプの分類がなされています.
サマリー・クラス I の安全キャビネットでは,無菌操作はできません.
・クラス II の安全キャビネットは,A1・A2・B1・B2 の 4 種に分類されます.
・クラス III の安全キャビネットでは,一種病原体等も取り扱えます.
安全キャビネットのクラス分類
安全キャビネットは,クラス I ~ III の 3 種類に分けることができます.
- クラス I
- クラス II
- クラス III
クラス II の安全キャビネットは,さらに A1・A2・B1・B2 の 4 種に細分されます.
- クラス I
- クラス II
- A1
- A2
- B1
- B2
- クラス III
それでは 1 つずつ見ていきましょう!
クラスⅠの安全キャビネット
クラスⅠには,HEPAフィルターを通過した無菌空気の供給がありません.
外部から雑菌が混入するため,無菌操作はできません.
生物材料および不揮発性の有害物質を取り扱うことができます.
放射性障害防止法*2に基づく管理区域に設置されたキャビネットでは,放射性同位元素も取り扱うことができます.
*2正式名称は,「放射性同位元素等の規制に関する法律」です.
クラスⅡの安全キャビネット
このクラスが最も多様されているクラスです.
HEPAフィルターを通過した無菌空気の供給があります.
その仕様と構造により,A1・A2・B1・B2の 4 種に分類されます*3.
*3これまでB3と呼ばれていたタイプは,2009年の規格改定でA2タイプになりました.
クラスⅡ A1
生物材料および不揮発性の有害物質を取り扱うことができます.
後述する排気システムで屋外排気型の場合は,少量の揮発性物質も取り扱うことができます.
放射性障害防止法*2に基づく管理区域に設置されたキャビネットでは,放射性同位元素も取り扱うことができます.
クラスⅡ A2 & B1
A2 は濾過された空気の割合(循環気率)が約 70% ですが,B1 のそれは約 50% です.
生物材料および不揮発性の有害物質を取り扱うことができます.
A2 では,後述する排気システムで屋外排気型の場合は,少量の揮発性物質を取り扱うことができます.
B1 は,屋外排気型が基本なので相当量の揮発性物質を取り扱うことができます.
放射性障害防止法*2に基づく管理区域に設置されたキャビネットでは,放射性同位元素も取り扱うことができます.
クラスⅡ B2
HEPAフィルターで濾過し全量排気するオールフレッシュ式です.
生物材料および揮発性物質を取り扱うことができます.
放射性障害防止法*2に基づく管理区域に設置されたキャビネットでは,放射性同位元素も取り扱うことができます.
クラスⅢの安全キャビネット
グローブボックス型とも言います.
こちらもHEPAフィルターで濾過し全量排気するオールフレッシュ式です.
実験者および外部環境とキャビネットの内部環境が完全に隔離されています.
感染症法*4に基づく一種病原体等の生物材料も取り扱うことができます.
*4正式名称は,「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」です.
安全キャビネットの排気方式
安全キャビネットの排気方式には 3 種類あります.
① 室内排気 ② 開放接続型 ③ 密閉式陰圧ダクト
室内排気型
安全キャビネットの上部より直接排気されるパターンです.
3種類ある排気方式の中で,最も安定しています.
この排気方式の安全キャビネットでは,揮発性物質を取り扱うべきではありません.
開放接続型(キャノピーフード型)
クラスⅡの A1 および A2 に適用されることがある排気方式です.
フード周囲の開放部分から排気量の 30~50% に相当する空気を新たに取込むことができます.
強風など屋外で乱流が起こっている時は,排気システムが安定しにくいです.
密閉式陰圧ダクト
クラスⅡの B1 および B2 に適用されることがある排気方式です.
排気ファンまでダクトで密閉されています.
そのため,室圧変動や強風など屋外の天候の影響を受け易いです.
24時間の継続運転が推奨されています*5.
*5クラスⅡとⅢの安全キャビネットは,内部を無菌操作が可能な空間として維持するために,24時間連続稼動することが望ましいとされています.でも実際は,施設の事情(省エネ対策など)により稼働が中断されることが多いですね.
以上,安全キャビネットの使い分けでした.
最後までお付き合いいただきありがとうございました.
次回もよろしくお願いいたします.
2020年2月4日 フール