オープンアクセスとハゲタカジャーナル【粗悪学術誌にはご注意】

ハゲタカジャーナルの特徴
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オープンアクセスとハゲタカジャーナル【粗悪学術誌には気を付けよう】

 

ハゲタカジャーナルって何ですか?オープンアクセスと何の関連があるんですか?

本記事は,このような「なぜ?どうして?」にお答えします.

 

こんにちは.

博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事しているフールです.

皆さんは,ハゲタカジャーナルってご存知でしょうか?

“Predatory journal” の日本語版で,粗悪学術誌とも呼ばれています.

十分な査読を行わずに論文を掲載し,高額な掲載料を要求する悪質な学術誌を指す用語です.

2018年度初めの毎日新聞の記事で話題になってから,各大学や日本学術会議が対応策の検討を始めています.

論文の内容よりも学術誌に掲載された論文の数の方が優先して評価されてしまう現代では,掲載論文数の増加を図るために投稿先の雑誌の選び方も雑になるようですね(笑).

ハゲタカジャーナルへの投稿を安易に行うと,何が起こるのでしょうか?

この記事では,ハゲタカジャーナルの問題点とオープンアクセスとの関連についてまとめました.

本記事を読み終えると,投稿先を慎重に選ぶようになりますよ!

 

サマリー・ハゲタカジャーナルは,著者が支払う掲載料を目的とする学術誌です.

・学術成果を無償で利用できるオープンアクセスと関連があります.

・ハゲタカジャーナルへの投稿を安易に行うと,二重投稿になるかもしれません.

ハゲタカジャーナルとは?

ハゲタカジャーナル(粗悪学術誌)は,著者が支払う論文投稿料(Article processing charge [APC])を目的に活動する悪質な学術誌です.

ハゲタカジャーナルはオープンアクセスと関連がある

ポイントは「著者が支払う論文投稿料(APC)」です.

研究成果をインターネット上に公開し,皆が無償で利用できるようにすることをオープンアクセスと言います.

学術誌の多くは,掲載された論文を読者に売るというビジネスをしています.

購読料を取る雑誌

しかし,それはお金がある人しか研究成果を共有できないという問題につながります.

だから,近年は論文を掲載する時に著者から掲載料(APC)を取るというビジネスを展開する学術誌が増えています.

オープンアクセスの雑誌

そして,ハゲタカジャーナルは,このオープンアクセスビジネスに着目しました.

十分な査読を行わずに論文を掲載し,高額な掲載料を要求するのです.

ハゲタカジャーナル

現代は,論文の内容よりも学術誌に掲載された論文の数の方が優先して評価されてしまう世知辛い世の中です.

研究者(特に次のポストを探している若手)は,掲載論文数の増加を図るために,投稿から掲載までが容易に進む(進んでしまう)ハゲタカジャーナルを選ぶこともあるようです.

意図的か非意図的か分かりませんが…

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ハゲタカジャーナルへの投稿の問題点

それでは,ハゲタカジャーナルへの投稿および掲載は何が問題なのでしょうか?

これからその問題点をまとめます.

問題点は,以下の4種類です.

  • 経済的な側面
  • 科学的な側面
  • 社会的な側面
  • 倫理的な側面

1つずつ見ていきましょう!

経済的な側面

これは,APCの支払いにおけるトラブルです.

最初に提示されたAPCよりも高額な請求があったという報告もあります.

科学的な側面

科学的な側面の問題点は2つあります.

ずさんな査読システム

1つ目は,ずさんな査読システムです.

ハゲタカジャーナルの査読システムは,ずさんであると言われています.

私が知っている最もヒドイ例は,以下の通りです.

ある研究者が,“Get me off Your Fucking Mailing List”と題し,本文にも同じ内容が繰り返されているだけのテキストを論文として提出しました.

その論文が受理されました(詳細はコチラ).

嘘みたいな話ですよね(笑).

でも,ボットツールなどを使って自動送信・返信システムを使っていると考えれば,あり得ますよね(笑).

一応,オープンアクセスですから,こういったずさんな査読を通過したテキストがGoogle検索などで流通する可能性があります.

学術文献データベースに非収録

2つ目は,学術文献データベースに非収録という点です.

一生懸命に実験して寝る間も惜しんで書いた論文が,学術文献データベースに収録されないのは問題ですよね!

だって,業績評価の対象外になりますから.

そして,この問題は根深いですよ!

投稿・掲載後にハゲタカジャーナルと知って出版社に撤回を要請しても応じてくれない場合があります

撤回される前に(ちゃんとした)別の雑誌に投稿した場合は,二重投稿となるので注意が必要です.

社会的な側面

研究者自身の業績評価を下げるだけなら,不注意とか自業自得で済むかもしれません.

しかし,現実は違います.

その研究者が所属する研究機関に対する信頼にも悪影響を及ぼす恐れがあるんです!

良い行いをすると個人が称えられ,悪い行いをすると組織全体が罰せられることが常ですからね.

仕方ありません(笑).

倫理的な側面

支払った(騙し取れた)APCは,公的助成金株主から集めたお金という側面がありますね.

自費の場合は,高い授業料を払ったと後悔するだけですが(笑).

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ハゲタカジャーナルを避ける方法

それでは,ハゲタカジャーナルを避ける方法はあるのでしょうか?

実はあります!

以下にハゲタカジャーナルを避ける方法についてまとめました.

  • Think Check Submitの利用
  • 当該雑誌の出版社の詳細を確認
  • 当該雑誌が信頼性の高いデータベースに収録されているかを確認

Think Check Submitの利用

Think Check Submitは,信頼できる学術誌への投稿を支援するキャンペーンサイトです.

リストにしたがって投稿先の雑誌の信頼性をチェックすることができます.

日本語版もありますよ!

出版社の詳細を確認

当該雑誌の出版社が,以下の団体に登録されているか確認しましょう!

  • Committee on publication ethics (COPE)
  • Open access scholary publisher’s association (OASPA)

信頼性の高いデータベースに収録されているかを確認

オープンアクセス学術誌要覧である “Directory of open access journals (DOAJ)” に当該雑誌が収録されているかどうかを確認しましょう!

その他

ハゲタカジャーナルの疑いがある雑誌およびその出版社をまとめたリストも存在します.

また,ハゲタカジャーナルの特徴をまとめた論文も公開されています.

たくさん書いてしまいました(笑).

要は,「論文を学術誌へ投稿するに時は,ハゲタカジャーナルへの投稿問題を十分に理解した上で,投稿先をちゃんと検討しましょう.」ってことですね!

ハゲタカジャーナルから仕掛けてくる

本記事をココまで読まれた方は,次のように考えるかもしれません.

 

投稿先をちゃんと吟味すれば大丈夫だね!

 

実は,もう一つ問題があります.

それは,ハゲタカジャーナル側から仕掛けてくることがあるということです.

論文の投稿や国際会議での基調講演を研究者に依頼するメールを送りつけてきます.

  • 英語で論文を発表したい!
  • 国際学会での業績をつくりたい!

こういった心理に付け込んで,言葉巧みに研究者をハゲタカジャーナルへと誘うんです.

実は,先日,私のところにも依頼メールが届きました!

ハゲタカジャーナルからのメール

私は,たかが数本の論文を出しただけの元研究者です.

そんな人間に依頼するのはおかしいと思い,先に挙げた方法で,”American Journal of Biomedical Science & Research” を調べてみました.

やっぱり,COPE や DOAJ では,”American Journal of Biomedical Science & Research” を見つけることができませんでした(笑).

恐いですね~

皆さんも,こういった営業メールには注意してくださいね!

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以上,オープンアクセスとハゲタカジャーナル【まとめ】でした.

最後までお付き合いいただきありがとうございました.

次回もよろしくお願いいたします.

2020年11月21日 フール

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