実験室の P2P は Peer to Peer じゃない

実験室の P2P は Peer to Peer じゃない
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実験室の入り口に “P2P” って書いてありました.どういう意味ですか?

本記事は,このような疑問にお答えします.

この記事を書いた人
フール

元研究者で獣医師/博士(Ph.D.)/派遣社員の研究員や臨床獣医師を経験/研究職への復帰を考えているバイオブランク/学歴が「身分の指標」ではなく「職務能力・専門能力の指標」として機能することを願う者/DeSci(分散型科学)の勉強中

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本記事の内容・実験室で “P2P” と言えば、拡散防止措置の基準を意味します.

フールの登場

こんにちは.

博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事している元研究者のフールです.

皆さんは “P2P” と聞いて何を思い浮かべますか?

私は拡散防止措置を考えるのですが,そうではない人もいるようです.

職場の後輩とのやりとりをご覧ください.

実験室で “Peer to Peer” ってどういう意味ですか?

ん?”Peer to Peer” って何?

個人個人が対等な権利をもったサーバーシステムですよ!

ビットコインなどの仮想通貨で使われているシステムです!

ちょっと何を言ってるのか分からないから勉強するわ(笑).

でもね,実験室の “P2P” は “Peer to Peer” じゃないことは確実だね!

えっ!じゃぁ, “P2P” ってどういう意味ですか?

どうやら,ネットワーク関係の用語でも “P2P” という略語があるようです.

私にはさっぱり分かりませんでした.

仮想通貨も興味はあるので,これを機に勉強してみようかなと感じました.

とりあえず,実験室の “P2P” は “Peer to Peer” ではありません!

この記事では,”P2P” などの拡散防止措置についてまとめます.

本記事を読み終えると,実験室の “P2P” は “Peer to Peer” ではないことが分かります

サマリー・カルタヘナ法における「遺伝子組換え生物等を拡散させない措置」を総じて「拡散防止措置」と言う

・拡散防止措置には「施設基準」と「実施基準」がある

・「施設基準」は「物理的封じ込め」と呼ぶことがある

カルタヘナ法の拡散防止措置

「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」という法律があります.

これは「バイオセーフティに関するカルタヘナ議定書」という国際協定に対応した日本国内の法律です.

カルタヘナ法とも呼ばれます.

カルタヘナ法では「遺伝子組換え生物等を環境中に拡散させないための措置」を定めています.

それを「拡散防止措置」と呼びます.

簡潔に言うと,以下の 2 つのことを「拡散防止措置」と言います!

  1. 遺伝子組み換え生物等を逃がさない・漏らさない仕組み
  2. 遺伝子組み換え生物等が環境中では生存できないような仕組み

そして,拡散防止措置には, 2 つの基準があります.

  1. 施設基準
  2. 実施基準

施設基準を「ハード要件」,実施基準を「ソフト要件」って呼ぶ人もいるよ!

施設基準(ハード要件)は実験室の構造や設備・機器のことで,実施基準(ソフト要件)は施設基準を運用するためのルール具体的な方法を指します。

さらに,拡散防止措置には,扱う遺伝子組み換え生物等に応じたレベル分けがあります.

その 1 つが “P2P” です.

慣れない言葉が多くて,ちょっと混乱してきました.

君が “Peer to Peer” の話をしたとき,私も同じ感じでした(笑).

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拡散防止措置のレベル【 “P2P ≠ Peer to Peer” 】

拡散防止措置のレベルをもう少し詳しく見ていきましょう!

拡散防止措置のレベルは以下の通りです.

カルタヘナ法における拡散防止措置の分類

基本的は「P〇〇レベル」で表現します.

“P” は,”Physical containment” を意味しています.

“P2P” の後ろの “P” は?

“Plant” ですね!
ちなみに,動物実験の “A” は “Animal” ですよ!

“LS” は?

“Large Scale” です.

なるほど~

“P2P” は “Peer to Peer” ではないでしょ!

せっかくなので,P1レベルの施設基準と実施基準も確認しましょう!

P1レベルの施設基準

文部科学省の「拡散防止措置チェックリスト」によると、P1レベルの施設基準は以下の通りです.

実験室が、通常の生物の実験室としての構造及び設備を有すること。

実験室の扉,実験台,流し台があるってことですね!

P2では,これに安全キャビネットオートクレーブ滅菌器が追加されます.

P1レベルの実施基準

続いて、P1レベルの実施基準は以下の通りです.

  1. 遺伝子組換え生物等を含む廃棄物(廃液を含む。)については、廃棄の前に遺伝子組換え生物等を不活化するための措置を講ずること。
  2. 遺伝子組換え生物等が付着した設備、機器及び器具については、廃棄又は再使用(あらかじめ洗浄を行う場合にあっては、当該洗浄。)の前に遺伝子組換え生物等を不活化するための措置を講ずること。
  3. 実験台については、実験を行った日における実験の終了後、及び遺伝子組換え生物等が付着したときは直ちに、遺伝子組換え生物等を不活化するための措置を講ずること。
  4. 実験室の扉については、閉じておくこと(実験室に出入りするときを除く。)。
  5. 実験室の窓等については、昆虫等の侵入を防ぐため、閉じておく等の必要な措置を講ずること。
  6. すべての操作において、エアロゾルの発生を最小限にとどめること。
  7. 実験室以外の場所で遺伝子組換え生物等を不活化するための措置を講じようとするときなど、実験の過程において遺伝子組換え生物等を実験室から持ち出すときは、遺伝子組換え生物等の漏出や、拡散が起こらない構造の容器に入れること。
  8. 遺伝子組換え生物等が付着し、又は感染することを防止するため、遺伝子組換え生物等の取扱い後における手洗い等必要な措置を講ずること。
  9. 実験の内容を知らない者が、みだりに実験室に立ち入らないための措置を講ずること。

要約すると…

  • 実験室の窓や扉は閉める(開放厳禁)
  • 実験中はエアロゾルの発生を最小限に
  • 遺伝子組み換え生物等を廃棄する時は適切な方法で不活化
  • 遺伝子組換え生物等の取扱い後は手洗いなどの必要な措置を実施
  • 遺伝子組換え生物等を実験室の外へ出す時は漏出・拡散が起こらない構造の容器に保存
  • 実験の内容を知らない者や外部訪問などの第三者が実験室に立ち入らないための措置を実施

これらは実験に従事する者の基本ですね!

P2では「エアロゾルが生じやすい操作をする時は安全キャビネットを使う」などが追加されます.

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本記事では,”P2P” などの拡散防止措置についてまとめました.

皆さんが使っている実験室の拡散防止措置レベルはいくつでしょうか?

どのような拡散防止措置がとられているでしょうか?

これを機に再確認してみてください!

最後までお付き合いいただきありがとうございました.

次回もよろしくお願いいたします.

2021年7月31日 フール

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