こんにちは.
博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事しているフールです.
以前の記事で,「私」の費用対効果についてまとめました.
その最後で「それでも,私は博士課程まで進学して良かったと思ってますよ!」と書きました.
本記事は,その理由をまとめた記事になります.
私が博士号を取得して良かったと感じることを4つに分けて書きました!
ぜひ最後までお付き合いください!
研究職の派遣社員の学歴と職務内容
本題に入る前に,研究職の派遣社員の学歴について簡単に書きます.
派遣元および派遣先にもよりますが,研究職の派遣社員の学歴は非常に多様です.
私が見聞きしたのは,高卒・高専卒・学士卒・修士卒・博士卒の5タイプです.
中卒で研究職の派遣社員になった人は,まだ見たことも聞いたこともありません.
学歴で変わるものは何か?
それでは,5タイプで何が違うのでしょうか?
正直,分かりません.
もしかしたら,賃金は違うかもしれません.
さすがに賃金は違っていて欲しい(笑).
少なくとも,業務内容は,慣れてくればあまり差はないという印象です.
慣れてくれば?
「慣れてくれば」とは,どういう意味かというと…
博士卒の私は,基本的な実験手技が身についているので,特に教わることはありません.
院生の頃と変わらず,朝から晩まで実験をする日々と送っています.
一方,低学歴の人ほど,教養教育は受けていても専門教育は受けていません.
例えば,高卒の人に「細胞培養できる?」と聞いても「できません」と返ってくるのが普通です.
その状態では仕事にならないので,派遣元または派遣先でトレーニングを受けます.
そして,経験を積んでいくうちに,プロトコールにも慣れ,作業動線が見えるようになります.
そうなったら,ほとんど学歴の差はありません.
極端なこと言えば,高卒でも博士卒と同じ業務はできると言えます.
それなら,高卒でも良いよね.余計な学費も時間もかからないし.
このように思われても仕方がない側面はあると思います…
ただ,それでも私は「博士卒で良かった」と感じています.
博士卒で良かったと感じたこと
前置きが長くてすみません.
それでは本題です.
私が「博士卒で良かった」と感じることは,以下の4点です.
・闇実験ができる.
・自分から提案ができる.
・日常生活が豊かになる.
・プロフェッショナルとして扱ってもらえる.
闇実験ができる
「高卒でも博士卒と同じ業務はできる」と書きました.
でも,この闇実験に関しては,高卒ではできないと思います(笑).
これは,「学歴の差」と言えるのではないでしょうか?
闇実験とは,公然と「この研究をやります」「〇〇を検証します」と言わずに実験をすることです.
最近は,実験毎に社内申請が必要なことも多いので,無茶はできません.
しかし,同じ申請書内でもできること,考えられることはたくさんあります.
そのために必要なことは何かを考え,上手くいかない時の対処などのトラブルシューティングも全部1人でできます.
だから,時間が余ったときは,その時間を闇実験に充てることができます.
密かに新たなデータを蓄積しているので…
それなら以前確認していますよ!
とすぐにデータを出すことができます.
お陰様で,派遣先での私の評価は◎です.
自分から提案ができる
自画自賛で恐縮ですが,私は博士号取得者に求められる能力を体得していると自負しています.
正社員ではないので,研究全体の方針決定や研究テーマの選定には関わりません.
しかし,各テーマ内で私が担当する仕事に関しては,自身の経験を活かして積極的に提案をします.
自分の意見や考えを,自分の口と自分の言葉で表現できるのは,博士課程で鍛えらえたお陰だと思っています.
日常生活が豊かになる
スクリーニングも含めると,私は学士課程から博士課程の間に5,000近い論文を読んできました.
そのお陰で,「メモする・調べる・図解する」という能力が身に付いたと思います.
コレで何故「日常生活が豊かになる」かというと…
例えば,新型コロナウイルス感染症を考えてみましょう.
ウイルスに関すること,症状に関すること,検査に関すること,本当に色々な情報が毎日飛び交っています.
その真偽が確認されていない情報もたくさんあります.
戸惑う方も多いと思います.
でも,私は大丈夫です.
なぜなら,自分の生活に関わる情報をメモして,そのソース調べて,自分なりに図解しながら理解を深めることができるからです.
未熟者
それでも,私はまだまだ未熟者です.
興味が無いことには,権威や権力を信じて出された情報を鵜呑みにすることもあります(笑).
例えば,法律や制度のこと,税金のことです.
でも,それで損をしたこともあります.
今はそれを反面教師として,ちゃんと「メモする・調べる・図解する」ことを意識するようになりました.
プロフェッショナルとして扱ってもらえる
私は,朝から晩まで実験をする日々と送ってました.
「論文をよみ,仮説を立て,検証・考察する」
博士課程では,この一連の流れを体得することができたと自負しています.
お陰様で,派遣社員ではありますが,実験に関してはほぼ全てを任せてもらえます.
「ほぼ」全て?
「ほぼ全て」と書いた理由は,例外はあるからです.
例えば,物品の購入などですね.
私は,予算の使用権限をもっていません.
実験に必要な物を買う場合,書籍を購入する場合などは,上司に相談しなければなりません.
また,現在は企業にいるので,好奇心追求よりも製品化につながる基礎研究が求められます.
ただ,私は好奇心が強いので…
時々「おもしろだけの実験は承認できない」とリジェクトをくらうことがあります(笑).
博士号を取得して良かったと感じる理由【まとめ】
海外はどうか知りませんが,日本の大学院(特に博士課程)は修行の場です.
今は違うのかもしれませんが,私の頃は,苛烈な徒弟教育が徹底されていました(笑).
博士号取得者 は「課題を見つけて,それに対する方策を考え,それを実施する計画を立てて実行する」ために必要な訓練を受けています(受けているはずです).
現在の私は,その経験を活かせている(博士号取得により得られたパフォーマンスが高い)からこそ,「博士(Ph.D.)で良かった」と感じるのでしょう.
そう考えると,やっぱり私は幸せ者だと思います.
最後までお付き合いいただきありがとうございました.
次回もよろしくお願いいたします.
2020年7月21日 フール