タンパク質のPAGE【ポリアクリルアミドゲル電気泳動のあれこれ】
SDS-PAGE と Native-PAGEって何が違うんですか?
本記事は,このような「なぜ?どうして?」にお答えします.
こんにちは.
博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事しているフールです.
本記事は,タンパク質のPAGEについてまとめました.
PAGEの総論に関しては,前回の記事をご参照ください.
サマリー・SDS-PAGEは,SDSと還元剤の働きにより変性したタンパク質を泳動します.
・還元剤を使わないSDS-PAGEもあります.
・Native-PAGEは,SDSと還元剤を使わずにタンパク質を泳動します.
タンパク質のPAGE
SDS-PAGEとNative-PAGEの二つをまとめています.
SDS-PAGE
DTT や 2-ME などの還元剤でタンパク質分子中のジスルフィド結合を切断します.
陰イオン界面活性剤である SDS は,タンパク質分子中の水素結合を切断します.
界面活性剤に関しては,以下の記事でもまとめています.
還元剤と SDS の作用により,タンパク質の高次構造は壊れ,直線状になります.
1.0 g のタンパク質に 1.4 g の SDS が結合します.
この SDS の結合量は,タンパク質中のアミノ酸組成に関係なく一定です.
よって,タンパク質分子の電荷密度は,タンパク質の種類ではなくタンパク質の分子量に依存します.
この状態で電気泳動を行うので,タンパク質はその分子量に依存した移動度を示します.
分子量が既知のタンパク質マーカーと同時に泳動することで,目的分子のサイズを確認(または推定)することができます.
還元剤を使わないSDS-PAGE
SDS-PAGEでは,あえて還元剤を使わないときがあります.
例えば,抗体の SDS-PAGE です.
抗体の重鎖と軽鎖はY字型に配置しており,ジスルフィド結合で結合しています.
還元剤存在下で抗体は4本のポリペプチド鎖になります.
一方,還元剤非存在下で抗体は1本のポリペプチド鎖のままなのです.
よって,還元剤の有無で,ポリペプチド鎖の移動度が変わります.
この特徴を利用して,ハイブリドーマの上清中に抗体が存在するかどうかを検証することがあります.
加熱の有無も重要
SDS-PAGE のサンプル処理では, 95℃・5 min などの条件で加熱することが一般的です.
ただ,タンパク質の中には,加熱によって凝集してしまうものがあります.
凝集したタンパク質は分子量が大きくなります.
PAGEでは,ほとんど移動しないためゲルの上方に蓄積してしまいます.
初めて扱うタンパク質の場合は,還元剤の有無だけでなく,加熱の有無も検討することが大切です.
Native-PAGE
還元剤と SDS を加えないPAGEです.
以下に示すような特徴があります.
・分子間の相互作用が保持される.
・タンパク質の立体構造も保持される.
・タンパク質のアミノ酸組成の影響を受ける.
よって,タンパク質の移動度は,分子量だけでは決まりません.
立体構造が保持されているので,タンパク質の活性が保たれている場合が多いです.
目的分子が酵素などの場合,その活性を指標にバンドを検出することができます.
分子間の相互作用も保持されるので,例えば,DNAと相互作用するタンパク質はDNAと一緒に泳動されます.
核酸断片とタンパク質の結合を調べるゲルシフトアッセイは,この特徴を利用しています.
NuPAGEはどっち?
NuPAGEは,Novex® ブランドのタンパク質解析製品です.
時々,NuPAGE と Native-PAGE を同一視している人に遭遇します(笑).
名称に “N” があるからでしょうか?
NuPAGEは,ライフテクノロジーズ社が販売するタンパク質解析製品群です.
「群」ですから,SDS-PAGE 用のゲルもあれば,Native-PAGE 用のゲルもあるんですよ!
だから,NuPAGE ≠ Native-PAGE です!
以上, SDS-PAGE と Native-PAGE の違いでした.
最後までお付き合いいただきありがとうございました.
次回もよろしくお願いいたします.
2020年2月8日 フール