ページ(PAGE)はSDS-PAGEだけじゃない
先生や先輩が「PAGEで…」って言ってたんだけど,そもそもPAGEって何ですか?
本記事は,このような「なぜ?どうして?」にお答えします.
こんにちは.
博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事しているフールです.
本記事から数回に分けて,ページ(PAGE)についてまとめます.
PAGEは,”Polyacrylamide gel electrophoresis” の略です.
日本語では,ポリアクリルアミドゲル電気泳動といいます.
実験手法として,SDS-PAGE が有名ですね!
でも,SDS-PAGE だけが PAGE ではないですよ!
PAGE = SDS-PAGE だと思っていた方,ぜひ本連載をお読みください.
サマリー・アクリルアミドと N,N’-メチレンビスアクリルアミドが重合してできたゲルを使います.
・ゲルを作製するとき,TEMED を多めに入れてはいけません.
・アクリルアミドと N,N’-メチレンビスアクリルアミドの混合比も重要です.
ポリアクリルアミドゲル
雑な言い方ですが,ポリアクリルアミドゲルはアクリルアミドのゲルです(笑).
正確には,過硫酸アンモニウム(APS)と N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)の存在下で,アクリルアミドと N,N’-メチレンビスアクリルアミド(Bis)が共重合してできるゲルです.
APS はラジカル発生剤(または反応開始剤)で,TEMED は重合開始剤です*.
ポリアクリルアミドゲルの原理
原理を簡単に説明すると,APS は水溶液中でフリーラジカルを産生します.
このフリーラジカルが TEMED 分子中の水素を奪い,TEMED 分子中に炭素ラジカルが生成します.
この炭素ラジカルがアクリルアミドと反応することにより重合が開始されるので,この重合反応をラジカル重合といいます.
*試薬の説明は,本によって様々です.例えば,APS を重合開始剤,TEMED を重合促進剤,触媒,ラジカル安定化剤などと記載することがあります.
時間短縮は遠回り?
ポリアクリルアミドゲルを作製するとき,ゲルが固化するまでの時間を短縮しようとして,TEMED を多めに入れる人がいます.
確かに,ゲルが固まるまでの時間は短くなるので,時短にはなります.
しかし,オススメはしません.
詳細は割愛しますが,TEMED の量を必要以上に増やすと,アクリルアミドの重合反応が阻害されます.
その結果,ポリアクリルアミドの網目構造はスカスカとなり,ザルのようになってしまいます.
ポリアクリルアミドゲルの質が変わるため,泳動条件(電流・電圧・抵抗・時間)が変わってしまいます.
もちろん,サンプルの移動度も変わります.
再現性を確認する実験で,ゲルを作製する時間をケチったがために,全然違う結果が出てしまった人がいます.
それは,私なんですけどね(笑).
再現性のある実験結果を得るためには,プロトコル通りに実験を行うことが一番の近道なのです.
まさに「急がば回れ」ですね!
アクリルアミドと Bis の混合比
ゲルの網目構造の大きさで移動度が決まるということは,アガロースゲル電気泳動と同じです.
でも,この網目の大きさが少し厄介です.
ポリアクリルアミドゲルの網目構造は,アクリルアミドの濃度だけではなくアクリルアミドと Bis の混合比も重要だからです.
Bis の比率が高いとゲルの強度が上がります.
Bis の比率が高いゲルでは低分子域の分離能が上がりますが,高分子域の分離能は低下します.
市販されているアクリルアミド/ビス混合液
市販されているアクリルアミド/ビス混合液の大半は,以下の 3 種類です.
アクリルアミドと Bis の混合比が
- 37.5:1
- 29:1
- 19:1
例えば,BIO-RADの製品の場合は,以下の通りです.
- 30w/v%アクリルアミド/ビス混合液(37.5:1)
- 30(w/v)%-アクリルアミド/ビス混合液(29:1)
- 30(w/v)%-アクリルアミド/ビス混合液(19:1)
- 40w/v%アクリルアミド/ビス混合液(37.5:1)
- 40(w/v)%-アクリルアミド/ビス混合液(29:1)
- 40(w/v)%-アクリルアミド/ビス混合液(19:1)
最後までお付き合いいただきありがとうございました.
次回もよろしくお願いいたします.
2020年2月8日 フール