
4群の実験データがあるんだけど,統計解析のやり方を教えてください!
本記事は,このような「なぜ?どうして?」にお答えします.
本記事の内容・3群以上の検定で検討することを確認
・EZRでKolmogorov-smirnov 検定をする方法
・EZRで一元配置分散分析(ANOVA)のする方法

こんにちは.
博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事している元研究者のフールです.
これまで,2群の検定(対応のある検定と独立の検定)の具体的なやり方を説明してきました.

今回は,3群以上の統計解析のやり方をまとめます.
過去に,関連する記事を執筆していましたが,実際にどういった操作をするのかは書いてませんでした.
この記事では,マウスの体重データを例に4群の実験データの解析方法をお示しします.
本記事を読み終えると,3群以上の統計解析も自身を持って出来るようになりますよ!
サマリー・3群以上の検定にもいくつか各論があり,その違いを理解して使い分ける必要があります.
・3群以上の統計解析をExcelで行うには限界があるので,EZRを使いましょう!
マウスの平均体重を比較

学生時代に行った実験で,次のようなものがありました.
- マウスを4群に分ける.
- それぞれに異なる処置を行う.
- 各群の体重を測定し,平均体重を比較する.
その時のデータは,以下の通りです.
A群 | B群 | C群 | D群 | |
サンプル1 | 19.27 | 18.30 | 24.00 | 27.37 |
サンプル2 | 20.40 | 19.20 | 26.22 | 29.42 |
サンプル3 | 23.46 | 20.40 | 20.03 | 28.82 |
サンプル4 | 21.38 | 22.23 | 23.46 | 27.21 |
サンプル5 | 26.85 | 21.72 | 27.48 | 25.32 |
サンプル6 | 29.32 | 24.32 | 21.22 | 24.78 |
サンプル7 | 22.52 | 23.33 | 22.98 | 26.34 |
サンプル8 | 24.70 | 20.50 | 25.62 | 27.63 |
これから上記データを使って,実験データの解析方法をまとめます.
検定の流れ

3群以上の統計解析では,いきなり群間比較は行いません.
まず多群の差の検定を行い,群間に差があるかどうかを検定します.
この時点では,どの群間に差があるのか分かりません.
もし多群の差の検定で群間に差があると判定されたら,次に各群間の比較(post-hoc検定)を行います.
検定を行う前に考えること

3群以上の検定でも,検定の前に考えることが4つあります.
なぜなら,3群以上の検定にも色々あり,その違いを理解して使い分ける必要があるからです.
- データは間隔変数か?
- データは正規分布していると仮定できるか?
- データ間に対応はあるのか?
- データの分散は等しいか?
上記4つに対する答えは,その使い分けを判断するのに重要です.

それを表にまとめました!
多群の差の検定 | 一元配置分散分析 (ANOVA) |
Kruskal-Wallis検定 | 反復測定ANOVA | Friedman検定 |
データの特徴 | 間隔変数 | 間隔変数 順序変数 |
間隔変数 | 間隔変数 順序変数 |
データ間の対応 | 無し | 無し | 有り | 有り |
正規分布の仮定 | 出来る | できない | 出来る | 出来ない |
等分散の仮定 | 出来る | できない | – | – |
そして,各々の多群の差の検定に対応したpost-hoc検定があります.

それを次の図でまとめました!
データの特徴
今回の測定値は体重(g)で,大小や差に意味があるデータです.
だから,今回のデータは間隔変数です.
正規分布の仮定

データが正規分布しているかどうかを確認する方法はいろいろあります.
今回はEZRを使ってKolmogorov-smirnov 検定を行いました.
エクセルでデータファイルを次のように入力します.
これをCSVフォーマットで任意のフォルダに保存して準備完了です.
用意したファイルをEZRで読み込み,次の操作を行います.

クリックすると,次のような画面になります.
各グループごとに正規性を判定したいので,条件式を入力します.
私は,群の変数名を “Group” にしたので,「Group==”A”」としました.
もしあなたの群の変数名が “Category” なら「Category==”A”」と変更する必要があります.

OKをクリックすると,結果がでます.
確率pと有意水準α(α=0.05)を比べると,確率pは有意水準αよりも大きいですね!
帰無仮説を棄却できないので,Group Aは正規分布していないとは言えないとなります.
よって,今回はGroup Aは正規分布であると仮定できました.
Group B~Cに関しても同様に検定してみてください!
データ間の対応
今回の各群のマウスは別々の個体なので,対応はありません.
等分散の仮定

データの分散が等しいかどうかの確認は,バーレット検定で行います.
これもEZRを使って検定しました.
先ほどの読み込んだデータを使って,次の操作を行います.

クリックすると,次のような画面になります.

OKをクリックすると,結果がでます.
確率pと有意水準α(α=0.05)を比べると,確率pは有意水準αよりも大きいですね!
帰無仮説を棄却できないので,各群の分散に有意な差があるとは言えないとなります.
今回は等分散であると仮定できました.

以上より,今回実施する多群の差の検定は,一元配置分散分析(ANOVA)になります!
一元配置分散分析(ANOVA)
それではEZRを使って一元配置分散分析(ANOVA)を行いましょう!
引き続き,先ほどの読み込んだデータを使って,次のような操作を行います.

クリックすると,次のような画面になります.
EZRでは,ANOVAと同時にpost-hoc検定も実施できます.
今回は,全群との比較をするためにTukey法を選びました.
「Group A がコントロール群で,コントロール群との比較をしたい」って場合は,Dunnett法を選択してください!

OKをクリックすると,結果がでます.
確率pと有意水準α(α=0.05)を比べると,確率pは有意水準αよりも小さいですね!
帰無仮説を棄却できるので,どの群かは不明だが群間の平均値に有意な差があるとなります.
その下には,post-hoc検定の結果が出ています.
確率pと有意水準α(α=0.05)を比べると,D vs. A と D vs. B の確率pは有意水準αよりも小さいですね!
帰無仮説を棄却できるので,A群とD群の平均値に有意な差がある/B群とD群の平均値に有意な差があるとなります.
もっと勉強したい方へ
- 4step エクセル統計

計算式の入力をすることなく,統計解析ができる本です.ツールとして統計を求めている人には最適だと思います.
- 数学いらずの医科統計学

データの見方から解析結果の解釈までをわかりやすく解説している本です.タイトル通り計算式にほとんど触れていません.
今回は,3群以上の統計解析方法をまとめました.
今回はExcelを卒業し,EZRを使いましたね.

EZRの使い方は,以下の記事でまとめていますので,そちらをご覧ください.

最後までお付き合いいただきありがとうございました.
次回もよろしくお願いいたします.
2021年2月11日 フール