母国語が英語ではない研究者はやっぱり不利だった話

この記事は約7分で読めます。

英語が嫌いなんですけど,研究者は英語ができないと不利ですか?

本記事は,このような疑問にお答えします.

本記事の内容・「母国語が英語ではない研究者は不利」を示した論文の紹介

・日本人が英語を身に着ける方法(私見)

フールは元研究者の獣医師で,夢追い人である.

フールの登場

こんにちは.

元研究者のフールです.

皆さん,英語は好きですか?

論文の読解・執筆・学会発表などを英語で行うことに抵抗は感じませんか?

フールの登場

私は科学活動を英語で行うことに抵抗があります…

だから,「元」研究者になってしまったのかもしれないw

最近,母国語が英語ではない研究者の言語障壁の影響を定量化した研究報告があることを知りました.

The manifold costs of being a non-native English speaker in science - PubMed
The use of English as the common language of science represents a major impediment to maxi...

この記事では,論文の内容と私個人の経験を基に「母国語が英語ではない研究者が抱える問題」をまとめました.

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サマリー・母国語が英語ではない研究者は科学活動で不利であると報告されています.

・日本人が英語を身に着けるには,「日本語を完全に排除できる」環境に身を置くしかないと考えます.

母国語が英語ではない研究者はやっぱり不利だった

冒頭で紹介した論文の概要は以下の通りです.

  • 対象:環境科学の研究者908名
  • 対象国:日本,ナイジェリア,バングラデシュ,ウクライナ,スペイン,ボリビア,ネパール,英国(その国の公用語を母国語としている国)
  • 調査項目:科学活動(論文の読解,執筆,出版,普及,学会への参加)を実施するために必要な労力
  • 解析方法:英語を母国語とする研究者とそうでない研究者で上記の労力にどのような差があるか?
  • 結果:科学活動を行う上で,英語を母国語としない研究者は,英語を母国語とする研究者よりも多くの労力を費やしている

やっぱり,「母国語が英語ではない研究者は科学活動において不利」と解釈できる結果がでていました.

これまでの経験や感覚として「当たり前だよね!」とは思っていました.それでも,データをまとめて発表することは大切ですよね!

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英語を母国語としない研究者が直面する問題

冒頭の論文の結果をもう少し詳しく見ていきましょう.

  1. 英語論文を読むのにかかる時間
  2. 英語論文を書くのにかかる時間
  3. 論文リジェクトの割合
  4. 国際学会への参加逃避

英語の論文の読解にかかる時間

英語で書かれた最新の研究論文を読み,その内容を理解するのに要した時間に調べていました.

英語で論文発表を1本しか発表していない研究者を比較したら,英語を母語としない人英語を母語とする人よりも英語の論文を読むのに最大2倍の時間を必要としていました.

当然だよね.

私個人は DeepL の登場で読解時間がかなり短縮したけどねw

英語の論文の執筆にかかる時間

論文の初稿を英語で執筆するのに要した日数(執筆に割く時間は1日あたり7時間と仮定)を調べていました.

英語で論文発表を1本しか発表していない研究者を比較したら,英語を母語としない人英語を母語とする人よりも英語の論文の執筆により多くの日数を必要としていました.

博士課程時代,最初の英語論文の執筆に,私は2カ月近くかかりました.

論文リジェクトの割合

英語論文を1本でも発表したことがある人を対象に英語のライティングが原因でジャーナルから論文をリジェクトされる割合を比較していました.

非英語ネイティブスピーカーは約4割が英語ライティングが原因で論文がリジェクトされた経験があったが,英語ネイティブスピーカーでは14.4%だった.

英語を母語としない研究者の論文はアクセプトされにくいってことですね!

国際学会に出席しない割合

日本とスペインの研究者(高所得の国籍を持つ研究者)で英語の論文を5本以下しか発表していない者の約30%は,言語障壁を理由に英語の学会に出席しないと回答していた.

また,約半数は,同様の理由で口頭発表を避けることが多いと回答していた.

とても共感できる結果です.卒業要件でなかったら,私も参加したくなかった(笑).発表自体は原稿の準備と練習で何とか補えるけど,その後の質問タイムが地獄だもんね.

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日本人が英語を身に着ける方法

さて,ココからは私の博士課程時代の経験を共有します.

そして,日本人が英語を身に着ける方法*を私なりに考えてみようと思います.

*ココで言う「英語を身に着ける」とは第三者の英語が聞き取れるようになり会話ができるようになることです.

【私見】発音やネイティブな表現にこだわる人が多い

ネイティブが使っているカッコイイ英語表現で書いてよ!

こんな表現,ネイティブが使っているところ見たことある?

発音が変だしアクセントも変だから聞き取りづらいよ!

上記は私が博士課程時代に指導教官から何度も聞かされた説教です(笑).

  • カッコイイって何?
  • 非英語ネイティブの人間がどうやって英語ネイティブが使う表現を学ぶのか?
  • 発音ってそんなに重要なの?

理解できなかったので,説教されるたびに以下のような反論をしていました(笑).

カッコイイの意味が分かりません.そんなの英語ネイティブの国に生まれた人しかできないですよ!

私は英語ネイティブの知り合いがいないので使っているかどうか分かりません!文法的に正しければ良いのではないでしょうか?

アメリカ・イギリス・オーストラリアの人の英語の発音やアクセントはみんな同じなんですか?

今でも「ネイティブが使っている英語表現」は英語ネイティブの特権だと思ってます.

また,英語ネイティブの間でも発音やアクセントが異なるのは普通だと思っているので,「アメリカ・イギリス・オーストラリアの人の英語の発音やアクセント」も人それぞれ異なると思います.

でも,指導教官や学位論文の審査会の教授たちは発音やネイティブな英語表現にこだわりをもつ人が多かった印象があります.

なぜですか?

分かりません!

私は「受験英語の弊害」だと勝手に思っています.

こういった指導が他の博士課程でも行われているかどうかは分かりません.

でも,もし他の博士課程でも同じだとすると,発音やネイティブな英語表現の強制が英語に対する苦手意識を助長しているような気がします.

【私見】日本人が英語を身に着ける方法

私は「日本人が英語を身に着ける方法」は日本語を完全に遮断できる環境に長期間を身を置くしかないと思っています.

どんなに単語・文法・発音・アクセントの勉強しても話者が変わって聞き慣れない人になるだけで何を言っているのか分からないんですよね(笑).

日本語にも方言があります.

私は東北地方のズーズー弁が聞き取れませんでしたが,仕事で2週間ほど滞在していたら,少しは分かるようになりました.

でも,今はまた分からない状態に戻っています.

英語も同じだと思うのです.

日本語を完全に遮断できる環境(英語圏)に長期間を身を置いて,色々な人が話す英語に触れるしかないと思っています.

日本語を完全に遮断しているので,覚えた表現を日常生活の中でも使うようになるでしょう.

そうやって聞く・話すを繰り返すうちに自然と英語が身につくのではないでしょうか?

【私見】発音やアクセントは「できたらイイよね」程度

発音やアクセントは要らないとまでは思ってません.

限られた時間で内容を正確に伝える必要がある場面(報道・学会発表など)では発音やアクセントがちゃんとできた方が良いでしょう.

でも,必須ではないと思います.

英語ネイティブな人の数よりも非英語ネイティブな人の数が多い現状では,人それぞれの英語表現・発音方法を知ることの方が大切ではないでしょうか.

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最後までお付き合いいただきありがとうございました.

次回もよろしくお願いいたします.

2023年8月24日 フール

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