遺伝子クローニングにかかる費用【実験にはお金がかかる】④

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こんにちは.

博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事しているフールです.

趣味で研究を展開できる,純粋に好奇心を追求できる,そんな「自分だけの研究施設」を作るには,いくらぐらい必要なのでしょうか?

それを考えるために,日々の実験業務にかかる費用を考えています!

本記事では,遺伝子クローニングにかかる費用を計算*してみました

あなたは,遺伝子クローニングに,どのくらい費用がかかると思いますか?

*ココで使用している数値は,定価・希望小売価格・オープン価格・参考小売価格のどれかです.私の職場が実際に支払っている価格ではありません.

サマリー・約1,000円が,PCRの1回のお値段です.
・約360円が,PCR産物の精製にかかる費用です.
・約7,100円が,クローニングとトランスフォーメーションにかかる費用です.
・約1,400円が,コロニーPCRの1回分のお値段です.
・約2,400円が,ミニプレップとシークエンスにかかる費用です.

遺伝子クローニングのプロトコール

私が行っている遺伝子クローニングのプロトコールは,以下通りです.

  • RNA抽出キットの説明書に従ってRNAを抽出する
  • RNA濃度を測定する
  • cDNA合成キットの説明書に従ってcDNA合成を行う
  • PCRキットの説明書に従ってPCRをかける
  • 電気泳動で目的サイズの断片が増幅されているか確認する
  • 増幅産物を切り出す
  • 増幅産物を精製する
  • 精製物を遺伝子クローニングキットでクローニングする
  • クローニング産物を大腸菌にトランスフォーメーションする
  • 大腸菌のコロニーが生えたことを確認する
  • コロニーPCRでクローニング産物の有無を確認する
  • クローニング産物をもった大腸菌を少量培養する
  • ミニプレップ(プラスミド抽出)する
  • シークエンスでクローニング産物の配列を確認する

「遺伝子クローニング」と一言で済むことですが,実際はかなりのステップがありますね!

色々なキットも使っているので,費用もそれなりにかかりそうですね…

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遺伝子クローニングにかかる費用

上記プロトコールで,私が使用する材料とその費用*は以下の通りです.

RNA抽出およびcDNA合成に掛かる費用に関しては,前回の記事をご覧ください.

それでは本題です.

先ずは最後に1回のPCRにかかるお値段です↓

材料など 販売価格(¥) 1回あたりの費用(¥)
PCRキット 30,000 150
アガロース 26,000 260
TAE 26,500 53
ローディングバッファー 12,000 1.2
サイズマーカー 17,000 170
染色剤 26,000 130
小計 137,500 764.2
チップ・ピペット類 15,700 114.5
チューブ類 26,400 26.4
小計 42,100 140.85
合計 179,600 905
合計(税込) 197,560 995.56

PCRの1回分のお値段は,約1,000円ということが分かりました!

続いて,切り出し精製にかかる費用です↓

材料など 販売価格(¥) 1回あたりの費用(¥)
精製キット 14,000 280
チューブ類 4,200 4.2
チップ・ピペット類 28,200 40.93
合計 46,400 325
合計(税込) 51,040 357.6

PCR産物の精製にかかる費用は,約360円でした.

次に,クローニングとトランスフォーメーションに掛かるお値段です↓

材料など 販売価格(¥) 1回あたりの費用(¥)
クローニングキット 38,300 3,830
チューブ類 26,400 26.4
チップ・ピペット類 28,200 32.9
合計 92,900 3,889
合計(税込) 102,190 4,278.2
材料など 販売価格(¥) 1回あたりの費用(¥)
コンピテントセル 21,000 2,100
LBプレート 3,900 390
LB(粉末) 9,000 0.72
チューブ類 4,200 4.2
チップ・ピペット類 28,200 32.9
コンラージ棒 21,250 21.25
合計 87,550 2,549.07
合計(税込) 96,305 2,803.98

クローニング自体にかかる費用は約4,300円で,それを大腸菌にトランスフォーメーションするお値段は約2,800円でした.

今度は,コロニーPCRに掛かる費用を考えてみましょう↓

材料など 販売価格(¥) 1回あたりの費用(¥)
PCRキット 9,000 113
アガロース 26,000 260
TAE 26,500 53
ローディングバッファー 12,000 1.2
サイズマーカー 17,000 170
染色剤 26,000 130
LBプレート 3,900 390
Nuclease free water 62 0.0155
小計 120,462 1,117
チップ・ピペット類 15,700 114.5
チューブ類 26,400 26.4
つまようじ 215 0.43
小計 42,315 141.28
合計 162,777 1,258
合計(税込) 179,054.70 1,384.35

コロニーPCRにかかる費用は,約1,400円でした.

最後に,ミニプレップとシークエンスに掛かるお値段です↓

材料など 販売価格(¥) 1回あたりの費用(¥)
抽出キット 18,000 360
LB(粉末) 9,000 0.72
蒸留水 62 10.85
抗生物質 3500 70
小計 30,562 442
チップ・ピペット類 15,700 114.5
チューブ類 48,700 93.2
つまようじ 215 0.43
小計 64,615 208.08
合計 95,177 650
合計(税込) 104,694.70 714.62
材料など 販売価格(¥) 1回あたりの費用(¥)
シークエンスキット 5,050,000 1,010
99.5%エタノール 2,260 316.4
ホルムアミド 7,000 5.6
0.5 M EDTA 12,000 0.006
3 M 酢酸ナトリウム(pH5.2) 8,000 0.16
Nuclease free water 62 0.016
小計 5,079,322 1,332
チップ・ピペット類 15,700 114.5
チューブ類 26,400 26.4
つまようじ 215 0.43
小計 42,315 141
合計 5,121,637 1,473
合計(税込) 5,633,800.7 1,620.81

ミニプレップにかかる費用は約720円で,抽出したプラスミドのシークエンス費用は約1,620円でした.

以上より,遺伝子クローニングにかかる費用は,約14,600円*くらいだと推測できます(RNA抽出やcDNA合成にかかる費用も含みます).

結構なお値段ですね(笑).

これは1サンプル分ですから,標的遺伝子が増えてサンプル数が増えるほど,その費用も増えるってことですね…

*濃度測定に掛かる費用(機器代・チップ代など)やプライマー代は含んでいません.

遺伝子クローニングにかかる費用【1か月分】

次に遺伝子クローニングかかる費用を1か月あたりに換算します.

でも,遺伝子クローニングなんて頻繁にはやりません(笑).

だから仮のお話とします.

もし私が,1か月で4回の遺伝子クローニングを行ったら,どのくらいかかるのでしょうか?

単純計算で,14,600 × 4 ≒ 58,300円

ただ,サンプルとなるRNAは同一の物を使用すると考えた場合,お値段は少し安くなって約51,100円です.

考慮すべきその他の費用

遺伝子クローニングかかる費用を計算してきました.

ただ,材料だけそろえても実験はできません.

実験装置を整える必要があります.

今回の計算には,ピペッター・遠心機・泳動装置・シークエンス機器・パソコンなどの機器類の費用を考慮していません

毎度のことですが,これらは,1回分という計算ができないので除外しています.

1度そろえれば長期使用可能なので,初期費用という計算になるのでしょう.

いつか,機器類に関して計算してみようと考えています.

ただ,シークエンス機器は1000万円越えだと聞いたことがあるので,あんまり考えたくありません(笑).

遺伝子クローニングかかる費用【まとめ】

実験にかかる費用として,遺伝子クローニングかかる費用を計算してみました.

1回のクローニング作業で15,000円も使っていましたね.

全て1回で上手くいった場合のお値段ですので,もしココにプライマーの複数設計やPCRの条件検討などを加わった場合は,もっと高くなりますね!

いままでは労力だけを考えてました.

でも今回,お金と労力をかけてクローニングしていることがわかりました.

お金と労力をかけてクローニングした遺伝子の機能が…

これだとモチベーションは下がり放しです(笑).

最後までお付き合いいただきありがとうございました.

次回もよろしくお願いいたします.

2020年9月14日 フール

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