こんにちは.
博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事しているフールです.
久しぶりに【実験にはお金がかかる】シリーズを書きます.
私には,自分だけの研究施設を持つという夢があります.
ラボヘッドまたは企業のプロジェクトリーダーになるという意味ではありません!
趣味で研究を展開できる,純粋に好奇心を追求できる,そんな「自分だけの研究施設」が作りたいのです!
漠然とお金がたくさん必要ってのは分かるんですが,具体的にいくらぐらい必要なのでしょうか?
やはり実現するためには,具体的な数値目標が必要ですよね.
本シリーズでは「自分だけの研究施設」を創る第1歩として,日々の実験業務にかかる費用を考えています!
本記事では,RNA抽出からqPCRをするまでにかかる費用を計算*してみました.
あなたは,RNA抽出からqPCRをするまでに,どのくらいお金が必要だと思いますか?
*ココで使用している数値は,定価・希望小売価格・オープン価格・参考小売価格のどれかです.私の職場が実際に支払っている価格ではありません.
サマリー・約1,400円が,RNA抽出1回のお値段です.
・約1,020円が,cDNA合成1回にかかる費用です.
・約2,120円が,1回のqPCR(絶対定量)にかかる費用です.
RNA抽出からqPCRまでのプロトコール
私が行っているRNA抽出からqPCRまでのプロトコールは,以下通りです.
- RNA抽出キットの説明書に従ってRNAを抽出する
- RNA濃度を測定する
- cDNA合成キットの説明書に従ってcDNA合成を行う
- qPCRキットの説明書に従ってqPCR(絶対定量)を行う
- 機器付属ソフトウェアで解析を行う
ほとんどがキットなので,説明書に従って操作するだけです(笑).
ロボットでも出来ますね(笑).
RNA抽出からqPCRをするまでにかかる費用
上記プロトコールで,私が使用する材料とその費用*は以下の通りです.
先ずはRNA抽出のお値段からです↓
材料など | 販売価格(¥) | 1回あたりの費用(¥) |
RNA抽出キット | 38,500 | 770 |
99.5%エタノール | 2,260 | 316.4 |
Nuclease free water | 62 | 93 |
DTT | 33,400 | 0.25 |
チップ・ピペット類 | 28,200 | 77.48 |
合計 | 102,422 | 1,257 |
合計(税込) | 112,664.20 | 1,382.84 |
RNA抽出1回分のお値段は,約1,400円ということが分かりました!
続いてcDNA合成に掛かる費用です↓
材料など | 販売価格(¥) | 1回あたりの費用(¥) |
cDNA合成キット | 41,600 | 832 |
Nuclease free water | 62 | 0.00434 |
チップ・ピペット類 | 15,700 | 65.4 |
チューブ類 | 26,400 | 26.4 |
合計 | 83,762 | 924 |
合計(税込) | 92,138.20 | 1,016.18 |
cDNA合成1回分の費用は,約1,020円でした!
最後にqPCR(絶対定量)1回分のお値段です↓
材料など | 販売価格(¥) | 1回あたりの費用(¥) |
qPCRキット | 36,800 | 36.8 |
Nuclease free water | 62 | 0.01550 |
サンプル希釈液 | 12,000 | 445.5 |
小計 | 48,862 | 482.3 |
チップ・ピペット類 | 15,700 | 294.3 |
チューブ類 | 26,400 | 26.4 |
プレート類 | 76600 | 1123 |
小計 | 118,700 | 1,444 |
合計 | 167,562 | 1,926 |
合計(税込) | 184,318.20 | 2,118.62 |
qPCRの1回分のお値段は,約2,200円ということが分かりました!
以上より,RNA抽出からqPCRをするまでにかかる費用は,約4,600円くらいだと推測できます.
なかなかのお値段ですね(笑).
しかもこれは1サンプル分です.
サンプル数は増えれば増えるほど,その分だけの費用が増えるってことですね…
*濃度測定に掛かる費用(機器代・チップ代など)やプライマー代は含んでいません.
RNA抽出からqPCRをするまでにかかる費用【1か月分】
次にRNA抽出からqPCRをするまでにかかる費用を1か月あたりに換算します.
現在の私の場合,1か月で4回くらい行っていますので,その条件で考えることにします.
また,サンプル数はバラバラですが,1回10サンプルとして考えます.
単純計算で,(1,382.84 + 1,016.18 + 2,118.62)× 10* × 3 ≒ 135,600円
1か月間で15万円近くもかかっていることになりますね!
金額を知ると,ケアレスミスによる失敗(プライマーを入れ忘れたとか)はできなくなりますね…
*プレートの分など1回分で足りる分は除くべきですが,今回は除いてません.
考慮すべきその他の費用
RNA抽出からqPCRをするまでにかかる費用を計算してきました.
ただ,材料だけそろえても実験はできません.
実験装置を整える必要があります.
今回の計算には,ピペッター・遠心機・測定装置・パソコンなどの機器類の費用を考慮していません.
これらは,1回分という計算ができないので除外しました.
1度そろえれば長期使用可能なので,初期費用という計算になるのでしょうか?
先日,これに関する興味深い投稿を見つけました.
結局ラボのセットアップには3000万円以上かかった。
reagentや、小さな機器は移動・移管したのに、これだけかかった。
空部屋の壁をとったり、ベンチやオフィス家具をいれるところから始めたとはいえ。。。
帰国発展研究の科研費がなかったら、まだ何にもできない状態だったろう。怖
— Fumiyo Ikeda (@IkedaResearch) August 26, 2020
ラボのセットアップに3000万円以上もかかったそうです.
ヤバいですね(笑).
投稿にあるように,科研費などの支援が無ければ何もできないと思います.
そして私は,個人でそれを実行しようとしているのだから,さらにヤバいです.
奨学金返済もまだ終わってないのに…
RNA抽出からqPCRをするまでにかかる費用【まとめ】
実験にかかる費用として,RNA抽出からqPCRをするまでにかかる費用を計算してみました.
1か月間で15万円近くもかかっていることに私は驚きを隠せません.
Ready to use製品を惜しみなく使っているという背景もあるので,節約しようと思えば,もっと安くできると思いますが…
「お金で解決できるなら,それで解決する」というのが企業ですが,その環境にいると金銭感覚は麻痺しますね(笑).
最後までお付き合いいただきありがとうございました.
次回もよろしくお願いいたします.
2020年9月12日 フール