
こんにちは.
博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事しているフールです.
私には夢があります!
それは,自分だけの研究施設を持つこと.
ラボヘッドになるとか,企業のプロジェクトリーダーになるという意味ではありません!
純粋に好奇心を追求できる,趣味で研究を展開できる,そういう意味での「自分だけの研究施設」です.
I have a dream that one day I will build my own research facility, where I can purely pursue my curiosity.

英語で書いた意味は…特にありません(笑).

夢というよりは,妄想に近く,現実感は全くありませんが(笑).
いったいいくらあれば実現できるんでしょう?
実現しようにも,具体的な数値がなければ目標が定まりません.
今回,「自分だけの研究施設」を創る第1歩として,日々の実験業務にかかる費用を考えてみることにしました!
本記事では,1回の細胞培養にかかる費用を計算*してみました.
あなたは,1回の細胞培養で,どのくらいお金が掛かっていると思いますか?
*ココで使用している数値は,定価・希望小売価格・オープン価格・参考小売価格のどれかです.実際の私の職場が業者に支払っている価格ではありません.
サマリー・約1,070円が,1回の細胞培養のお値段です.
・継代に加えて細胞播種を行うと,約2,050円になります.
細胞培養(継代)のプロトコール
私が行っている接着系培養細胞の継代プロトコールは,以下通りです.
単なる細胞継代の場合
- 培地を除去する
- 細胞をPBSで洗浄する
- PBSを除去する
- トリプシン液で細胞を剥がす
- 培地を加えてトリプシン処理の停止する
- 遠心で細胞をペレット化する
- 上清を除去する
- 培地を加えて,ペレットを崩す
- 細胞浮遊液の一部を新しいシャーレに移す
- 培地を加える
- インキュベーターに静置する
細胞の播種がある場合
継代で余った細胞を6-wellプレートなどに播種する場合は,以下の通りです.
- 培地を除去する
- 細胞をPBSで洗浄する
- PBSを除去する
- トリプシン液で細胞を剥がす
- 培地を加えてトリプシン処理の停止する
- 一部をトリパンブルー液と混ぜる
- 計算版にトリパンブルー液混合物を滴下する
- 遠心で細胞をペレット化する
- 遠心中に細胞数をカウントする
- 上清を除去する
- 培地を加えて,ペレットを崩す
- 細胞浮遊液の一部を新しいシャーレに移す
- 培地を加える
- インキュベーターに静置する
- 細胞数を合わせて,6-wellプレートに播く
- インキュベーターに静置する
1回の細胞培養にかかる費用
それでは1回の細胞培養にかかる材料とその費用を考えていきます.
先ずは,単なる細胞継代の場合についてまとめます.
単なる細胞継代の場合の費用
単なる細胞継代で,私が使用する材料とその費用は以下の通りです.
材料など | 販売価格(¥) | 1回あたりの費用(¥) |
DMEM | 950 | 57.0 |
血清 | 95,800 | 229.9 |
PBS | 1,300 | 13.0 |
トリプシン液 | 2,930 | 29.3 |
抗生物質 | 4,900 | 14.7 |
小計 | 105,880 | 343.9 |
15 mLの遠沈管 | 29,900 | 119.6 |
10 cm dish | 42,600 | 142.0 |
ピペット類 | 46,300 | 324.0 |
オートクレーブバック | 17,600 | 44.0 |
小計 | 136,400 | 629.6 |
合計 | 242,280 | 973.5 |
合計(税込) | 266,508 | 1,071 |
1回の細胞培養のお値段は,約1,070円ということが分かりました!
なお,培養細胞の購入にかかる費用は,考慮していません.
細胞の播種がある場合の費用
細胞を6-wellプレートなどに播種する場合の費用は,以下の通りです.
材料など | 販売価格(¥) | 1回あたりの費用(¥) |
DMEM | 950 | 76.0 |
血清 | 95,800 | 459.8 |
PBS | 1,300 | 13.0 |
トリプシン液 | 2,930 | 29.3 |
抗生物質 | 4,900 | 19.6 |
トリパンブルー液 | 3,100 | 0.6 |
小計 | 108,980 | 598 |
15 mLの遠沈管 | 29,900 | 119.6 |
10 cm dish | 42,600 | 142.0 |
6-wellプレート | 21,000 | 420.0 |
計算版 | 12,300 | 123.0 |
ピペット類 | 46,300 | 416.5 |
オートクレーブバック | 17,600 | 44.0 |
小計 | 169,700 | 1,265.1 |
合計 | 278,680 | 1,863.5 |
合計(税込) | 306,548 | 2,050 |
細胞継代+播種のお値段は,2,050円ということが分かりました!
先ほど同様に,培養細胞の購入にかかる費用は,考慮していません.
細胞培養にかかる費用【1か月分】
細胞培養にかかる費用を1か月あたりに換算します.
もちろん,細胞の種類や維持している数によりますが,現在の私の場合(以下参照)で考えることにします.
- 継代の頻度:2回/週
- その内,1回は播種あり
- 維持している細胞数:3つ
単純計算で,(1,071+2,050)× 3 × 4* = 37,452円
*1か月を4週間としています.
1か月間で約38,000円が,細胞の維持にかかっていることになりますね!

私の家賃よりも高い(笑).
考慮すべきその他の費用
細胞の維持管理にかかる費用を計算してきました.
ただ,材料だけそろえても実験はできません.

そうです!
実験環境を整える必要があります.
今回の計算には,オートピペッター・遠心機・安全キャビネット・インキュベーターなどの機器類の費用を考慮していません.
除外した理由は,1回分という計算はできないからです.
1度そろえれば,しばらくは使える物なので,初期費用という計算になるでしょうか?
これに関しては,別の記事で触れたいと思います.
1回の細胞培養にかかる費用【まとめ】
実験にかかる費用として,1回の細胞培養にかかる費用を計算してみました.
結構使っていましたね!

でも,1ヶ月分の費用が私の家賃よりも高いとは思いませんでした(笑).
現在は企業にいるので,Ready to use製品を惜しみなく使っているという背景もあると思います.
学生の頃のように,培地やトリプシン液などを作製するところから始めれば,時間はかかるかもしれませんが,費用は抑えることができるでしょうね!
最後までお付き合いいただきありがとうございました.
次回もよろしくお願いいたします.
2020年7月19日 フール