ゲノムDNAを加えて「混ぜて」って言われたから,ボルテックスをかけたら怒られた.なんで?
本記事は,このような「なぜ?どうして?」にお答えします.
こんにちは.
博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事しているフールです.
皆さんは,サンプルや試薬を混ぜるとき,どのようにしていますか?
ピペッティング・ボルテックス・転倒混和などなど,「混ぜ方」にも色々あります.
なぜなら,「混ぜる」対象によっては,不適切な「混ぜ方」があるからです.
実は,冒頭の男の子のように,「混ぜ方」を使い分けていない人は多いです.
この記事では,サンプルや試薬の「混ぜ方」についてまとめました.
本記事を読み終えると,適切な「混ぜ方」が分かるようになります!
サマリー・「混ぜる」対象によって,適切な「混ぜ方」を選択しましょう.
「混ぜ方」の一覧
実験室で行う「混ぜる」という動作は,以下のことを指します.
① マイクロピペットでピペッティングする ② チューブを指で弾く ③ 転倒混和する ④ スターラーを使う ⑤ ボルテックスをかける ⑥ 振り混ぜる
①が最も穏やかな方法で,⑥が最も激しい方法になります.
実験室では,「混ぜる」対象に合わせて,これらを使い分ける必要があります.
マイクロピペットでピペッティング
マイクロピペットを使ってピペッティングすることで混ぜる方法です.
最も穏やかな混ぜ方になります.
メリット
- 少量のサンプルを混ぜることができる.
- 貴重なサンプルを混ぜることができる.
- 壊れやすいもの(ゲノムDNAなど)や失活しやすいもの(酵素など)にも適用できる.
- 界面活性剤など泡立ちやすい試薬が混ざっていても使えます.
デメリット
- マイクロピペットを正しく使っていることが前提です.
- 必ずチップを消費します.
- サンプル数が多い場合,作業が増えて時間がかかります.
チューブを指で弾く
人差し指または中指で,チューブの底を弾く混ぜ方です.
メリット
- 少量のサンプルを混ぜることができる.
- チップを使わずの混ぜることができます.
デメリット
- 簡単なようですが,力加減の調節は意外と難しいです.
- チューブの壁やフタに試薬が飛び散ります(スピンダウンが必要です).
- 泡立つことがあります.
転倒混和
チューブのフタをしっかり閉めた上で,チューブを逆さまにしたり戻したりを繰り返す混ぜ方です.
メリット
- 簡単です.
- 15 mL 遠心管や 50 mL 遠心管など,大容量でも混ぜることができます.
- 上手に混ぜれば泡立ちを抑えることもできます.
デメリット
- 有機溶媒などの場合,フタを閉めていても漏れることがあります.
- チューブのフタに試薬が付着します(スピンダウンが必要です).
スターラーの使用
マグネチックスターラーを使って混ぜる方法です.
滴定などpH調整が必要な場合,難水溶性のものを混ぜる場合に便利です.
メリット
- 簡単です.
- 大容量でも混ぜることができます.
- 加熱またが冷却しながら混ぜることができます.
- 回転数を調節すれば泡立ちを抑えることもできます.
デメリット
- 洗い物が増えます.
- 無菌操作は難しいです.
ボルテックスを使う
ボルテックスを使って激しく混ぜる方法です.
凍結していたものを溶解するときにも使えます.
メリット
- 簡単です.
- 15 mL 遠心管や 50 mL 遠心管など,大容量でも混ぜることができます.
- 難水溶性の物質を混ぜるときに便利です.
- 懸濁溶液を混ぜる時に便利です.
デメリット
- 有機溶媒などの場合,フタを閉めていても漏れることがあります.
- チューブのフタに試薬が付着します(スピンダウンが必要です).
- 壊れやすいもの(ゲノムDNAや酵素標識抗体など)や失活しやすいもの(酵素など)には不適です.
- 界面活性剤など泡立ちやすい試薬が混ざっているものも不適です.
激しく振る
液相が分離しているような試薬(例えば,フェノール液など)を混ぜるときに使う方法です.
メリット
- 確実に混ざります.
デメリット
- 容器のフタに試薬が付着します(スピンダウンが必要ですが,できない容器のことが多いです).
- 振ることに集中するあまり,手からすっぽ抜ける人がいます(事故の原因).
以上,サンプルや試薬の「混ぜ方」でした.
最後までお付き合いいただきありがとうございました.
次回もよろしくお願いいたします.
2020年5月2日 フール