試薬ラベルに記載すること【3W1Hを意識したラベル作り】

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今日,実験で使う試薬を作ったけど,ラベルには何を書けば良いの?

本記事は,このような「なぜ?どうして?」にお答えします.

 

こんにちは.

博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事しているフールです.

ラボの規模によりますが,多くのラボでは,自ら調整した試薬を使用しているのではないでしょうか?

調整した試薬を保存するとき,ラベルは作製していますか?

そのラベルには,何を記載していますか?

ラベルの面積は限られているため,記載する情報も限られます.

それでも,最低4つの情報(私は,3W1Hと呼んでいます)は,ラベルに書いて欲しいです.

その「4つの情報(3W1H)」とは,いったい何でしょうか?

サマリー・ラベルに書いて欲しい情報は,試薬名・試薬の濃度・年月日・作製者名です.

ラベルに記載する3W1H

先ず,理想的なラベル*をお見せします.

*幅や長さは,ラベルを貼る容器に合わせて変更してください.

 

皆さんが作成したラベルと比較してどうでしょうか?

それでは,このラベルの何が理想的なのかを説明していきますね.

何が入っているのか?

ラベルに記載する3W1Hとは,次の4つです.

  • What
  • When
  • Who
  • How many (much)

そして,”What” に相当するのが,この試薬ビン(チューブ)に入っているものは何?という内容です.

理想的なラベルでは,”Tris-HCl(pH 8.0)”と表記してあり,中身が何か分かりますね!

いつ作ったものなのか?

“When” に相当するのが,この試薬を作ったのはいつ?という内容です.

調整年月日を記載する理由は,2つあります.

① 期限がきれていないかの確認
② ロットの確認

① 期限がきれていないかの確認

試薬によっては,調整後に使用期限が生じるものがあります.

例えば,「溶解後は,4℃で保存すれば1か月,-30℃で保存すれば1年間」みたいな感じです.

ラベルに調整年月日を記載することで,期限切れとなった使用不可の試薬を過って使うリスクが低くなります.

② ロットの確認

基本的に,実験で使用する試薬は同一ロットの物を用意します.

なぜなら,試薬のロット差が実験結果に影響することがあるからです.

例えば,フローサイトメトリーで使用するタンデム蛍光色素やタンパク質分解酵素はロット差があることで有名です.

もちろん,ロット差の影響があまり無い試薬も存在します.

しかし,ロット差の影響が有る or 無しでラベルを変更する方が面倒なので,全部記載しましょう!

誰が作ったものなのか?

“Who” に相当するのが,この試薬を作ったのは誰?という内容です.

調整者の名前を記載する理由も2つあります.

① 所有者をハッキリさせる
② 所有者から試薬のグレードを推定する

所有者をハッキリさせる

年末や年度末の大掃除のときや試薬の棚卸のときを思い出してみてください.

所有者が不明の試薬ビンやチューブが出てきて,片付けに困ったことはありませんか?

まだ使う予定があるのか?

それとも廃棄し忘れているのか?

「分からないから,とりあえず置いておこう」と放置して数年から数十年も経過した例も聞いたことがあります.

これで問題になるのは,申告漏れです

当時は何も法規制が無かったが,現在は法規制のもと厳しく管理されている試薬がたくさんあります.

そのように途中から規制対象となった試薬に関しては,大学や事業所単位で関係省庁に報告する義務が生じるのですが…

「分からないから,とりあえず置いておこう」と放置された試薬は,その存在自体が忘れられてしまうことも多々あり,申告漏れの原因となります.

場合によっては,実験停止処分がくだることもある重大なミスですので,気を付けましょう!

所有者から試薬のグレードを推定する

あくまでもイメージの話です.

主にタンパク質の実験をする者が所有者の場合,その試薬のグレードもタンパク質実験に合わせた管理になっていると思いませんか?

主にRNAの実験をする者が所有者の場合,その試薬は,RNase-free(Nuclease free)だと思いませんか?

要確認ですが,例えば,ちょっと試薬をもらいたい時に目星を付ける方法としてはアリではないでしょうか?

どのくらいの量(濃度)なのか?

“How many(much)” に相当するのが,どのくらいの濃度か?という内容です.

試薬名だけが書いてあり,濃度が未記載の物も結構な頻度で見かけます.

濃度は,実験の条件を決める重要な因子ですから,必ず書くようにしましょう!

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小さいチューブのラベルは?

ココまでの理想的なラベルは,試薬ビンや遠心管にラベルすることを想定していました.

では,1.5 mLチューブなどの小さいチューブのラベルはどうすれば良いのでしょうか?

1.5 mLチューブであっても,3W1Hを書くことができる人はいます!

でも,そんな器用な人は稀だと思うので,今度は,1.5 mLチューブ用のラベルの話をします.

先ず,理想的なラベルをお見せします.

フタに書くのは検体名

1.5 mLチューブのフタは狭いです.

3W1Hを書くことができる器用な人を除き,フタに書くのは検体名だけで大丈夫です.

(欲を言えば,サンプルID通し番号は書きたい…)

脇に詳細な情報を貼る

チューブの脇には,ラベルのスペースが設けられている商品が多いです.

しかし,ココに直接マジックで情報を書くことはオススメしません

なぜなら,有機溶媒を使用している実験では,知らぬ間に消してしまうことがあるからです.

耐油性ペンなら大丈夫ですが,耐油性ペンもピンキリがあります.

「耐油性ペン」と言いながら,有機溶媒で消えてしまうペンもありますので…

だから,私は,ラベルライターを使ってラベルを作成し,それを貼っています

長さを3.7 – 4.0 cmと長めにしたのは,周回して端っこどうしを重ねたいからです.

両端を重ねることで,凍結保存しても剥がれにくくなります.

3W1Hは箱に書く

1.5 mLチューブ自体に3W1Hを書くことは可能ですが大変です.

そこで,私がオススメするのは,そのチューブをしまう箱に書く(貼る)ことです.

1.5 mLチューブには書いていない “What” と “Who” の情報を書き(貼り),その中に個々のチューブをしまえばバッチリですね.

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以上,3W1Hを意識した試薬ラベル作りでした.

最後までお付き合いいただきありがとうございました.

次回もよろしくお願いいたします.

2020年3月27日 フール

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