検査方法の一致度を確認する方法【実験データの具体的な解析方法】

Excelでκ係数の算出
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検査方法の一致度を確認する方法【実験データの具体的な解析方法】

 

検査Aと検査Bの結果が一致するのかどうかを調べたいんだけど,どうすれば良いのかな?

本記事は,このような疑問にお答えします.

 

こんにちは.

博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事しているフールです.

理屈や原理よりも実際にどういう入力・操作をするのかを知りたい!

そんな方に向けて,実験データの具体的な解析方法の記事をまとめています.

本記事も2×2の分割表の活用です.

同じサンプルを異なる検査方法で測定した際に,結果の一致度はどのくらいなのか?

例えば,PCRである病原体の遺伝子を検出する時,プライマーAとプライマーBでは結果が同じなのでしょうか?

あなたは,気になったことはありませんか?

結果の一致度は,実験方法(検査方法)の客観性を担保するために非常に大切な指標です.

この記事では,検査Aと検査Bの結果が一致するのかどうかを調べ方法をまとめます.

本記事を読み終えると,異なる検査法の結果の一致度を解析することができるようになりますよ!

 

サマリー・異なる検査法の結果の一致度は,κ係数で判定しましょう!

異なるプライマーセットの比較

本日も架空のデータを作りました.

ウイルスゲノムの検出を行うPCR検査を考えてみましょう!

あるウイルスの遺伝子を検出するPCRの検査キットが2種類あるとします.

どちらもウイルスに特異的なプライマーを使用していますが,プライマーがアニーリングする位置が異なります.

2種類のプライマーセット

このプライマーセットを使って,30サンプルの検査を行いました.

それぞれの検査結果は次の通りです.

プライマーA
陽性陰性
プライマーB陽性15621
陰性369
181230

さて,プライマーAとBの結果はどのくらい一致しているのでしょうか?

解析を行う前に考えること

解析を行う前に考えることが2つありました!

  • データ間に対応はあるのか?
  • 期待値はいくつか?

データ間の対応

今回は,検査方法を比較するために,同一サンプルを2つの方法で測定しています.

この場合は項目(カテゴリー)が同じなので,対応があります

期待値(期待度数)

気になる方は,Excelで計算してみてください!

ただ,今回は対応があるデータなので,期待値の計算は要りません(笑).

名義変数の検定マクネマー法カイ二乗検定Fisherの直接検定
データの特徴名義変数名義変数名義変数
データの種類2種類2種類2種類
データ間の対応有り無し無し
期待値>5<5
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マクネマー法の実施

マクネマー法(マクネマーのカイ二乗検定)の検定手順は次の通りです.

  1. 設問:プライマーAとプライマーBの検査結果を比較する.
  2. 帰無仮説:プライマーAとプライマーBの検査結果は一致する.
  3. 対立仮説:プライマーAとプライマーBの検査結果は一致しない(どちらかのプライマーセットは陽性または陰性を出しやすい).
  4. データを集める.
  5. 帰無仮説が正しい確率pを算出する.
  6. 確率pと有意水準αを比べる.
  7. 結論を考える.

Excelにはカイ二乗分布の確率を求める関数式がありますが,マクネマー法には対応していないので,計算式を入力する必要があります.

Excelでマクネマーのカイ二乗検定

確率pは0.505でした.

ただし,この値は片側検定の確率です.

今回は,対立仮説が「どちらかのプライマーセットは陽性または陰性を出しやすい」なので両側検定を行う必要があります

よって,確率pの値を2倍にする必要があります.

両側検定に対応した確率pは,0.11ですね.

これは有意水準(α=0.05)よりも大きいですね!

これは有意水準5%で帰無仮説を棄却することができません.

よって,「どちらかのプライマーセットは陽性または陰性を出しやすい」と言うことができません!

κ係数

慣れない操作で疲れた方もいるかもしれませんが,本記事はもう少し続きます!

もうしばらくお付き合いくださいませ.

さきほどのマクネマー法では,2つの検査方法に統計的な差が無いことはわかりました.

でも,2つの検査方法の結果が一致しているのかどうか分かりません

これから結果の一致度を調べるκ(カッパ)係数を算出していきます!

Excelで次のように入力してください.

Excelでκ係数の算出

κ係数の判定は,解析者にもよりますが,4段階で判定します.

  • <0.4:一致率は低い
  • 0.4~0.5:一致率は中程度
  • 0.5~0.6:一致率は高い
  • >0.6:一致率は非常に高い

今回はκ係数が0.348で,0.4未満でした.

よって,2つの検査方法の結果の一致度は良くないと結論できます.

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もっと勉強したい方へ

  • 疫学マニュアル

疫学の基礎から応用までまとめた教科書です.

公衆衛生関係者や医療関係者向けで,初学者には難解かもしれません.

  • 医統計テキスト

医療関係者向けの生物統計学の教科書です.

少し古いですが,例題も多く,また数学が嫌いな人でも読み進めることができると思います.

  • バイオサイエンスの統計学

自然科学で使うことが多い検定法を解説している本です.

こちらも少し古いですが,誤った解析例も載っているため検定の正しい使い方を学べます.


検査方法の一致度を調べる方法まとめてみました.

いかがでしたか?

今回は異なる検査方法が例でしたが,異なる検査者(異なる機関)による比較も同じやり方で解析可能ですよ!

最後までお付き合いいただきありがとうございました.

次回もよろしくお願いいたします.

2021年3月21日 フール