ウェスタンブロットのバンドが消えた【WBの失敗】

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バンドが白く抜けてる

バンドが白く抜けてる…どうして消えてるのかな?

本記事は,このような「なぜ?どうして?」にお答えします.

 

こんにちは.

博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事しているフールです.

WB の検出ステップで,「バンドが消えた」経験はありませんか?

・最初はバンドが見えていたのに,気付いたら消えていた
・黒いバンドではなく、白いバンドが見える
・バンドの縁だけが黒く,中身は白い

本記事では,その「消えたバンド」のトラブルシューティングをご紹介します.

サマリー・化学発光法(Chemiluminescence)でみられる現象です.

・正確には「消えている」では無く「消光している」と表現します.

・サンプル中に含まれる標的タンパク質が多過ぎる場合に起こります.

本日の課題

あなたは,以下の実験結果をどのように解釈しますか?

そして,どのようなトラブルシューティングが必要だと思いますか?

WBのバンドが消えた

図3 WBによるタンパク質zz*の検出
S:サイズマーカー
レーン1-6:サンプル(培養細胞のライセート)
レーン7:ポジティブコントロール(zz発現細胞のライセート)
レーン8:ネガティブコントロール(zzが非発現細胞のライセート)
1次抗体:抗zzマウスモノクローナル抗体
2次抗体:抗マウス‐HRP標識抗体
検出方法:化学発光法(Chemiluminescence)

*目的タンパク質zzのサイズは,75 kDa である.

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ウェスタンブロットのバンドが消えた理由

皆さん,以下の流れは大丈夫ですか?

・サイズマーカーの確認
・ポジティブコントロールの確認
・ネガティブコントロールの確認
・ポジティブコントロールのバンドとサンプルのバンドの比較

WBのバンドが白くなった

ウェスタンブロットのバンドが消えた

詳細な解説は,割愛しますね.

確認したい方は,以下の記事をご確認ください.

ウェスタンブロットの結果の見方【実験データの見方】
ウェスタンブロット(WB)は,電気泳動から検出まで複数のステップからなる実験手法です.手間と時間をかけて得たデータを無駄にしないために,結果の見方や解釈の仕方のコツをご紹介します.

消えたバンド

それでは本題に行きましょう! 消えたバンドです.

バンドの白抜け

Lane 5のように「バンドが全く見えない」ということではなく,バンドの縁が残っている感じですね.

そこにバンドがあるのだろうけど「バンド」として認識できない,もどかしい結果ですね.

原因は?

これは,化学発光法(Chemiluminescence)でみられる現象で,正確には「消えている」では無く「消光している」と表現します.

化学発光法では、酵素-基質の反応中に生じる光を検出しています.私たちは,機器が検出したその光を見て「バンド」と認識しているのです.

消光は,サンプル中に含まれる標的タンパク質(今回ならzz)が多過ぎる場合に起こります.

zzが多いので,1次抗体が多く結合する.

1次抗体量に比例して,2次抗体も多く結合する.

そのバンドには多くの酵素(HRP)が存在する.

酵素が多い場所では,基質の消費が早いです.先ほど「酵素-基質の反応中 に生じる光を検出している」とお話しました.基質が消費されて反応が終了すると光の発生も終了します.だから,消えた様に見えるんですね.

トラブルシューティング

私は,以下のトラブルシューティングを提案します.

・電気泳動で使用するサンプル4と6 の濃度を低くする.
・ウェルにアプライする量を少なくする.

これによりサンプル中に含まれる標的タンパク質を減らすことができ,最終的に結合する HRP 標識2次抗体の量も減ります.

サンプルを希釈する時は,溶媒(ライセート作製時に使用したバッファー) を使いましょう.ウェルに余裕があるのであれば,2倍・4倍・8倍希釈の3点くらいを用意すると良いでしょう.

最後に私が未熟者だった頃の話です.

私もこの「消えるバンド」を経験しました.

キレイなバンドが検出されたので,結果を報告するために先生を呼びにいきました.

その画像を保存することなく.

先生を連れて戻ってくると,既にバンドは消えていたのです(笑).

もちろん、先生は「バンド、無いね.どこにあるの、バンド?」という追撃を用意してました.

当時は,まだまだ駆け出しでした.

原理など何も理解していなかったので,「なぜ?」と不思議に感じながら色々な本を読んだのが良い思い出です.

最後までお付き合いいただきありがとうございました.

次回もよろしくお願いいたします.

2019年11月6日 フール

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