実験室で行う滅菌方法の使い分け【超まとめ】(1)

滅菌方法の使い分け
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実験室で行う滅菌方法の使い分け【超まとめ】(1)

 

滅菌ってなに?

そもそも滅菌ってなに?

本記事は,このような「なぜ?どうして?」にお答えします.

 

こんにちは.

博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事しているフールです.

先ずは,以下のやり取りをご覧ください.

 

来週の実験で使用する器具と試薬の準備は出来ていますか?

 

ハイ!

 

滅菌

ちゃんと滅菌もしましたか?

 

ハイ!全部オートクレーブをかけたので大丈夫です!

 

えっ!? 全部!?

 

滅菌

滅菌=オートクレーブですよね?

 

・・・

 

ひとえに「滅菌する」と言っても,火炎滅菌,乾熱滅菌,高圧蒸気滅菌,濾過滅菌,放射線滅菌,紫外線滅菌,ガス滅菌の方法があります.

実験者は,各々の原理と特徴を知り滅菌方法を使い分ける必要があります

そこで,これから3回に分けて,用語および各々の滅菌方法についてまとめます.

 

サマリー・「滅菌」とは,全ての微生物を殺滅または除去すること.

・殺菌,消毒,静菌,除菌,抗菌,抗カビは似ているけど,意味は全部違う.

滅菌とそれに類似する用語の整理

そもそも滅菌とは何でしょうか?

似た用語に殺菌・消毒・静菌・除菌・抗菌・抗カビがありますが,これらと滅菌はどう違うのでしょうか?

せっかくなので,先ずは用語の定義の確認からしていきましょう!

滅菌

病原性の有無に関わらず,全ての微生物を殺滅または除去することを「滅菌」と言います.

だから,対象物が滅菌された状態を無菌状態と言います.

また無菌性保証レベル(Sterility assurance level [SAL])という概念があります.

医薬品や医療器具などでは,滅菌処理により全ての微生物を除去したこと保証する必要があります.

そこで日本薬局方*1では,SAL≦10-6(滅菌処理後,対象物に微生物が生存する確率が100万分1以下)という基準を採用しています.

*1法律(薬機法)に基づいて,厚生労働大臣が定めた医薬品の規格基準書です.

殺菌

特定の病原細菌など一部の細菌を殺して不活化することを指す用語です.

滅菌のSAL≦10-6に相当する指標は存在しません

そのため,殺菌処理後でも細菌が存在する可能性を含んでいます

「殺菌」という言葉を商品等でむやみやたらに使用することができません.薬機法は「殺菌」という用語を使用できる製品を医薬品と医薬部外品のみに限定しています.

消毒

ヒトまたは家畜に対して病原性のある微生物(および目的とする対象微生物だけ)を,その病原性が発現されないレベルまで減少させることを指す用語です.

よって,非病原性微生物の生存(または混入)は問題としていません

手指や動物舎などの滅菌できない対象物の安全性確保を目的としています.

Disinfection vs. Antisepsis
どちらも日本語訳は「消毒」です.何が違うと思いますか? 実は,消毒する対象が違います.器具など物の消毒では"Disinfection" を,体表の消毒では "Antisepsis" を使います.

静菌

細菌の増殖性を抑制し,細菌の生存を許容する用語です.

細菌を殺すことは指しません.

「殺菌」の対語と言えるでしょう.

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除菌

明確な定義は存在しない用語*2なので,この用語の使用には注意が必要です.

一般的な認識は,「微生物の活性による悪影響を被ることが無い程度に,対象物から微生物の大部分を取り除くこと」です.

*2合成洗剤または石鹸に関しては,定義と基準が存在します.詳細は,日本石鹸洗剤工業会が作成した「家庭用合成洗剤および家庭用石鹸の表示に関する公正競争規約」をご覧ください.

抗菌

日本工業規格(Japanese industrial standards [JIS])が定義した用語*3で,製品の表面における細菌の増殖を抑制する状態を指します.

全ての細菌が対象ではありません.

また真菌類は含みません.

業界団体によって「抗菌効果がある」とされた製品には,「SEKマーク」または「SIAAマーク」が付いています.

抗菌効果を謳う靴下やまな板などをお求めの際は,マークを探してみてください.

*3JIS Z2801

抗カビ

JISが定義した用語*4で,製品の表面におけるかび胞子の発芽・発育活性を抑制する状態を指す用語です.

全ての真菌が対象ではありません.

また細菌類は含みません.

抗菌と同じく,業界団体によって「抗カビ効果がある」とされた製品には,「SEKマーク」または「SIAAマーク」が付いています.

*4JIS R 1705

 

今回はこの辺りで終わりにしましょう.

いかがでしたか?

メディアや商品情報を通じて,日常生活では何気なく使用している用語ですが,実は全部違う言葉であるということが分かって頂ければ幸いです.

次回は,火炎滅菌,乾熱滅菌,高圧蒸気滅菌,濾過滅菌を説明します.

最後までお付き合いいただきありがとうございました.

次回もよろしくお願いします.

2019年11月17日 フール