緩衝液(バッファー)について考える【バッファー総論】
みんな「バッファーに溶かして」とか言うけど,そもそもバッファーって何ですか?
本記事は,このような「なぜ?どうして?」にお答えします.
こんにちは.
博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事しているフールです.
PBS,TAE,TBE,TE,MOPS,MES,HEPES,etc.
これらは私が実験でよく使う緩衝液(バッファー)です.
実験では色々なバッファーを使います.
今でこそ濃縮された既製品を購入していますが,昔は1つ1つ作製していました.
あれは大変だったな~.
pHメーターとにらめっこした日々が懐かしい.
ところで,皆さんの実験室には,どんなバッファーがありますか?
普段使用しているバッファーの特徴を説明できますか?
バッファーの使い分けは大丈夫でしょうか?
「先生や先輩に言われたから」という理由で,何となく使っていませんか?
昔は,勉強して理解しなければダメだったことが多かったですよね.
今は,技術の発達によってその勉強をスキップできる時代となりました.
これが吉とでるか凶とでるかは分かりませんが(笑).
バッファーもその1つだと思います.
この連載では,勉強しなくても使えるけど,知っておいた方が楽しいバッファーについてまとめます.
本記事は,バッファーの役割とバッファーの略称についてです.
サマリー・緩衝液は,pHを目的の範囲内に維持する能力がある液体です.
バッファー(Buffer)とは?
バッファーは,溶液中のpHを目的の範囲内に維持する能力がある液体です.
目的のpHの範囲により使用するバッファーの種類を変える必要があります.
目的のpHの範囲内って?
例えば,ある動物の酵素Aの活性を調べるとします.
反応自体は試験管内で行いますが,酵素Aは厄介なタンパク質で,生体に近い条件を再現しないとその活性を発現しません.
この「生体に近い条件」の一つにpHがあります.
酵素活性を調べるために,試験管内で色々な試薬を混ぜて反応溶液を作ります.
しかし,一部の試薬は酸性だったり塩基性だったりするわけです.
よって,全ての試薬を混ぜると,そのpHは生理的な範囲をズレている可能性があります.
そこで反応溶液のpHが生体のそれと等しい状態に維持されるように緩衝液(バッファー)を使うのです.
バッファーの略称
よく使うバッファーには略称が使われます.
例えば,冒頭でご紹介したTAE,TBE,TEなどは定番です.
ティーエーイー,ティービーイー,ティーイーと言うだけで何のバッファーなのか通じてしまうくらい有名です.
よく使うバッファーに関しては,その略号も知っておいた方は良いでしょう.
参考までにTAE,TBE,TEは以下の通りです.
TAE
TAE: 40 mM Tris/Acetate (pH 7.8), 1 mM EDTA
TBE
TBE: 89 mM Tris/Borate (pH 8.3), 2 mM EDTA
TE
TE*: 10 mM Tris/HCl (pH 8.0), 1 mM EDTA
*組成濃度を含めた方法で表記(T10E1)することもあります
今日は初回なので,情報量は少なめにしました.
ウソです(笑).
これを書いている私が睡魔に負けそうってのが本当の理由です .
次回以降,様々な緩衝液の特徴と使い方を説明してこうと思います.
最後までお付き合いいただきありがとうございました.
次回もよろしくお願いいたします.
2019年12月4日 フール