PCRの結果の見方【実験データの見方】

PCR法の結果の見方を解説します
この記事は約5分で読めます。

PCRの結果の見方【実験データの見方】

 

結果の見方が分からない

 PCR 法のやり方は分かったけど,結果の見方が分からない…

本記事は,このような「なぜ?どうして?」にお答えします.

 

こんにちは.

博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事しているフールです.

 PCR 法は, DNA をサンプルとした遺伝子検査の1つです

特定の DNA 断片だけを選択的に増やすことができる遺伝子増幅法で,高感度の検出を短時間で行うことができます.

新型コロナウイルスの検査の話で,耳にしたことがあるという人は多いと思います.

本記事では, PCR 法のデータの見方をまとめました.

どのようなデータが成功したもので,どのようなデータが失敗したものなのでしょうか?

WBのそれと似ている点はありますが,先ずは,実験データの解釈の仕方を学んでいきましょう.

 

サマリー・最初にサイズマーカーのレーンを見る.

・次に,ポジティブコントロールとネガティブコントロールを確認する.

・最後に,サンプルのバンドとポジティブコントロールのバンドを比較する.

PCRの結果の見方

あなたは以下の実験結果をどのように解釈しますか?

そして,どのようなトラブルシューティングが必要だと思いますか?

PCRの結果の見方

図1 PCRによる遺伝子 x* の検出
S:サイズマーカー
レーン 1 - 6:サンプル( RNA を逆転写した cDNA )*
レーン 7:ポジティブコントロール(遺伝子 x を持った組換えプラスミド)*
レーン 8:ネガティブコントロール(遺伝子 x を持たない組換えプラスミド)*
ゲル:1.5% アガロースゲル in TAE
泳動:100 V, 25 分間
染色: EtBr の後染め

*目的遺伝子 x のサイズは,約 1500 bp である.

*培養細胞から抽出したトータル RNA 500 ng をインプットとして cDNA 合成を行い,PCR 検査には,25 ngの cDNA を使用した.

*PCR 検査では,25 ng のプラスミドを使用した.

スポンサーリンク

フールの解説

全部で 5 つのステップがあります.

1 つずつ確認していきましょう.

①初めに見る所のは,サイズマーカーのレーン

PCRの結果を確認する
全てのサイズマーカーがキレイに泳動されていますね.

ココから,増幅された PCR 産物も同様に泳動されていると考えることができます.

②ポジティブコントロールと③ネガティブコントロールを確認

PCRの結果でPCをチェックする
②ポジティブコントロールのバンドが,予想される位置(図1の*を参照)にキレイに検出できています.

これは,本実験のプロトコールが正常にワークしていることを示しています.

③ネガティブコントロールレーンには,何も出ていません.

これは,プライマーの非特異的な結合による増幅やクロスコンタミネーションが無いという意味であり,本実験の結果が正確であることを示しています.

④サンプルとポジティブコントロールを比較

レーン 1 – 6 で確認できたバンドの位置を,ポジティブコントロールのバンドの位置と比較します.
PCRの結果を比較する
サンプルレーンのバンドとポジティブコントロールのバンドの位置が同じですね.

②③④より,サンプル 1 – 4, 6 では遺伝子xが転写されていたと解釈することができます.

⑤バンドが見えないサンプルの解釈の仕方

サンプル 5 に関してはどうでしょうか?

遺伝子xは転写されていなかったと言えるでしょうか?

PCRでバンドがでない
サンプル 5 に関しては, 3 つの解釈ができます.

・遺伝子 x が転写されていなかった 
・遺伝子 x の転写量が少なく,その cDNA 量も少なかったので,バンドとして検出できなかった(検出限界以下だった)
・抽出した RNA に不純物が混入しており, RNA が分解していたまたは cDNA 合成が上手くできなかったので, PCR 法も上手くいかなかった.
スポンサーリンク

トラブルシューティング

私は,トラブルシューティングとして,以下の2点を提案します.

RNA抽出に用いた細胞の数を確認

1点目は,サンプル 5 の RNA 抽出時に用いた細胞数を確認です.

 1 細胞あたりの転写量は同じであるという仮定の下,細胞数が少なかったから全体の転写量も少なかったという可能性は否定する必要があります.

核酸抽出方法にもよりますが, 2.0×105 ~ 5.0×106 cells の細胞ペレットを使用することが多いです.

Nano-dropのデータを確認

2点目は, nano-drop のデータを確認です.

抽出した RNA の濃度はどれくらいでしたか?

濃度が異常に低い場合,RNA 抽出そのものが上手くいっていない可能性や RNA が分解している可能性があります.

特に後者に関して, RNA は非常に不安定な物質なので,取扱いには注意が必要です.

以下の記事も参考になると思います.

サンプルや試薬の保存方法【超まとめ】
サンプルや試薬の保存,ちゃんとできていますか?なぜ,その保存方法なのかを説明できますか?保存条件の特徴を知ることは,実験の再現性を担保する上で非常に大切です.

波形データに異常はありませんでしたか?

抽出に使用した試薬が RNA に残存すると波形データが変です.

波形データの見方は,以下の記事にまとめました.

ナノドロップの波形データの見方【実験データの見方】
ナノドロップで核酸またはタンパク質の濃度を確認する人は多いとおもいます.ただ,数値だけを鵜呑みにしていては不十分です.出力される波形データは,濃度と同じくらい重要な情報を含んでいます.

残存した試薬は, cDNA 合成を阻害します.

インプットとした RNA 量が十分でも, cDNA 合成がうまくいかなければ, PCR もうまくいきません.

スポンサーリンク

本記事では,PCRのデータ解釈の基本的な流れを解説しました.

今後,いわゆる「失敗」や「トラブル」と表現される事例も取り上げていこうと思います.

最後までお付き合いいただき,ありがとうございました.

2020年3月1日 フール