【意外と知らない】血球計算盤の種類ごとの特徴と計算ミスを防ぐポイント

細胞カウントで使用する計算盤の形が違うんですけど,使い方は同じですか?
本記事は,このような「なぜ?どうして?」にお答えします.
本記事の内容・血球計算盤には少なくとも4種類がある.
・計算盤ごとに深さが異なるため,算出方法が異なる.
・数える対象の種類によって,見るエリアが異なる.

こんにちは.
博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事している元研究者のフールです.
皆さんは,細胞数をカウントするときに,どの計算盤を使っていますか?
実は最近,計算盤は1種類だと思っている人が多いことに気付きました.
現在は,ノイバウエル型(or ノイバウエル改良型)またはビルケルチュルク計算盤が主流だと思います.
この場合,使い方・数え方に大差はありません.
しかし,フックスローゼンタール計算盤を使っている所は要注意ですよ!

なぜなら,深さが異なるから!
この記事では,実験室で見かける血球計算盤の種類と計算方法の違いについてまとめます.
本記事を読み終えると,異なる計算盤に出くわしても,冷静に対応できるようになりますよ!
サマリー・少なくとも6種類の血球計算盤がある.
・フックスローゼンタール型は,深さが他の計算盤と異なり2倍であるため,計算方法も少し変わる.
・絶対数の多い or 少ないによって,カウントするエリアを変える計算盤がもある.
【意外と知らない】血球計算盤の種類と計算方法の違い
血球計算盤は1種類ではありません.
私が知っているかぎり,6種類の血球計算盤が存在します.
- トーマ型
- ノイバウエル型
- ノイバウエル改良型
- ビルケルチュルク型
- フックスローゼンタール型
- Malassez 型
この内,実験室でよく見かけるのは,ノイバウエル改良型またはビルケルチュルク型です.
次いで,トーマ型とフックスローゼンタール型です.

ちなみに,これはあくまでも私の主観です(笑).
根拠となるデータはありません!
本記事では,トーマ型・ノイバウエル改良型・ビルケルチュルク型・フックスローゼンタール型の4つの血球計算盤を見ていこうと思います.
トーマ型
トーマ(Thoma)の計算盤は,計算室が1つの単式計算盤です.
ー辺の長さが1mm の正方形で,これが各 20 等分され 400 個の小さな正方形(マス)に区分されています.
計算室の深さは,カバーグラスを載せた状態で0.1 mmとなります.

よって,総容積は 0.1 μL(0.1 mm3)で,1マスの容積は 2.5×10-4(1/4000)μL です.
RBC・血小板・精子・酵母など絶対数が多い細胞の算定に使用します.
トーマの計算盤を使って細胞数をカウントする
- 任意の 5 か所を選びます(図の①~⑤のように対角線状に 5 か所を選ぶことが多いです).
- 3 本の線で区切られている 16 マスの中にある細胞を数えます(境界線上にある細胞は,相対する辺いずれか一方の線上にある物だけを数えます).
- 同様に,残りの 4 か所も数えます(左上のマスから数えはじめ,矢印の順序に従い 16 マスをカウントすると数えやすいですよ).
- 5 か所(80マス)内にある細胞の和を a ・細胞液の希釈倍率を b とすると,0.1 μL(0.1 mm3)中の細胞数 A は,以下の式で算出できます.
A* = a × 400/80 × b = 5ab(*A を 10000 倍すると 1 mL 中の細胞数になります)
ノイバウエル改良型
ノイバウエル改良型(Impmved Neubauer; [I.N.])計算盤は,2つの計算室を持っています.
ー辺の長さが3mm の正方形で,これが三等分されて 1 mm × 1 mm の9個の大ブロックに区分されています.
計算室の深さは,カバーグラスを載せた状態で0.1 mmとなります.

よって,総容積は 0.9 μL(0.9 mm3)で,1マスの容積は 0.1 μL です.
中央のブロック R は,おもに赤血球・血小板・精子・酵母など絶対数の多い場合の算定に使用します.
四隅の大ブロック r1 ~ r4 は,白血球・リンパ球・培養細胞など絶対数の少ない場合の算定に使用します.
ノイバウエル改良型の計算盤を使って細胞数をカウントする
中央の大ブロックを使う場合と四隅の大ブロックを使う場合では,計算式は変わります.
中央の大ブロックを使う場合
- 任意の 5 か所を選びます(図の①~⑤のように対角線状に 5 か所を選ぶことが多いです).
- 16マスの中にある細胞を数えます(境界線上にある細胞は,相対する辺いずれか一方の線上にある物だけを数えます).
- 同様に,残りの 4 か所も数えます(トーマの計算盤と同じく,左上のマスから数えはじめるとやりやすいですよ).
- 5 か所(80マス)内にある細胞の和を a ・細胞液の希釈倍率を b とすると,0.1 μL(0.1 mm3)中の細胞数 A は,以下の式で算出できます.
A* = a × 400/80 × b = 5ab(*A を 10000 倍すると 1 mL 中の細胞数になります)
四隅の大ブロックを使う場合
- 四隅の大ブロック r1 の中にある細胞をカウントします(境界線上にある細胞は,相対する辺いずれか一方の線上にある物だけを数えます).
- 同様に,残りの r2 ~ r4 も数えます.
- 4 か所にある細胞の和を a ・細胞液の希釈倍率を b とすると,0.1 μL(0.1 mm3)中の細胞数 A は,以下の式で算出できます.
A* = a /4 × b = 0.25ab(*A を 10000 倍すると 1 mL 中の細胞数になります.)
ビルケルチュルク型
ビルケルチュルク(Bürker-Türk)計算盤も,2つの計算室を持っています.
ー辺の長さが3mm の正方形で,これが三等分されて 1 mm × 1 mm の9個の大ブロックに区分されています.
計算室の深さは,カバ一グラスをセッ卜すると0.1(1/10)mmとなります.

よって,総容積は 0.9 μL(0.9 mm3)で,1マスの容積は 0.1 μL です.
ノイバウエル改良型と同じで,中央の大ブロックR は,赤血球・血小板・精子・酵母など絶対数の多い場合の算定に使用します.
四隅の大ブロック r1 ~ r4 は,白血球・リンパ球・培養細胞など絶対数の少ない場合の算定に使用します.
R の切り込み方法が違うことを除けば,ノイバウエル改良型と同じです.
ビルケルチュルクの計算盤を使って細胞数をカウントする

計算方法は,ノイバウエル改良型と同じです.
フックスローゼンタール型
フックスローゼンタ一ル(Fuchs-Rosenthal)計算盤は,トーマの計算盤と同じく単式計算盤です.
一辺の長さが 4.0 mm の正方形で,これが4等分されて 1 mm × 1 mmの 16 個の大ブロック(大正方形)に区分されています.
大ブロックはさらに4等分されて,16 個のマス(小正方形)に分かれています.
計算室の深さは,カバーグラスを載せた状態で 0.2 mm となります.

よって,大ブロックの容積は 0.2 μL,1マスの容積は 1.25×10-2(1/80)μL です.
総容積はノイバウエル改良型やビルケルチュルク型の約4倍の容量(3.2 μL)となっています.
これは絶対数の少ない細胞の算定精度を高めるためです.
つまり,この計算盤は白血球・培養細胞・脳脊髄液中の細胞など分布密度の低い細胞数の算定に適しています.
フックスローゼンタールの計算盤を使って細胞数をカウントする
任意の 4 つの大ブロックを使用した算定法と全ての大ブロックを使用した算定法があります.
任意の 4 つの大ブロックを使用した算定法
- 任意の 4 か所を選びます(図の①~④のように対角線状に 4 か所を選ぶことが多いです).
- 16マスの中にある細胞を数えます(境界線上にある細胞は,相対する辺いずれか一方の線上にある物だけを数えます).
- 同様に,残りの 3 か所も数えます(トーマの計算盤と同じく,左上のマスから数えはじめるとやりやすいですよ).
- 4 か所にある細胞の和を a ・細胞液の希釈倍率を b とすると,0.2 μL(0.2 mm3)中の細胞数 A は,以下の式で算出できます.
A* = a /4 × b = 0.25ab(*A を 5000 倍すると 1 mL 中の細胞数になります.)
全ての大ブロックを使用した算定法
- ブロックの中にある細胞をカウントします(境界線上にある細胞は,相対する辺いずれか一方の線上にある物だけを数えます).
- 同様に,残りの 15 ブロックも数えます.
- 16 か所にある細胞の和を a ・細胞液の希釈倍率を b とすると,0.2 μL(0.2 mm3)中の細胞数 A は,以下の式で算出できます.
A* = a /16 × b = 0.0625ab(*A を 5000 倍すると 1 mL 中の細胞数になります)
以上,血球計算盤の種類と計算方法の違いでした.
最後までお付き合いいただきありがとうございました.
次回もよろしくお願いいたします.
2021年10月30日 フール