ラテックスグローブとかニトリルグローブとか,ラボ用の手袋って色々あり過ぎ…どう使い分けるの?
本記事は,このような「なぜ?どうして?」にお答えします.
こんにちは.
博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事しているフールです.
皆さんは,実験室でどのような手袋を使ってますか?
ラテックスグローブ?
それともニトリルグローブ?
もしかして,布手袋?(笑).
使いやすいモノを使うのがベストですが…
実は,触れる対象や実験内容によっては,手袋の選択が重要だったりします.
この記事では,実験室で使う手袋の種類とその使い分けをまとめました!
本記事を読み終えると,手袋の選択理由が「使いやすい」だけじゃなくなりますよ!
サマリー・実験室で使う手袋は,手袋の素材で使い分けましょう!
・ラテックスアレルギーや塩素過敏症がある人は,手袋の素材に注意しましょう!
実験室で使う手袋の種類
実験室で使う手袋の種類には,以下の5種類があります.
① ラテックスグローブ ② ニトリルグローブ ③ PVCグローブ ④ PEグローブ ⑤ 布手袋
それぞれ何が違うのでしょうか?
1つずつ見ていきましょう!
ラテックスグローブ
ラテックス(天然ゴム)製の手袋です.
手や指の動きに馴染みやすく,さらに丈夫です.
長時間の作業にも最適ですね!
自治体や処理業者によっても異なりますが,ラテックスグローブは焼却処分ができます!
注意点
耐油性はありません.
ガソリンや灯油などは浸透してくるので,相性が悪いです.
一部の薬品(尿素,DMSO,クロロホルムなど)は浸透してきます.
扱う物質との相性を確認してください!
また,ラテックスアレルギーをお持ちの方は,使わないでください!
ニトリルグローブ
ニトリル(合成ゴム)製の手袋です.
ラテックスアレルギー対策の代替品として利用されています.
ラテックスグローブ同様に手や指の動きに馴染みやすく,また丈夫です.
長時間の作業も問題ありません!
注意点
耐油性はあります.
それでも,一部の薬品(メタノール,DMSO,クロロホルム,ケトン類など)は浸透してきます.
扱う物質との相性を確認してください!
ちなみに,ラテックスグローブよりも高価です.
自治体や処理業者によっても異なりますが,ニトリルグローブは焼却処分ができません!
PVCグローブ
プラスチック手袋またはビニール手袋などとも呼ばれるものです.
塩化ビニール(PVC)製の薄い手袋です.
比較的丈夫ですが,ラテックスグローブほど手や指の動きに馴染むことはありません.
だから,長時間の作業はオススメしません.
紫外線の透過率が比較的低いので,UVトランスイルミネーターを使ったゲルの切出しの時には重宝しますね!
また,耐油性にも優れているので,私はミクロトームのお手入れなど油を使う仕事で装着しています.
ちなみに,ラテックスグローブよりも安いですよ!
注意点
自治体や処理業者によっても異なりますが,PVCグローブは焼却処分ができません!
PEグローブ
ポリエチレン(PE)製の薄い手袋です.
手や指の動きに馴染むことはありませんし,破損もしやすいです.
でも,耐薬品性に優れています!
私は,腐食性があるもの(ハイターなど)やEtBrを含んだ液体を扱うときに着用しています.
ちなみに,ラテックスグローブよりも安いですよ!
自治体や処理業者によっても異なりますが,PEグローブは焼却処分ができます!
布手袋
超低温用の液体窒素専用手袋や軍手がコレにあたります!
実験室では,液体窒素を扱うときに超低温用手袋を使いますね!
また,60℃くらいに保った寒天培地を持つときや冷凍庫の霜取りをするときなどは軍手が重宝しますね!
軍手と液体窒素は相性が悪い
よく勘違いしている人を見かけるのですが,液体窒素を扱うときに軍手は厳禁ですよ!
液体窒素が直接手に付着しないようにする方が良いでしょ!
と思った方,実は逆なんです!
液体窒素は非常に気化しやすい液体なので,ほとんどが皮膚に接触する直前に気化してしまいます(もちろん,「少量の場合」ですけどね).
触れた直後はビックリすると思いますが,特に問題はありません.
一方,この時に軍手を装着していると,軍手自体が液体窒素を吸収して凍結します.
そして,軍手に接触している皮膚は,長期間低温に暴露されることになるので低温ヤケドの原因となります!
液体窒素を扱うときは,超低温用の液体窒素専用手袋をはめましょう!
パウダーの有無
手袋の内側に粉(パウダー)が付いたモノと付いていないモノがありますね!
パウダーは,手袋の着脱をスムーズにするためのものです.
しかし,人によっては痒み等を生じる原因なので,嫌いな人もいるでしょう.
実は,私も嫌いです(笑).
加えて,実験室では別の問題があります.
パウダーの存在は,コンタミネーションのリスクを上げます.
パウダー自体が,不純物を運ぶキャリアとなり,サンプルのクロスコンタミネーションや細菌汚染の原因となります.
よって,実験室では,パウダーフリーのモノを使いましょう!
クロリネーション加工
パウダーフリーをオススメしましたが,着脱時にイライラするのは嫌ですよね(笑).
実は,パウダーフリーでも着脱をスムーズにするための加工が存在します!
それは,手袋を塩素に浸たす「クロリネーション加工」をしているタイプの手袋です.
塩素に浸たすことでゴムのベタつきを軽減しています.
ただ,これにも2つの問題があります.
- 塩素過敏症がある人は,赤み・はれ・痒みなどの症状が現れるかもしれません.
- 塩素を含んでいるので,廃棄物処理の手続きが面倒な場合があります.
手袋を外してから触ろう
グローブを着用したまま,ドアノブや内線電話に触れる人は多いです!
ヒドイ人は,スマホや髪をいじっている人も(笑).
「その手袋で何を触ったのかな~」って思いながら,いつも見ているのですが…
① 実験室の内外をつなぐドアノブは,手袋を外してから触りましょう! ② 実験室内の内線電話も,手袋を外してから触りましょう! ③ 実験室内でスマホや髪いじりは止めましょう!
理由は簡単です!
手袋に付着した物質(試薬類,細菌,ウイルスなど)に暴露される機会を作ってしまうから.
多くの物質は,目に見えません.
皆,そんな物質は付着していないと思っているはずです!
自ら,目や口に危険な(危険かもしれない)物質を近づける行為は,止めましょう!
以上,実験室で使う手袋の種類とその使い分けでした.
最後までお付き合いいただきありがとうございました.
次回もよろしくお願いいたします.
2020年5月23日 フール