値が倍々に変わるデータの解析方法【実験データの具体的な解析方法】

抗体価の対数変換のやり方
この記事は約13分で読めます。

抗体価のデータ解析をしたいんだけど,いつものやり方で大丈夫かな?

本記事は,このような「なぜ?どうして?」にお答えします.

この記事を書いた人
フール

元研究者で獣医師/博士(Ph.D.)/派遣社員の研究員や臨床獣医師を経験/研究職への復帰を考えているバイオブランク/学歴が「身分の指標」ではなく「職務能力・専門能力の指標」として機能することを願う者/DeSci(分散型科学)の勉強中

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本記事の内容・エクセルでデータの対数変換のやり方

・対数変換した値を真数に変換する方法

フールの登場

こんにちは.

博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事している元研究者のフールです.

理論や定義よりも実際にどんな操作をするのかを知りたい!

そういった方に向けて,実験データの具体的な解析方法の記事を書いています.

今回は抗体価の解析です.

抗体価は測定値が倍々に増加するデータの代表例ですね.

値は倍々に変化するので,データが正規分布することはありません.

だから,データの特徴を表現するときも算術平均値ではなく,中央値や最頻値,または幾何平均値を使います.

それでは95%信頼区間の算出異なる群間の比較はどうするのでしょうか?

この記事では,値が倍々に変わるデータの解析を抗体価を例にまとめます!

本記事を読み終えると,抗体価など値が倍々に変わるデータの解析もできるようになりますよ!

サマリー・値が倍々に変わるデータの解析では対数変換を行います.

・対数値の平均値など使って,95%信頼区間を算出します.

・対数変換した値のまま,T検定を行って異なる群間の比較を行います.

値が倍々に変わるデータの解析の方法

今回の題材は,大学院生時代に行った家禽(主に鶏)の血清調査で,ワクチンの効果を養鶏場AとBで比較するといった内容です.

全羽調査することができないので,無作為に抽出した15羽から血液を採取し,血清分離しました.

その血清中に含まれる中和抗体価を比較します.

ただ,実際の数値は使えないので,架空の数値を私が設定しました.

使用するデータは次の通りです.

養鶏場A 養鶏場B
Sample ID 抗体価 Sample ID 抗体価
001 40 016 160
002 80 017 320
003 320 018 2560
004 640 019 160
005 40 020 320
006 80 021 20
007 160 022 40
008 1280 023 160
009 80 024 320
010 160 025 20
011 80 026 40
012 160 027 640
013 640 028 640
014 1280 029 40
015 80 030 80

両群ともに,尖度・歪度が-1.5~1.5の範囲を超えており,正規分布を仮定できません

このようなデータには,算術平均値などを求める解析方法は適用できません.

そこで,これらの値を対数変換します

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データの対数変換のやり方

データの対数変換のやり方は,エクセルで簡単にできますよ!

抗体価の対数変換のやり方

養鶏場Bのデータに関しても同様に計算してみてください.

対数変換したデータの尖度・歪度は,-1.5~1.5の範囲内で正規分布を仮定できるようになりました

続いて,平均値95%信頼区間を算出していきましょう!

平均値や95%信頼区間の算出方法

こちらもエクセルで簡単にできますよ!

対数変換した値の平均値

養鶏場Bのデータに関しても同様に計算してみてください!

続いて,算出した値を真数に変換していきましょう!

幾何平均値などの算出方法

最後に求めた値を真数に変換します.

これもエクセルで簡単にできますよ!

自然対数を真数に変換する方法

これで養鶏場Aを代表する数値である幾何平均値*とその95%信頼区間が算出できました!

養鶏場Bのデータに関しても同様に計算してみてくださいね!

抗体価など極端に低い数値または高い数値が含まれるデータの解析では,その数値に平均値が引っ張られます

そのようなデータに対して算術平均値を求めると,データを代表する数値は得られません!

今回のように対数変換することで,そのようなミスを回避できますよ.

*幾何平均値だけの算出ならGEOMEAN関数を使えばもっと簡単です!

異なる群間の比較

それでは,養鶏場Aと養鶏場Bで中和抗体価に差はあるのでしょうか?

次はそれを比較していきますよ!

使用するのでは,対数変換したデータです.

養鶏場A 養鶏場B
3.69 5.08
4.38 5.77
5.77 7.85
6.46 5.08
3.69 5.77
4.38 3.00
5.08 3.69
7.15 5.08
4.38 5.77
5.08 3.00
4.38 3.69
5.08 6.46
6.46 6.46
7.15 3.69
4.38 4.38

両群とも対数変換したデータが正規分布すると仮定できています.

また,詳細は省略しますが,F検定で分散が等しいことも確認できました!

よって,実施する検定はStudentのT検定です!

ExcelでT.TEST関数を使ってみると…確率pは0.69で有意水準α(α=0.05)よりも大きいです.

帰無仮説を棄却できないので,両群の抗体価に有意な差があるとは言えません

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もっと勉強したい方へ

  • 4step エクセル統計

計算式の入力をすることなく,統計解析ができる本です.ツールとしての統計を求めている人には最適だと思います.

  • 医統計テキスト

医療関係者向けの生物統計学の教科書です.少し古いですが,例題も多く,また数学が嫌いな人でも読み進めることができると思います.

  • バイオサイエンスの統計学

自然科学で使うことが多い検定法を解説している本です.こちらも少し古いですが,誤った解析例も載っているため検定の正しい使い方を学べます.

今回は,値が倍々に変わるデータの解析方法をまとめました.

方法が重複する項目は割愛させていただき,文字のみとなる部分もでてきました.

詳細が分からない場合は,以前の記事をご参照ください!

最後までお付き合いいただきありがとうございました.

次回もよろしくお願いいたします.

2021年2月6日 フール

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