ゲル電気泳動の通電条件を理解する【理科の復習】

先生は定電流派で,先輩は定電圧派なんだけど…どう考えたら良いの?
本記事は,このような「なぜ?どうして?」にお答えします.
こんにちは.
博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事しているフールです.
先日,職場の同僚から「定電流・定電圧・定電力の設定はどのように決めてる?」という質問がありました.
私の回答は,以下の通りです.

電気泳動の通電条件は,各研究室の「ならわし」である.
半分は冗談,半分はホントです(笑).
定電流派と定電圧派がおりまして(笑),学生時代にどちらの方法を採用していたかで派閥が分かれているように感じます.
もちろん,ちゃんとした理屈は存在します.
私は,その理屈に沿って通電条件を決めています.
でも,それは絶対ではありません.
機器の故障や事故を除き,定電流・定電圧・定電力の設定が問題になることは少ないでしょう.
それでも,通電条件の考え方は知っておいても損はないと思います.
そこで,ゲル電気泳動の通電条件に関する記事を作成しました.
本記事では,中学理科の復習になってしまいますが,通電条件の理解に必要な用語や法則についてまとめました.
「そんなことは知っているよ!」という方,次の記事へお進みください.
ゲル電気泳動の通電条件を理解するために理科を復習
中学校(高校かも?)の理科の復習になりますが,似たような用語が多数でてくるので,一度まとめます.
テストは無いので,覚えなくても良いですよ.
忘れたらココに戻ってくるだけです(笑).
電圧(ボルト[V])
電圧とは,電流を流そうとする圧力のことです.
「電気が流れる=電子が移動している」のですが,この電子を移動させる圧力が電圧です.
ホースに水を流すときの水圧と似ていますね.
要は,電気を押し出す力です.
電流(アンペア[A])
電流とは,電気の流れる量のことです.
ホースに水を流すときで例えると,ホースの太さに相当しますね.
- ホースが太い=水路が広い=水量は多い
- ホースが細い=水路が狭い=水量は少ない
電力(ワット[W])
電力とは,単位時間あたりに実際に消費される電気エネルギーのことです.
電流と電圧の組み合わせで,消費される電気エネルギー量が変わります.
ホースに水を流すときで例えると,放水パターンに相当しますね.
抵抗(オーム[Ω])
抵抗とは,電流の流れにくさのことです.
ホースに水を流すときで例えると,ホース上にある障害物(重い物など)に相当します.
ゲル電気泳動では,ゲルの数・ゲルの厚さ・ゲルの網目構造・導電率の低いイオン(グリシンなど)の存在などが抵抗になります.
ジュール熱(ジュール[J])
ジュール熱とは,電流が流れるときに発生する熱のことです.
冬季によく使う電気ストーブや電気コタツが温かいのは,ジュール熱のお陰です.
オームの法則・ワットの公式・ジュールの法則
こちらも中学校(高校かも?)の理科の復習になりますが,ゲル電気泳動の通電条件を比較する上でオームの法則・ワットの公式・ジュールの法則の理解は避けられません.
オームの法則
V = A × Ω
・電流(A)が大きくなるほど,電圧(V)は大きくなる(比例の関係). ・抵抗(Ω)が大きくなるほど,電圧(V)は大きくなる(比例の関係).
ワットの公式
W = A × V
・電流(A)が大きくなるほど,電力(W)は大きくなる(比例の関係).
・電圧(V)が大きくなるほど,電力(W)は大きくなる(比例の関係).
ジュールの法則
J = A × V × s(時間)
・電流(A)が大きくなるほど,熱量(J)は大きくなる(比例の関係). ・電圧(V)が大きくなるほど,熱量(J)は大きくなる(比例の関係). ・時間(s)が長くなるほど,熱量(J)は大きくなる(比例の関係).
ワットの公式で置換すると…
J = W × s
・電力(W)が大きくなるほど,熱量(J)は大きくなる(比例の関係).
・時間(s)が長くなるほど,熱量(J)は大きくなる(比例の関係).
オームの法則を代入すると…
J = A × A × Ω × s = A2 × Ω × s
・電流(A)が大きくなるほど,熱量(J)は大きくなる(比例の関係).
・抵抗(Ω)が大きくなるほど,熱量(J)は大きくなる(比例の関係).
・時間(s)が長くなるほど,熱量(J)は大きくなる(比例の関係).
本記事は,理科の復習だけになってしまいました.
物足りなくてごめんなさい.
でも,定電圧・定電流・定電力を使い分けるには,この理解が必須なんです!

オームの法則・ワットの公式・ジュールの法則が何の役に立つの?
って思った方,その詳細は次の記事にまとめています!
最後までお付き合いいただきありがとうございました.
次回もよろしくお願いいたします.
2020年2月11日 フール