実験器具を完全マスター!初心者でもわかる正しい使い方と注意点

今さらなんですけど,実験器具の使い分けが知りたいです.
本記事は,このような方にオススメです!

こんにちは.
博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事している元研究者のフールです.
実験室には色々な器具がありますね.
そして,その用途や使い方もそれぞれです.
でも,見た目や感覚でなんとなく使ってはダメですよ!
器具の用途を知らずに誤った使い方をすれば,実験を正確に行えません.
場合によっては事故やケガの原因にもなります.
新人の方も,新人を指導する立場の方も,この機会に「実験器具の使い分け」を勉強しましょう!
本記事を読み終えると,実験器具の用途を理解でき,使い分けもできるようになりますよ.
サマリー・実験室には,ガラス製の器具がたくさんあります.壊さないようにしましょう!
・実験器具の用途を理解して,正しく使いましょう!
ガラス器具の使い分け
ディスポーザブルな実験器具も増えてきましたが,ガラス製の実験器具はまだまだ多く残っています.
- ビーカー
- コニカルビーカー
- 三角フラスコ
- 試験管
- メスシリンダー
- メスフラスコ
- ホールピペット
- メスピペット
- 駒込ピペット
- パスツールピペット
これらの用途を一緒に確認していきましょう!
ビーカー
実験室でよく見かけるガラス器具ですね!
液体や粉末を一時的に保持・混合・加熱するために使います.
精密な化学反応には使用しません!
密閉性がないため、揮発性物質の使用や危険な反応には不向きですよ.
化学反応を行う容器としては不適なので,適切な反応容器(フラスコなど)の使用を検討してください.
よくある事故は,物質の混合でガラス棒を使うときにビーカーを割るというものです.
ビーカーは外側から力には比較的耐えますが,内側からの力には弱いのです.
ビーカーをスターラーの上に乗せた後に,スターラーバーを入れても似たようなことが起こります.
これもスターラーの磁力による衝撃が内側からかかることに起因します.
ガラス容器全般に通じることですが,スターラーバーを入れる時は,容器を斜めにして滑らせて入れましょう!
コニカルビーカー
底面より口を細くすることで安定性を増したビーカーです.
用途はビーカーと同様ですが,試薬調整後の分注操作がしやすいので,コニカルビーカーを好む人がいます.
三角フラスコ
円錐形で短い首のついたフラスコ(コルベン)です.
液体の加熱や混合に優れるので,液体の一時保管や試薬調製などに使用されることが多いですね.
口が細くなっていて気体の回収がしやすい&蒸発を抑える効果があるので,加熱等による気体発生実験でも使用しますよ.
試験管
少量のものを混合したり,加熱したりする時に使用します.
親指・人差し指・中指の3本で支えて,必ず上部を持ちましょう!
下部を持つと,試験管が傾き中身をこぼす危険があるのでの不適です.
また加熱時には必ず試験管ばさみを使用してください!
メスシリンダー
目盛りのついた円柱状のガラス器具です.
液体の量を測る目的で使用します.
水平な場所に置き,真横からメニスカス(液面の曲がり)の下端が位置する目盛りを読みましょう!
液体の量を測るための器具なので,洗い方にも注意が必要ですよ.
詳しくは以下の記事をご覧ください.

メスフラスコ
こちらも一定の体積を測量する器具です.
メスシリンダーよりも正確な量を測量できるので,標準溶液を調製する際に使用します.
難点は,測量できる量に制限があることですね.
洗浄後に乾きにくいという特徴もありますが,乾燥機に入れて乾燥させてはいけません.
理由は,ガラスが温度変化で膨張・収縮をするからです.
正確に体積を量ることができる器具を,温度をかけて乾燥させれば,その目盛りの体積からズレてしまうので,止めてください.
なお,洗浄後にIEWですすいだら,中を乾かす必要もありません*.
また物質の混合操作はやりにくいので,調製の際には栓をして上下逆さにします.
この時に液が漏れると体積が変わるので注意しましょう!
*溶媒がIEWでない場合は,使用する溶液ですすぎ洗いを行ってください.

標線をあわせる時は,標線より上の部分に液が付着していないことを確認してくださいね.
ホールピペット
定量容積を量りとる器具です.
ホールピペットの種類ごとに測量できる体積が決まっています.
私が学生の頃は口で吸引していましたが,現在は安全ピペッターを用いていると思います.
目的の溶液を標線よりも1~2 cm上まで吸引し,液面をゆっくり下降させてメニスカスの下端が標線と接するところで止めます.
注意点は,ISOに準拠しているかどうかです.
この違いで測量後の流出操作が変わってきますよ.
ISOに準拠していないホールピペットでは,流出後に残るピペット先端の液も出す必要があります.
ピペットのホール部分を手で温めて,気体の膨張によって残液を出し切るようにしましょう!
一方,ISOに準拠しているホールピペットでは,流出後3秒間だけ内壁に接触させて,残液は廃棄しますよ.
メスピペット
これも定量容積を量りとる器具です.
ホールピペットと異なり,量りとる容積を変えることができます.
ただし,ホールピペットよりは誤差があります.
駒込ピペット
ゴム製のニップルが付いた器具です.
ピペットの一種ですが,目盛りは正確ではありません.
だから,この器具では測量はできません.
少量の液体をとって別の容器に注いだりする時に使う程度です.
傾け過ぎると,ニップル内部に溶液が流れこむので注意が必要です.
パスツールピペット
先端が毛細管状(キャピラリー状)になったピペットです.
少量の液を取り扱ったり,アスピレーターに接続して吸引操作したりする時に使用します.
その他の実験器具
数えるときりがないので,多くの実験室に共通して置いてあるものをまとめます.
- 薬さじ
- 電子天秤
- pHメーター
- 安全ピペッター
- マイクロピペット
- マグネチックスターラー
薬さじ
試薬容器から試薬を取り出すときに使用します.
スパチュラとかスパーテルと呼ぶ人もいます.
大半はステンレス製ですが,ABS樹脂製のものも販売されています.
取り出す試薬の特徴で使い分けましょう!
ステンレス製の薬さじでは,酸性・酸化性の物質を取り出すことができません.
腐食するからです.
酸性・酸化性の物質を取り出すときは,ABS樹脂製の薬さじを使いましょう.
ABS樹脂製は,酸やアルカリには耐えますが有機溶剤に弱いです.
また紫外線で劣化するので遮光して保管する必要があります.
電子天秤
試薬の質量を量る場合に使用すします.
機種ごとにはかり取ることが出来る秤量範囲と精度が決まっています.
使用前には取扱説明書を確認し,秤量したい質量に応じた適切な天秤を使いましょう.
注意する点は,試薬によっては質量が変わることがあるということです.
吸湿性や潮解性を有する試薬は,時間が経つと質量が変化します.
可能な限り手早く秤量しましょうね!
また,高精度な天秤は,風や静電気で値が変化します.

これは故障ではありませんよ!
pHメーター
調製した溶液のpHを正確にあわせるときに使用します.
詳細は以下の記事でまとめています.

安全ピペッター
ホールピペットやメスピペットに取り付けて,溶液をピペットに吸い上げたり,流し出すために使うゴム製の器具です.
使い方はやや複雑です.
- A を押して,中の空気を抜きます.
- S を押して溶液を入れて,標線に液面をそろえます.
- E を押して溶液を出します.
マイクロピペット
少量の液体サンプルを正確かつ安全に量り取る器具です.
詳細は以下の記事でまとめています.

マグネチックスターラー
試薬調整や化学反応を行う時に,溶液や反応系を均一にするために連続的に撹拌する器具です.
500 mL以下の液量を混ぜる場合もあれば,2 ~ 3 Lを混ぜる用の大型のものもあります.
様々なサイズがあるので,容器の大きさと合わせて使いわけましょう.
スターラーバーの両端が容器の壁に触れて回転が阻害されるようなサイズは不適です.
スターラーバーには,外装がPTFE(ポリテトラフルオロエチレン、通称テフロン)製のものとビニール製のものがあります.
テフロン製のスターラーバーは,耐薬品性や耐熱性に優れているため,私はテフロン製が好きです.
また,固体が存在する懸濁液や粘性の高い溶液の撹拌には不向きです.
転倒混和等である程度溶解した溶液に使用しましょう!
加えて,回転速度にも注意が必要です.
早すぎるとスターラーバーが回転せずにはね回って容器を壊す危険があります.
スターラーバーがはね回ってしまった場合は,いったん回転を止めましょう!

遅い速度からやり直しましょう.
最後までお付き合いいただきありがとうございました.
次回もよろしくお願いいたします.
2021年4月29日 フール