
ELISA・WB・IFAってどれもタンパク質を検出する方法だよね?使い分けってあるの?
本記事は,このような「なぜ?どうして?」にお答えします.

こんにちは.
博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事しているフールです.
皆さんは,タンパク質を検出する方法と聞いて,どのような実験手法を思い浮かべますか?
ELISA・WB・IFA を,タンパク質を検出する実験手法として思い浮かべる方が多いと思います.
それでは,ELISA・WB・IFA の使い分けは大丈夫ですか?

実は,これかなり重要です!
実験結果の正確性を高めるため,目的は同じだけど異なる実験手法で結果を確認すると思いますが,ELISA・WB・IFA はその好例だからです.
この記事では,実験手法の使い分けとして,ELISA・WB・IFA の使い分けをまとめました.
本記事を読み終えると,目的に応じて,ELISA・WB・IFA を使うことができるようになりますよ!
サマリー・ELISAは,タンパク質の抗原性によりタンパク質を同定します.
・WBは,タンパク質の抗原性と分子量によりタンパク質を同定します.
・IFAは,タンパク質の抗原性と局在によりタンパク質を同定します.
ELISA
ELISAは,”Enzyme-linked immuno sorbent assay” の略です.
日本語では「酵素免疫測定法」とか「酵素結合免疫吸着測定法」と書かれることがありますが,大半の方は「イライザ」または「エライザ」ではないでしょうか.

時々「エライサ」って人もいる?
私の聞き取りミス?
ELISAは,サンプル中に含まれる目的タンパク質を,特異抗体で捕捉し,それを酵素反応を利用して検出する方法です.
よって,目的タンパク質の抗原性によりタンパク質を同定する方法がELISA法です.
メリット
- 使用する抗体や検出対象にもよりますが,感度は高めです.
- 濃度既知のスタンダードを同時に測定すれば,定量分析が可能です.
- 測定対象が広く,分子量の小さい(抗原性の低い)ものも検査可能です.
- 測定系を工夫すれば,目的タンパク質に対する特異抗体を検出することも可能です.
デメリット
- 特異度は低いので,偽陽性の可能性を否定する別の検査と併用する必要があります.
WB(ウェスタンブロット)
WBは,Western blot (Western blotting) の略です.
WB法は,サンプル中のタンパク質を電気泳動で分離後,疎水性の膜に転写し,特異抗体で目的をタンパク質を検出する方法です.
検出方法は,酵素反応を利用することもあれば,励起による蛍光を利用することもあります.
電気泳動で分子量を分けるステップがあるので,抗原性と分子量により目的タンパク質を同定する方法です.
メリット
- 抗原性と分子量の両方で確認するので,特異度は高いです.
- 測定系を工夫すれば,目的タンパク質に対する特異抗体を検出することも可能です.
- 測定系を工夫すれば,目的タンパク質と相互作用するタンパク質を検出することも可能です.
デメリット
- 抗体によっては,変性したタンパク質を検出できないことがあります.
- 一般的には,目的タンパク質の局在を確認できません.
- 分子量の小さいタンパク質の検出は難しいです.
- 定量法もありますが,その感度は低めです.
IFA(蛍光抗体法)
IFAは,”Immuno-fluorescence assay” の略で,日本語では蛍光抗体法といいます.
サンプルを固定したスライドグラス上に抗体を添加して抗原抗体複合体を形成させ,抗体に標識した蛍光色素を利用して検出する方法です.
顕微鏡で検出するため,細胞の微細構造やその局在まで観察することができます.
よって,IFAは,抗原性と局在により目的タンパク質を同定する方法です.
※IHC(Immuno-histo chemistry)でも同様のことが言えます.
メリット
- 抗原性とタンパク質の局在の両方で確認するので,特異度は高いです.
- 測定系を工夫すれば,目的タンパク質に対する特異抗体を検出することも可能です.
デメリット
- 検出対象によっては,使用する抗体の種類を増やす必要があります.
- 固定方法により検出感度が変わるので,その検証が必要です.
- 顕微鏡観察があるので,眼精疲労になりやすいです(笑).
ELISAとWBの使い分け例
あるウイルスに対する抗体の検出をELISA法で行いました.
結果は陽性でした.
ELISA法のみでは偽陽性の可能性がありますので,陽性となったサンプルはWB法でも再確認します.
その結果,抗体が結合するタンパク質のサイズも一致しました.
よって,このサンプルは,ウイルスに対する抗体陽性と判定しました.
ELISAとIFAの使い分け例
あるウイルスの検出を目的として抗原検査をELISA法で行いました.
結果は陽性でした.
ELISA法のみでは偽陽性の可能性がありますので,陽性となったサンプルはIFA法でも再確認します.
サンプルを培養細胞にかけて,一定期間の培養後に固定し,IFA法を実施しました.
その結果,ウイルスが培養細胞の細胞質に蓄積していることが分かりました.
よって,このサンプルは,ウイルス陽性と判定しました.

以上,ELISA・WB・IFA の使い分けでした.
最後までお付き合いいただきありがとうございました.
次回もよろしくお願いいたします.
2020年5月10日 フール