マスクの種類とその効能【超まとめ】
マスクって,色々な種類があるんだね.違いは何かあるんですか?
本記事は,このような疑問にお答えします.
こんにちは.
博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事しているフールです.
先日,同僚との雑談で,マスクの種類の話になりました.
今まで何気なく着用していたマスク,その種類など気にもしたこともありませんでしたが,同僚との会話をきっかけに調べてみました.
さらに,皆さんも気になるであろう「マスクの防御効果」についても調べてみました.
本記事では,マスクの種類とその効能についてまとめています.
気になる方,ぜひ最後までご覧ください.
これから冬本番です.
インフルエンザウイルスの流行や新型コロナウイルス感染症の影響で話題の今だからこそ,マスクについて勉強するチャンスだと思いますよ~
サマリー
・マスクは,家庭用マスク・医療用マスク・産業用マスクに分類されます.
・私たちが日常生活で使用するマスクは,家庭用マスクです.
・家庭用マスクは,2種類(ガーゼマスクと不織布製マスク)あります.
マスクの定義
そもそもマスクとは何なのでしょうか?
先ずは,その定義を調べてみました.
一般社団法人日本衛生材料工業連合会は,以下ようにマスクを定義しています.
天然繊維・化学繊維の織編物または不織布を主な本体材料として,口と鼻を覆う形状で,花粉,ホコリなどの粒子が体内に侵入するのを抑制,また,かぜなどの咳やクシャミの飛沫の飛散を抑制することを目的に使用される,薬事法に該当しない衛生用製品
マスクは医薬品などには該当しない
「薬事法(現在は薬機法)に該当しない」ので,医薬品・医薬部外品・医療機器のどれにも該当しない物ですね.
つまり,マスクのパッケージに,医薬品(医薬部外品)のような効果・効能を表示することはできませんね.
新しいマスク?
コロナウイルス感染症が拡がり続けていた頃,マスクも品薄状態でした.
今は改善されていますが,その影響で色々なマスクが販売されていますね.
例えば,ブラジャー素材のマスクや水着素材のマスクなどユニークな商品もありましたね.
これらが「マスクの定義」に合うのかを考えてみました.
① 口と鼻を覆う形状
② 咳やクシャミの飛沫の飛散を抑制
③ 花粉,ホコリなどの粒子が体内に侵入するのを抑制
④ 主な本体材料は天然繊維・化学繊維の織編物または不織布
形状
①について,形状は問題ないでしょう.
見た目がいわゆる「マスク」の形なので,大きさを間違えなければ口と鼻を覆う形状になるはずです.
飛沫の飛散を抑制
②について,「口と鼻を覆う形状」であれば「咳やクシャミの飛沫の飛散を抑制すること」はできますね.
「正しく着用していれば」という条件付きですが…
当然,顎にかけた「アゴマスク」は意味がないですよ(笑).
粒子が体内に侵入するのを抑制
③について,「粒子が体内に侵入するのを抑制」するかどうかは分かりませんね.
フィルター部分の捕集効率を調べた結果を確認しないと分かりません.
素材
④について,多くのブラジャー素材は不織布で,水着素材の大半はナイロンやポリエステルです.
③については保留せざるを得ませんが,①②④は問題ないですね.
よって,ブラマスクや水着素材のマスクも立派なマスクだと思います!
マスクの分類
さて,本題のマスクの分類についてです.
一般に,マスクは3つに分類されます.
① 家庭用マスク
② 医療用マスク
③ 産業用マスク
① 家庭用マスク
風邪,花粉対策,防寒・保湿などの目的で使われるマスクです.
家庭用マスクは,さらに2つに分類されます.
a) ガーゼマスク
b) 不織布マスク
a) ガーゼマスク
綿織物を重ね合わせたマスクを指します.
保湿性と保温性が高く,鼻部から咽頭部分を乾燥から保護するのに役立ちます.
洗って繰り返し使うこともできます.
しかし,厚生労働省の資料によると,ガーゼマスクは,環境中の飛沫を捕捉するには不十分のようです.
b) 不織布マスク
「不織布」と書いて「ふしょくふ」と読みます.
文字通り「織っていない布」という意味で,熱や化学的な作用で接着させて出来た布を使用しています.
基本的には,ディスポーザブル(使い切り)が前提です.
環境中の飛沫を捕捉するフィルター性能は,ガーゼマスクよりも良いです.
その形状によって,プリーツ型マスクと立体型マスクに分けられます.
プリーツ型マスク
前面がプリーツ状になっており,口の動きにも対応しています.
だから,マスクをしたまま話をしてもズレにくいです.
私は,この形が好きです!
立体型マスク
ヒトの顔の形に合わせてデザインされたマスクです.
私の母や祖母は「これだと口紅うつりが少ないのよ」と言ってました.
そういう意味では,お化粧をする人には向いているかもしれませんね.
② 医療用マスク
医療現場もしくは医療用に使用されるマスクです.
手術時に医療従事者の唾液を術野に飛ばさない目的で使用したり,感染防止対策として使用したりします.
そして,医療用の不織布製マスクのことを「サージカルマスク」と言います.
定義の項でも書いたように,マスクは薬機法の対象外です.
だから,国が定めた性能の検定規格はありません.
でも,米国食品医薬品局(Food & Drug Administration [FDA])は,サージカルマスクに関する指針を出しています.
そして,日本で販売されている製品の中には,FDAの指針に適合しているものもあります.
N95マスク
米国労働安全衛生研究所(National Institute for Occupational Safety and Health [NIOSH])の規格に合格したマスクのことです.
“N95” は商品名のように扱われていますが,実は単なる規格名です.
“N” は,”Not resistant to oil” を意味し,耐油性が無いマスクであることを意味します.
“95” は,粒子を95%以上捕集できることを表します.
元々は,後述する産業用マスクでした.
主に建築現場で使われていたようです.
細菌やウイルスの感染防止効果が報告されてから,医療現場でも使われるようになりました.
③ 産業用マスク
工場などで働く作業者が,防塵対策として使用するマスクです.
工業用マスクまたは防塵マスクとも呼ぶ人もいます.
防じんマスクDS2
産業用マスクには,国家検定規格が定められています.
防じんマスク国家検定に合格したマスクとして有名なものは,防じんマスクDS2ですね.
先に挙げたN95マスクと同等の検定基準をクリアしているので,日本版N95マスクと言えそうです.
風邪対策用マスクと花粉対策用マスク
家庭用マスクには,風邪対策用マスクと花粉対策用マスクがあります.
この違いはなんでしょうか?
この違いは,マスクのフィルター性能によるものです.
一般的なウイルス粒子の大きさは,30~200 nmですが,花粉の大きさは20~30 μmです.
イメージが湧かないと思うので,図をつくりました!
緑色の点がウイルス粒子です.
粒子の大きさの違いが分かりましたでしょうか?
風邪対策用マスクは,この小さいウイルスの侵入や飛沫防止を考慮しているので,より高いフィルター性能を有しています.
一方,花粉対策用マスクは,この大きな花粉の侵入防止を考慮しているので,風邪対策用マスクほどのフィルター性能は持ち合わせていません.
つまり,「粒子が体内に侵入するのを抑制」するバリア機能は,風邪対策用マスクの方が高いということになります.
マスクの効能
厚生労働省の資料*には,次のようにあります.
発症した人がマスクをすることによって他の人に感染させないという効果は認められており,自分が発症した場合にはマスクを着用することが必要である.他方,まだ感染していない者がマスクをすることによってウイルスの吸い込みを完全に防ぐという明確な科学的根拠はないため,マスクを着用することのみによる防御を過信せず,お互いに距離をとるなど他の感染防止策も講ずる必要がある.
これはインフルエンザウイルスに関する資料ですが,その他のウイルスに適用しても良いのかもしれません.
気になるのは「まだ感染していない者がマスクをすることによってウイルスの吸い込みを完全に防ぐという明確な科学的根拠はない」という点です.
私もちょっと調べてみました.
マスクのウイルス捕捉効率を報告した論文はたくさんありますが,マスク着用の有無と感染症の発症率を比較した報告を見つけることはできませんでした**.
では,まだ感染していない人がマスクを着用することはどう考えれば良いのでしょうか?
最近,面白い報告がありました.
SARS-CoV-2の空気伝播に対するマスクの防御効果を報告した論文です.
- SARS-CoV-2を噴霧するチャンバーを作製した.
- チャンバー内に人工呼吸器を繋いだマネキンを設置した.
- マネキンにマスクを装着して,マスクを通過するウイルス量を調べた.
マスクの防御効果を検証するために必要な環境をBSL-3施設内に作って実験を行っていました.
ヒトを対象とした集団で検証が難しいからだと思いますが,必要な物を自作するあたりが職人業って感じがして好きです!
さて,肝腎の中身です.
各種マスク(ガーゼマスク,サージカルマスク,N95マスク)を装着したマネキンにウイルスを曝露したら,ウイルス飛沫・エアロゾルの取り込みが減少したと報告しています.
- ガーゼマスクでは,40%くらいの減少
- サージカルマスクでは,50%くらいの減少
- N95マスクでは,70%くらいの減少
マスクの装着は,SARS-CoV-2の吸い込みを抑える効果があるようですね!
でも,ウイルスの吸い込みを完全には防ぐことは,マスク単体ではできないようです.
やはり,厚生労働省の資料にあるように「マスクを着用することのみによる防御を過信せず,お互いに距離をとるなど他の感染防止策も講ずる必要がある」ということですね!
*個人,家庭及び地域における新型インフルエンザ対策ガイドライン
**症例対照研究や非ランダム化比較試験の報告は,いくつか見つけることができました.でも,偏りのない集団を対象とした発症率の違いを報告したものは,まだ見つけられてません.
私はマスクを着用します
マスクを着用してもウイルスの吸い込みを完全には防ぐことはできないなら意味ないじゃん♪
って思った方もいるかもしれませんね(笑).
海外では,予防目的でマスクの着用を義務付けている国もあるようです.
でも,日本ではそのような規制がされていません.
だから,究極は個人の自由でしょう.
でも,私はマスクを着用します!
その理由は2つです.
- マスク着用による保温・保湿効果が感染予防にポジティブに働くかもしれないと考えるから.
- マスク着用で体内に侵入するウイルス量が減れば,感染しても無症状か軽症で済むかもしれないと考えるから.
皆さんは,どのように考えますか?
もっと勉強したい方へ
・新型インフルエンザ流行時の日常生活におけるマスク使用の考え方
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/09/dl/s0922-7b.pdf
・個人、家庭及び地域における新型インフルエンザ対策ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/pdf/09-12.pdf
・Guidance for Industry and FDA Staff Surgical Masks – Premarket Notification Submissions
・一般社団法人日本衛生材料工業連合会のホームページ
・Ueki H., Furusawa Y., et al. Effectiveness of Face Masks in Preventing Airborne Transmission of SARS-CoV-2. mSphere 2020, 5 (5) e00637-20.
最後までお付き合いいただきありがとうございました.
次回もよろしくお願いいたします.
2020年10月25日 フール