異なる処置の比較解析する方法【実験データの具体的な解析方法】

効果判定試験の統計解析
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異なる処置の比較解析する方法【実験データの具体的な解析方法】

 

薬剤Aの効果をコントロール(生理食塩水)と比較したいんだけど,どうすれば良いのかな?

本記事は,このような疑問にお答えします.

 

こんにちは.

博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事しているフールです.

理論や定義よりも実際にどういう操作をするのかを知りたい!

そんな方に向けて,実験データの具体的な解析方法の記事を書いています.

今回は,薬剤処置群とコントロール処置群との比較を行います.

データは前回に引き続き,乳牛に投与したカルシウム剤の効果で測定した血中カルシウム濃度のデータです.

本記事を読み終えると,異なる処置の比較解析方法が出来るようになりますよ!

 

サマリー・処置の効果を判定する試験の統計解析では,処置の前後のデータを使って対応のある検定を,処置の前後の差のデータを使って対応のない検定を実施します.

対応のある検定だけでは不十分

前回の記事では,薬剤の投与前後の値を比較することで薬剤の効果を検定する例を示しました.

ただ,製薬の分野ではそれだけで薬剤の効果を評価することはできません.

なぜなら,薬剤投与によるストレスや心理的な影響(ヒトの場合)によって,測定値が変化する可能性があるからです.

だから,薬剤とは別にコントロール群を設定し,薬剤処置とコントロール群を比較することが必要です.

それでは,この2群の検定はどうするのでしょうか?

私は,2通りの方法を使います.

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独立した(対応のない)検定のみを行う

この方法は,薬剤処置またはコントロール処置を行った後に測定したデータのみを使う方法です.

今回の場合なら,カルシウム剤を投与した群の血中カルシウム濃度とコントロールとしての血中カルシウム濃度を比較することになります.

この方法を使うと,2群の間に「差がある」または「差がない」を検定することはできます.

しかし,薬剤の効果の程度は検定できません.

薬剤の効果の程度とコントロールの効果の程度を比較したい場合は,対応のある検定と対応のない検定の両方を行います

対応のある検定と対応のない検定の両方を行う

この方法は,薬剤処置群またはコントロール処置群の投与前後のデータに対応のある検定を行い,さらに投与前後の差のデータを使って対応のない検定を行います.

今回の場合なら,カルシウム剤投与群の投与前後のデータと生理食塩水投与群の投与前後のデータのそれぞれに対して対応のある検定をそれぞれ行います.

さらに,カルシウム剤投与群の投与前後の差と生理食塩水投与群の投与前後の差に対して対応のない検定を行います.

これにより処置間に差があること処置間の程度の違いがあることが検定できます.

本記事は,この方法をご紹介します.

対応のある検定

先ずは対応のある検定です.

検定の手順と使用するデータは次の通りです.

  • 設問:カルシウム剤投与の前後で,血中カルシウム濃度の違いを調べる.
  • 帰無仮説:投与前後で,血中カルシウム濃度の違いは無い.
  • 対立仮説:投与後の血中カルシウム濃度は,投与前のそれよりも高い*.
  • データ**を集める.

カルシウム剤投与群のデータ

ID投与前(mg/dL)投与後(mg/dL)
14.98.1
26.310.1
36.19.8
45.39.3
54.88.1
65.68.8
77.010.1
87.28.7
95.79.5
106.911.1
116.610.2
126.511.1
136.310.4
144.98.3
155.08.1

生理食塩水投与群のデータ

ID投与前(mg/dL)投与後(mg/dL)
14.85.0
26.46.2
36.26.3
45.25.0
54.64.9
65.55.2
76.86.8
87.77.7
95.65.7
106.87.0
116.76.5
126.46.2
136.26.6
144.85.5
154.95.4

*前回と同じでは飽きるので(笑),今回は片側検定の仮説設定としました.

**実際の数値は使えないので,架空の数値を私が設定しました.

  • 統計量を算出する.
  • 帰無仮説が正しい確率pを算出する.
  • 確率pと有意水準αを比べる.
  • 結論を考える.

検定を行う前に考えること

本記事では,検定を行う前に考えることの詳細は割愛します.

その詳細が知りたい場合は,以下の記事をご覧ください.

2標本による検定のやり方【実験データの具体的な解析方法】
学問としての統計学を学んだ人は多いけど,ツールとしての統計学を学んだ人は少ないと思います.そこで実験データの具体的な解析方法を記事にしています.本記事では,2標本による検定のやり方をまとめています.

前回同様に,実施する検定は,対応のあるT検定です!

対応のあるT検定

カルシウム剤投与群のデータに対して,ExcelでT.TEST関数を使います.

対応のあるT検定(片側編)

確率pは,有意水準α(α=0.05)よりも小さいので帰無仮説を棄却して,対立仮説を採用できます!

つまり,「投与後の血中カルシウム濃度は,投与前のそれよりも高い」ってことです.

 

生理食塩水投与群のデータに対しても,同様にExcelでT.TEST関数を使います.

その結果,確率pは0.119499421でした.

確率pは,有意水準α(α=0.05)よりも大きいので帰無仮説を棄却することができません

つまり,「投与前後で,血中カルシウム濃度の違いは無い」ってことです.

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対応のない検定

続いて,対応のない検定です.

検定の手順と使用するデータは次の通りです.

  • 設問:血中カルシウム濃度の増加程度の違いを調べる.
  • 帰無仮説:両群の血中カルシウム濃度の増加程度に違いは無い.
  • 対立仮説:カルシウム剤投与群の方が血中カルシウム濃度の増加程度は大きい.
  • データを集める.

カルシウム剤投与群のデータ

ID投与前(mg/dL)投与後(mg/dL)差(投与後-投与前)
14.98.13.2
26.310.13.8
36.19.83.7
45.39.34.0
54.88.13.3
65.68.83.2
77.010.13.1
87.28.71.5
95.79.53.8
106.911.14.2
116.610.23.6
126.511.14.6
136.310.44.1
144.98.33.4
155.08.13.1

生理食塩水投与群

ID投与前(mg/dL)投与後(mg/dL)差(投与後-投与前)
14.85.00.2
26.46.2-0.2
36.26.30.1
45.25.0-0.2
54.64.90.3
65.55.2-0.3
76.86.80.0
87.77.70.0
95.65.70.1
106.87.00.2
116.76.5-0.2
126.46.2-0.2
136.26.60.4
144.85.50.7
154.95.40.5
  • 統計量を算出する.
  • 帰無仮説が正しい確率pを算出する.
  • 確率pと有意水準αを比べる.
  • 結論を考える.

検定を行う前に考えること

今回も,検定を行う前に考えることの詳細は省略します.

その詳細が知りたい場合は,以下の記事をご覧ください.

2標本による検定のやり方【実験データの具体的な解析方法】
学問としての統計学を学んだ人は多いけど,ツールとしての統計学を学んだ人は少ないと思います.そこで実験データの具体的な解析方法を記事にしています.本記事では,2標本による検定のやり方をまとめています.

ココで実施する検定は,WelchのT検定です!

WelchのT検定

両群の差のデータに対して,ExcelでT.TEST関数を使います.

WelchのあるT検定

確率pは,有意水準α(α=0.05)よりも小さいので帰無仮説を棄却して,対立仮説を採用できます!

つまり,「カルシウム剤投与群の方が血中カルシウム濃度の増加程度は大きい」ってことです.

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今回も架空の数値ではありますが,実験データを使った検定のやり方をまとめてみました.

いかがでしたか?

今回の方法は,薬剤に限ったものではありません.

処置の効果判定試験全般に応用することができますので,皆さんの実験でも使ってみてください!

最後までお付き合いいただきありがとうございました.

次回もよろしくお願いいたします.

2021年1月31日 フール