qPCRの解析【ΔΔCt法】をExcelで行う方法を解説

qPCRのΔΔCt法の計算方法は具体的にどうすればいいんですか?
こちらの疑問に本記事でお答えしています.
本記事の内容・ΔΔCt法の計算方法
・ΔΔCt法の標準偏差の計算方法

こんにちは.
博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事している元研究者のフールです.
最近,qPCRのΔΔCt法の計算方法に関する質問がいくつかありました.

ΔΔCt法の具体的な計算方法が見つからないので教えてほしい.
細かい内容はそれぞれ異なりますが,依頼内容は上記のような感じです.
最近の機器は優秀なので,Run終了後は解析も終了しています.
一方で,解析は有料ソフトウェアの購入が必要だったり,プレートデザインの関係で複数の実験系が混在しているなど,解析は自分でやらないとダメなケースはありますよね!
この記事では,ΔΔCt法の解析をExcelで行う方法をご紹介します.
サマリー・ΔΔCt法では,サンプル内補正とサンプル間の補正をする必要があります.
ΔΔCt法の具体的な解析方法(基礎編)
ハウスキーピング(HK)遺伝子のどれかをサンプル内補正に使う内部標準として使います.
ハウスキーピング遺伝子の選定に関しては,以下の記事をご覧ください.

次に,サンプル間補正を行います.
Contorlでの標的遺伝子の転写量を1とした場合の各Groupにおける転写量を比較します.

例えば,次のような感じです.

Excelで入力している具体的な数式は次の通りです.

補正を行うのに,どうして引き算?
割り算ではないの?

ΔΔCt法では,1サイクル(1Ct)の違いで差が2倍になるという前提条件を利用しています.

結果は2を底として指数を意味していて,例えば,「30.94」 は「230.94」です.今回の引き算は「乗数項の引き算」に該当するので,指数法則より「指数の割り算」をしていることになります.

なるほど~「30.94-23.36」 は「230.94÷223.96=230.94-23.36」って意味なんですね!
ΔΔCt法の具体的な解析方法(応用編)

さて,ここからが本番です!
実験のサンプル数が N=1 ならば,上記の解析方法で問題ありません.
しかし,現実は違いますよね!
N=3 とか N=5 のような実験が多いのではないでしょうか?
そして,平均値だけでなく,標準偏差やは標準誤差も算出したいはずです.
これから N=3 の場合の解析方法を2通り紹介します.
- ΔΔCt 値で解析する場合
- 2-ΔΔCt 値で解析する場合
ΔΔCt 値で解析する場合

ΔΔCt 値で解析する場合は,次の通りです.

Excelで入力している具体的な数式はこんな感じです.
ΔCt値の平均値を算出し,各ΔCt値からControlのΔCt値の平均値を引いてΔΔCt値を算出しています.
そして,得られたΔΔCt値を基に,平均値と標準偏差(SD)を算出した後,2-ΔΔCtに代入します.

大切な点は,求めた標準偏差は対数関数正規分布に従うということです.
これを2-ΔΔCtに代入して真数にすると正規分布しませんので,標準偏差は下限値と上限値の区間として表示する必要があります.
2-ΔΔCt 値で解析する場合

2-ΔΔCt 値で解析する場合は,次の通りです.

Excelで入力している具体的な数式は次の通りです.
先ほどと同じく,ΔCt値の平均値を算出し,各ΔCt値からControlのΔCt値の平均値を引いてΔΔCt値を算出しています.
次に,ΔΔCt値を2-ΔΔCtに代入して各相対比を求めます.
そして,2-ΔΔCtの平均値を求め,各2-ΔΔCt値をControlの2-ΔΔCt値で補正していきます.
最後に,得られた補正値を使って平均値とSDを算出します.

この場合,真数となった後の数値を使って計算していますので,SDを「±」で表現できます.

(1)と(2)はどっちの方が良いんですか?

数学的にはどちらも正しいと思いますが,科学的に妥当なのはどちらなのか…ごめんなさい!私も分かりませんw
記事内の拡大画像
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最後までお付き合いいただきありがとうございました.
次回もよろしくお願いいたします.
2022年4月30日 フール