バイオハザードとバイオセーフティ【微生物検査に携わる者の心得】

バイオセーフティレベル(BSL)の分類例
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バイオハザードって映画やゲームでは聞いたことあるけど,具体的にどういうこと?

本記事は,このような「なぜ?どうして?」にお答えします.

 

こんにちは.

博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事しているフールです.

新型コロナウイルス感染症のお陰?で,PCR検査の話は耳にタコができるほど聞きました.

でも,その検査にあたる人々や検査環境については,あまり取り上げられません

とても残念です.

検査をする人々は,ウイルスを含んでいるかもしれないヒトから採取した検体と毎日接しているというのに…

今回は,病原体など取り扱う検査室において,検査者の感染防止病原体を外に出さないための対策(バイオセーフティ)についてまとめました.

サマリー・研究や検査において,病原体に感染することをバイオハザードという.

・病原体を環境中に漏出させないための対策をバイオセーフティという.

・病原体は,その感染力や病原性に応じて,バイオセーフティレベルに分類されている.

バイオハザード

日常生活の中で自然に感染するのではなく,研究や検査など人為的な理由で感染することをバイオハザード(生物災害)といいます.

カ〇コンの有名なゲームソフトがあるので,単語自体は聞いたことがある人が多いと思います.

研究していたウイルスが研究所から漏出したことが原因で災害が発生したというシナリオ(雑な説明ですみません)なので,まさにバイオハザード(生物災害)です.

脱線しました(笑).

話を戻しますね!

病原体を含んでいるサンプル病原体を保有している可能性があるヒトや動物から採取した検体を扱う人々がいます.

研究者や臨床検査技師の方々です.

病原体と直接接する機会がある人々ですから,バイオハザード(生物災害)とは常に隣り合わせの環境で仕事をしていることになります.

だから,彼(彼女)らが病原体に感染しないように,且つ,職場から微生物を漏出させないようにする対策があります.

それがバイオセーフティ(生物災害安全対策)です.

バイオセーフティとバイオセーフティレベル

病原体を取り扱うとき,研究室(検査室)内における作業従事者の感染防止と病原体を外に出さないための取り組みは,非常に重要です.

ただ,地球上にはたくさんの病原体が存在します.

その全ての病原体に,同じ対策を施すことはできません.

そこで,病原体の危険度に応じたレベル分けを行い,それぞれのレベルに応じた防止対策を行うようになりました.

そのレベルのことをバイオセーフティレベル(Bio-safety level [BSL])といいます.

BSLは,危険度の低いほうから高い方へ1~4の4群に分かれています.

各BSLに適用される病原体の取り扱い条件や病原体の取り扱い方法が決まっているので,次の項で簡単にまとめています.

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バイオセーフティレベル1(BSL-1)

健康なヒトに感染症を起こすことはないけど,色々な原因で防御機能が低下した(昜感染性の)ヒトに感染症(日和見感染症)を起こす可能性がある病原体がBSL-1です.

例えば,大腸菌や緑膿菌などが該当します.

防止対策・特別の隔離は,必要ありません.

・一般の微生物実験室を使用します.

・一般外来者の立ち入りを禁止する必要もありません.

バイオセーフティレベル2(BSL-2)

健康なヒトに感染症を起こす能力があり,その危険度が軽度から中等度であるもの.

エアロゾル感染の危険性は高くないけど,大量に発生した場合は警戒が必要な病原体はBSL-2です.

例えば,黄色ブドウ球菌やインフルエンザウイルス,麻疹ウイルスなどが該当します.

実験室(検査室)では,針刺し事故による感染防具なしの状態で取り扱ったことによる接触感染などが起こる可能性があります.

防止対策・一般の微生物実験室を使用します.

・一般外来者の立ち入りを制限する必要があります.

・原則として,実験(検査)は,生物学用安全キャビネットの中で行います.

バイオセーフティレベル3(BSL-3)

感染力が強く,重篤でしばしば致死的な感染症を起こすもので,エアロゾル感染の危険性が高い病原体は,BSL-3です.

例えば,結核菌やエイズウイルス,COVID-19*などが該当します.

ヒトへの侵入はエアロゾルの吸入によるものが多いです.

また,エアロゾル発生による手指などの汚染が原因となることもあります.

*暫定的な取扱いです.また,COVID-19感染の疑いがある患者由来の臨床検体は,BSL-2の取扱いです.

防止対策・実験者(検査者)は,全身を被う防具を着用します.

・名簿に記載された者以外の立ち入りは禁止しています.

・実験(検査)は,生物学用安全キャビネットの中で行います.

・廊下の立ち入り制限,二重ドアにより外部と離れた実験室を使用します.

・実験室(検査室)を陰圧にして,常に外から内へ空気が流れるようにしています.

・実験室(検査室)からの排気は,HEPAフィルターで滅菌してから大気中に放出します.

バイオセーフティレベル4(BSL-4)

ヒトに生死に関わる重篤な病気を起こし,容易にヒトからヒトへ直接・間接の感染を起こす病原体は,BSL-4に該当します.

例えば,エボラウイルスやラッサウイルスなどが該当します.

防止対策・BSL-3の対策に加えて,特殊な防具を着用します.

・実験室(検査室)の出入り口にシャワー室を設置します.

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簡単ではありますが,バイオハザードバイオセーフティについてまとめました.

感染者数は何人とか検査数がいくつなどの情報も重要かもしれません.

ただ,その裏側についても情報提供してほしいと思います.

最後までお付き合いいただきありがとうございました.

次回もよろしくお願いいたします.

2020年3月21日 フール

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