
抗体のクラスとサブクラスって何ですか?
本記事は,このような「なぜ?どうして?」にお答えします.

こんにちは.
博士号を取得後,派遣社員として基礎研究に従事しているフールです.
抗体のクラスとかサブクラスって気にしたことありますか?
免疫に関わる研究をしている人・Protein AとかGを使っている人は,当たり前ですよね.

でも,抗体の種類って,上記以外の人も知っておいた方が良い情報ですよ!
この記事では,抗体の種類(クラスとサブクラスなど)についてまとめました.
本記事を読み終えると,実験で使う抗体の選び方が変わるかもしれませんよ!
サマリー・抗体のクラスには,IgG, IgM, IgA, IgD, IgEの5つがある.
・重鎖遺伝子の多様性により,サブクラスが存在する抗体もある.
・1次抗体および2次抗体を選ぶとき,これらの情報が重要となる.
抗体のクラス

先ず,抗体の基本構造を知りましょう!
抗体は,重鎖と軽鎖がジスルフィド結合でつながったヘテロダイマーが,中央付近の別のジスルフィド結合によりつながったY字形をしています.
可変ドメインと定常ドメインがあり,可変ドメインは抗原と結合する部分です.
抗体によっては,ヒンジ領域を持つ抗体もあります.
そして,抗体は定常ドメインの違いによって5つのクラス(アイソタイプ)に分けられます.
それが IgG, IgM, IgA, IgD, IgE です.
上図は,その内,IgG の模式図になります.

せっかくなので,IgG以外の抗体も見てみましょう!
IgM
IgMは,5個の分子がジスルフィド結合とJ鎖で結合した5量体です.
個々の分子にヒンジ領域がなく,さらに5量体として固定されているので,可変領域の可動域は小さいです.
IgA
IgAは,2個の分子がジスルフィド結合・J鎖・分泌成分で結合した2量体です.
最近,IgAは,2量体だけでなく,3量体や4量体があることも報告されました.
IgE
IgEは,IgGに似ています.
でも,4つの定常ドメインがある点で IgG とは異なります.
IgD
IgDも,IgGと似ています.
しかし,重鎖をつなぐジスルフィド結合が無いという点で IgG とは異なります.
動物の抗体のクラス
ココで挙げた抗体のクラスは,哺乳動物のものです.

それ以外の動物では,別のクラスが報告されています.
例えば,両生類・爬虫類・鳥類には IgY というクラスがあります.
両生類には IgX,魚類には IgW・IgR というクラスがそれぞれ報告されています.
抗体のサブクラス
ヒトのIgGは,IgG1, IgG2, IgG3, IgG4に分けられます.
また,マウスのIgGは,IgG1, IgG2a, IgG2b, IgG3に分けられます.
これは何が違うのかというと…重鎖をコードする遺伝子が異なります.

進化の過程で遺伝子重複が生じました.
その後,それぞれの遺伝子に変異が加わり,アミノ酸がちょっとずつ変わりました.
その結果,同じ IgG でも機能(生物活性)が異なるようになりました.
現在,それらを整理するため,これを抗体のサブクラス*と呼んでいます.
*サブクラスもアイソタイプと呼ぶことがあります.
アロタイプ
同じ動物の抗体でも,抗体には個体間の違いがあります.
つまり,Aさんの IgG とBさんの IgG は,構造的にちょっと違う可能性があります.
これも重鎖をコードする遺伝子の変異の産物で,これをアロタイプ変異といいます.
イディオタイプ
抗体は,可変ドメインの違いにより莫大な多様性を作ることができます.
可変ドメインのアミノ酸配列の違いをイディオタイプ変異といいます.
モノクローナル抗体は1種類のイディオタイプですが,ポリクローナル抗体は複数のイディオタイプが混ざったものと考えると良いでしょう.
軽鎖のサブクラス
哺乳類の抗体の軽鎖は,アミノ酸配列の違いで κ(カッパ)鎖と λ(ラムダ)鎖に大別されます.
機能的な差はありません(まだ見出されていません).
抗体の名前
抗体の名前に規則はありません.
しかし,以下の情報を含んでいることが多いです.
① 標的分子は何か? ② 免疫した動物は何か? ③ 抗体のクラス(アイソタイプ)は? ④ モノクローナル抗体か?ポリクローナル抗体か?
例えば,”Anti-GFP (Rat IgG2a), Monoclonal” とか “Rabbit anti-Mouse IgG2a Secondary Antibody” は良い例ですね!
日本語だと全部「抗〇〇抗体」で済ませがちですよね(笑).
抗体のサブクラスと免疫沈降
免疫沈降の実験系では,プロテインAまたはGを使いますよね!
注意したいのは,同じ IgG でも,動物種やそのサブクラスによって,プロテインAまたはGへの結合能が違うということです.
実験系を組み立てる前に,どの組み合わせが良いのか確認する必要があります.
幸い,各メーカーがプロテインAまたはGへの結合能をまとめていることが多いです.

以上,抗体の種類(クラスとサブクラス)のまとめでした.
最後までお付き合いいただきありがとうございました.
次回もよろしくお願いいたします.
2020年5月12日 フール